東大合格者数の高校ランキングをみていくと、開成、筑駒、灘といった超一流の中高一貫校が名を連ねています。
ということは、もし自分の息子が小学生で東大に入れさせたいと思うのであれば、中学受験を考えた方がよいのでしょうか?
また、普通の高校受験を経て高校に入った高校生は東大に合格することは難しいのでしょうか?
確かに、中高一貫の方が高校の学習を先取りすることができるので、非常に有利になります。
しかし中には無理やりな先取り学習についていけず落ちこぼれてしまうケースも少なくありません。
この記事では現役東大生である私が、東大志望者の中高一貫校に通うメリットとデメリットを徹底解説していきます。
中高一貫校のメリット
まずは、中学受験を経て中高一貫校に通うメリットについて解説していきます。
先取り学習
中高一貫校のメリットといえば何と言っても先取り学習にあります。
東大入試は日本最高峰の難易度をほこります。
また、科目が多いことでも特徴的です。
よって、東大入試の過去問対策だけで半年から1年かかる科目もあるのです。
(あくまでも、十分高い確率で合格できる、つまり東大模試などでAやB判定を取るためにはということで、合格者の中にはもっと少ない対策でギリギリ合格したという人もいます。)
よって、少なくとも英数は高校3年生が始まる段階で過去問対策ができる準備を終えていたいのです。
そのためには、英語と数学において高校の全範囲を高校2年生までに終えておく必要があります。
つまり、先取り学習は東大受験ではかなり有利になるのです。
また、効率性の観点からも先取り学習は有効です。
高校の勉強は中学の勉強の3倍もの内容があるといわれています。
前半の3年間で楽をして、その3倍もの分量の学習を後半の3年間で学習するというのは非効率的です。
よって、中学の勉強を早めに終わらせてから高校の勉強に入った方が高校での3年間で勉強が楽になります。
東大専門塾への入塾資格
全ての中高一貫校というわけではありませんが、一部の超一流中高一貫校へ入学すると、東大専門塾へ入塾する資格が与えられます。
例えば一番有名なのが鉄緑会です。
鉄緑会は、開成や筑駒、桜蔭といった指定校へと入学した中学校1年生のみが無条件で入塾することができます。
そのほかの学校や学年の人は入塾テストを受けて合格しなければ入塾することはできません。
これは、鉄緑会が超先取り学習のカリキュラムで勉強を進めていくためです。
鉄緑会は中高一貫校の先取り学習のさらに先取り学習を行います。
中学の間に英数の高校範囲までをすべて終えてしまい、高校1年生からはほかの科目と英数のレベルの高い問題、高校2年生からはもう東大対策に入ってしまいます。
このような超先取り学習のカリキュラムでは途中で入塾することは難しいのです。
たとえ、入塾テストをパスしたとしても、このカリキュラムについていくのはかなり大変とのことです。
よって、指定校へと入学することができた中学校1年生だけが無条件で入塾することができるのです。
また、エミールという東大専門塾では、指定校の生徒しか入塾できません。
エミールでは駿台の優秀な予備校講師陣から直接授業を受けることができ、さらに東大生のアシスタントがつきます。
指定校への入学ができなければ決して入塾することはできません。
東進の東大特進コースでは、特待制度というものがあります。
通常は、模試などの結果に応じて特待の度合いが変わりますが、中高一貫の名門校の中のテストの順位などが反映されることも特例であります。
東進衛星予備校でも、中高一貫の名門校に通っているというだけで数個の講座を無料で受講することができます。
つまり、中高一貫の名門校に通うことで、東大専門塾への入塾資格を獲得できたり、塾の特待制度を獲得することができるのです。
このように、外部への一種のブランドのような役割を果たして、東大受験になにかと有利になるものや資格が得られるケースもたくさんあります。
中高一貫校のデメリット
中高一貫校のデメリットとしては、おもに先取り学習から何らかの原因でドロップアウトしてしまった時、もう一度立ち直ることは難しいというところにあります。
先取り学習からドロップアウトしてしまう原因はいくつかありますので、ここではその原因について解説していきます。
子供の脳の発達が遅く先取り学習に追いつけない
最も考えられる原因としては、脳の発達が遅く先取り学習についていけない場合です。
子供の脳の成長スピードは様々で、早くにグッと成長してしまうケースと遅咲きのようなケースもあります。
その中で小学校で無理やり中学受験をしてたまたま受かってしまった、遅咲きの子は入学後の先取り学習についていけないケースが多いです。
特に、灘高校や開成高校などの超一流の名門校よりワンランク下の中高一貫校で名門校と同じスピードの先取り学習をしている学校によくみられます。
脳の発達が入学時点で若干遅れている子がそのような学校に入学する可能性が名門校よりも多いのですが、そのような子たちに対して同じスピードの先取り学習をしてしまえば、ついていけなくなってしまう子が続出するのは当然です。
結果として、同じスピードで先取り学習をしているのにも関わらず、東大合格者が超一流の名門校の3~5分の1程度になっています。
中高一貫校は12歳から18歳という成長における大事な時期の6年間も子供を教育するので、その成果が子供の脳の発達に大きく依存していきます。
先取り学習がその成長度合いからあまりにもかけはなれていると、そのような人たちが出てきてしまうのです。
勉強のモチベーションを維持できない
もうひとつの原因としては、部活やなんらかの原因で勉強のモチベーションが維持できなくなるということです。
中高一貫校は高校受験がないので大学受験まで勉強の大きな目標というのが6年間ほとんどありません。
よって、例えば部活に打ち込んでしまって極端に勉強