「東大英語は難しい…」これはほとんどの人が納得する事実である。
しかしどうして難しいのか詳しく解説できる人は極めて少ない。
実際に入試問題を見ても本当に英語の力がある人でないと、詳しく問題を分析できない。
特にこれから東大を目指そうとしている中学生や高校1年生には難しすぎて、問題を見たとしてもさっぱり理解できないだろう。
だが、東大を目指す受験生にとっては、入試問題の特徴を知っておくのが入試対策の第一歩である。
過去問から、逆算して自分の勉強計画を練っていく必要があるのだ。
早い段階から過去問分析をしておけば、自分が今勉強している内容が、どうつながるのか、何のための勉強なのかもわかる。
逆にこの勉強は必要ないので、捨てようという考え方もでき、勉強時間の短縮にもつながる。
ここでは、東大英語の入試問題の特徴とともに、どうして東大英語が難しいのかということを詳しく解説する。
また、最後にそれを踏まえた上で、どのようない対策をすればよいのか簡単に説明していく。
東大受験生諸君は、この解説を活かし東大英語の入試対策の第一歩を踏み出すことができる。
是非、この記事を読んで、そこから逆算してどのような勉強をしていかなければいけないのか考えてみて欲しい。
<解説動画>
東大英語の特徴
東大英語の入試問題は、他の難関私立や国公立の英語の入試問題とは非常に異なっている。
まずは、東大英語の特徴について、三つの項目に分けて解説する。
問題形式
英語の入試問題の形式として、文章読解、文法問題、リスニング、英作などがある。
しかし、東大英語の入試問題では、他の大学のものにない、さまざまな問題形式も存在する。
これを以下の表に示す。
問題番号 | 形式 | 解説 |
第一問A | 要約 | 2~4段落、1ページほどの英文を読み60~100字程度の字数指定があり、日本語で要約させる問題ある程度まとまりのある短い文章の内容理解を問う。 |
第一問B | 段落整序、文選択など | 8段落ほどの英文の中から4段落ほど抜き取られていて、順番に直す問題。または、8段落ほどの英文の中に文を正しい箇所に入れさせたり、いらない文を抜き出させたり、文章全体のタイトルを決定させる問題などがある。第一問Aよりも2倍くらいある文量の英文の内容理解を問うている。 |
第二問A,B | 自由英作、和文英訳 | 語数は50~80語程度の語数指定で、絵を見てそれについて述べさせたり、ある意見を提示して、それについて自分の意見を理由付きで述べさせたりする問題。2018年度から日本語をそのまま英訳するいわゆる、和文英訳も出題された。機械的な日本語ではなく、より日本語的な日本語であるため英訳が難しい。 |
第三問A,B,C | リスニング | 各小問に5個の4択問題が並んでおり、基本的にスクリプトの内容の順番通りに答えが出るようになっている。たまに1、2問ディクテーションが出題される。 |
第四問A | 不適な単語の抜き出し、または並び替え | 1~5段落ほどの英文があり、下線部のフレーズから適さない単語を抜き出させたり、単語を正しい順序に並び替えてフレーズや文を作らせたりする問題。英文法や精読力を見ている。年により3~5問程度出題される。近年、配点の割には、難しく文章量も増えているので捨て問にする人が多い。 |
第四問B | 和訳 | 1~4段落ほどの1ページ程度の英文に下線が三つ引かれており、それの和訳をさせる問題。直訳するだけでは、意味の通じない箇所に線が引かれている。また、年によっては指示語などを補って訳すことが要求される場合もある。 |
第五問 | 小説(エッセイ)読解 | 2~3ページほどの長い小説(たまにエッセイ)に10問程度問題がついている。ほとんど選択問題であるが、適語をあてはめさせたり、並び替えて文やフレーズを作らせたり、和訳させたりと2,3問ほど毎年記述問題が出題される。 |
このように他大ではあまり出題されにくい問題形式が多種多様に出題されている。
まずは、この表とともに実際の問題を見て、このような多くの問題形式を相手にしなければならないということを自覚してほしい。
試験時間と目標点数
次に試験時間と本番で狙うべき点数について解説する。
試験時間は120分である。この時間内に80点くらいを確保したい。
実際に問題を解いたことのない人は短いか長いか判断がつかないかもしれないが、実際に多くの受験生が非常に厳しい時間だと言っている。
また、東大英語の試験時間に関する大きな特徴は、試験開始45分後に約30分間リスニングの音声問題が流れる。
つまり、自由に使える時間は最初の45分間と最後の45分間の計90分間に制約されている。
ただでさえ、厳しい120分間であるのに、自由に使える時間は90分間だけであり、時間的に非常に厳しい。
この時間内に80点を確保しなければならないことを頭に叩き込んでおこう。
文章の特徴
東大英語のおおまかな文章の特徴は以下に示す3つである。
- 単語のレベルは標準的である。
- 論理的に複雑な抽象度の高い文章が多い。
- 簡単な単語を用いた見慣れない表現が多い。
他の難関国公立、私立などでは、単語のレベルを難しくしているところがある。
しかし、東大英語は上に述べたように、単語ではなく、2や3の特徴によって難しくしている。
これらについては、以下で詳しく解説する。
単語の勉強はもちろん避けてはならないが、東大英語の文章を理解できるようにするためには、それ以上のことが必要だということを抑えておくべきである。
東大英語はなぜ「難しい」といわれているのか
ここでは、上で述べた東大英語の特徴を踏まえたうえで、東大英語を難しくする要素を4つ解説する。
求める能力の多さ
同程度と難易度と言われている京都大学の英語の入試問題は
- 日本語の文章の英訳もしくは内容説明
- 英語の文章の和訳
- 自由英作文
の3つに分かれている。
つまり、要求される能力は
- 英訳能力
- 和訳能力
- 英作文能力
の三つのみである。
実際ほとんどの大学が2~4つの能力しか求めていない。
しかし問題形式からわかると思うが東大に必要な英語の能力は
- 英語の文章を論理的に読む能力…第一問
- 自由英作の能力…第二問A
- 英訳能力…第二問B
- リスニング(ディクテーション能力も含む)の能力…第三問
- 細かい文法的知識…第四問A
- 英語独特の表現…すべてに通じるが特に第四問、第五問
- 文章に適した意訳を含んだ和訳の能力…第四問B、第五問
- 小説読解能力…第五問
このように挙げてみると、求められる能力が他の大学に比べて非常に多いことがわかっただろう。
問題形式が多いということは、要求される能力の多さに直接的に関係しているのだ。
これらの能力は、英語を大学や外国で読んで、書いて、話す上で必ず必要な能力である。
東大英語は、できるだき多くの能力を受験者に試すことによって、本当に英語ができる人を見分けようとしている。
よって、帰国子女や外国人は自動的に有利になる。
逆にこれがペーパーテストで英語の能力を見分ける限界である。
また、単にネイティブのように、英語が話せるかどうか、理解できるかどうかだけではなく、それを使って学問的な考察をして、それをアウトプットできるかどうかということも見ようとしている。
帰国子女や外国人が有利になるのは事実だが、そこにさらに、ある程度の教養と論理的思考ができなければ点数を取ることができない。
多くの能力を求めることで真に英語ができ、かつ学問的にそれを応用することができる人を見分けようとして作られているので、東大英語は難しい。
試験時間の厳しさ
上記でも述べたように非常に厳しい時間設定になっている。
全部を解き切るのはほとんどの人には無理である。
また、問題形式が多いので、その中で自分の得意不得意がある。
そして、毎年文章の難易度などは、各問題によってばらばらで、その個所は毎年一定ではない。
つまり、リスニングを除いた自由に使える90分間で、自分の得意不得意と、実際の問題の難易度の両方を考慮して、解けるところから解いてき、できるだけ多くの点数を稼がなければならない。
短い時間であり、尚且つ時間配分を調節するのが非常に困難である。
論理的に読むことの難しさ
先ほど述べた能力の中に、普通の大学ではあまり問われない、そして身に着けるのが難しい能力が2つある。
その一つが英語の文章を「論理的に読む力」である。
それは、
英文を訳すことに終始せず、文章の一番伝えたいメッセージとともにその文章がどのような論理構造で成り立っているのかを理解して、実際に文章の要点をまとめる(要約)することができる力
である。
高校や一般的な予備校の英語の授業で、長文を解説するときに、多くの先生が上から文を一つ一つ順番に訳す。
そのせいか、多くの受験生が英語の長文を理解するには上から順番に訳せばいいと勘違いしている。
しかし、それでは英語の難しい長文、特に論理的に複雑な東大英語の文章は理解できない。
文章の論理構造を正しく把握して、その要点をつかめなければ本当の意味で理解できていない。
これは英語に限らずすべての言語の文章に通用するが、他大の英語の入試問題ではこれを直接的に聞いてこない分、なくても対応はできる。
しかし、東大英語は第一問で直接的にこの能力を試してくる。
ここに東大英語の難しさがある。
この能力の身に着け方は以下の記事で詳しく解説する↓
英語の表現の難しさ
もう一つ2.1で述べた能力の中で取り上げるべきものはどれだけ「英語独特の表現」に対応できるか能力だ。
英語の表現の難しさの一つに単語のレベルによる難しさがある。
より専門性の高い単語を使えばおのずと英文の表現は難しく見える。
しかし、これなら英検1級や準1級などの難しい単語帳を買って覚えてしまえばいくらでも対応できる。
しかし、英語の表現の難しさはほかにも以下のようなことがある。
- 意味の簡単な単語(基本語)ほどたくさんの意味を持っており使われ方も多様。
- 比喩、特に暗喩(metaphor)を多用する。
- 小説や会話独特の表現がある。
- ことわざやidiomがある。
特に、1,2 は覚えれば対応できるというものではなく、多くの文章を読んで慣れなければならない。
また、この能力は東大英語のすべての問題に最も直接的にかかわっており、どの問題もこの能力を必要とする。
それに、身に着けるのにどの英語の能力よりも特に1,2は最も時間がかかる。
このように東大英語の難しさは
- 多くの能力が試される
- 時間的制約が極めて厳しい
- 英文を論理的に読む力が直接問われる
- 単語以外の英語独特の難しい表現に対応できなければならない
という以上4つの点にあるのだ。
東大英語の対策
最後に上記のような特徴を踏まえて東大英語の対策を簡単に説明していく。
高校1・2年生までに英語の基礎力をつける
この記事をここまで読んできた人は、今すぐに何か特別な対策が必要なのではないかと勘違いしてしまう人も出てくると思う。
しかし、今この記事を読んでいる現在はその必要はない。
この記事を読んでいるということは、東大英語の文章をそもそも読めない人、もしくは読んでも何が難しいのかわからない人たちだろう。
特に中学生や高校1・2年生の人が多い。
このような人たちは、そもそも他の標準的な英語の問題もしっかりと得点できない可能性が高い。
よって、まずは英語の基礎力をつけて、普通の英語の問題、特に難関大学の長文問題を読んで、点数を取ることができるレベルまで引き上げて欲しい。
具体的には、
- 英単語(システム英単語終了)
- 英文法(センター試験もしくは英検2級の文法問題8割以上)
- 英語長文(MARCH以上の長文問題)
- 英文解釈(MARCH以上の長文問題)
この4つの分野をそれぞれ難関大レベルまで引き上げよう。
()内に目安のレベルを書いておいたので、是非参考にしてほしい。
過去問対策にかかるのは1年
もう一つは、過去問対策に1年は使えるように余裕を持って勉強しておくということだ。
つまり、先ほど述べたように高校2年生までに難関大学の長文を難なく読めるようにしておく必要がある。
東大受験で失敗している人は、英語か数学のどちらか一方の受験勉強が間に合っていないケースが多い。
これは、たいてい過去問演習を1年程度みこんで勉強を進められていない人だ。
地方から受験する人は、周りに東大生や東大受験者が少ないので、どうしても情報が少なくなってしまう。
中には、共通テストを終えてから、過去問を解いていくといったイメージで勉強している人もいる。
実際に合格する人は、過去問対策を1年くらいしているということを早いうちから知っていれば、それに向けて勉強していくことはさほど難しくない。
これを聞いて、「そんなにペースが早いのか」と驚いた人は、ひとまず東大専門の対策というよりも今やっている勉強をしっかりとこなすことを考えよう。
ちなみに、東大英語の各問題の対策については下記の記事を参考に勉強しておくとよい。
もうすでに、過去問に取り組むことができる状態の人や、実際に過去問演習でどのような勉強をするのかイメージしておきたい人は、合わせて読んで欲しい。
まとめ
以上が東大英語の特徴とその難しさそして、それを踏まえた対策法の解説である。
何事も対策はまず敵を知るところから始まる。
ぼんやりと東大を目指そうと考えている受験生諸君は今この段階でこの記事の内容を知ることができ非常にラッキーである。
ぜひこの記事の内容を活かして、東大英語の対策の第一歩を踏み出し、対策法を練るスタート段階に立とう。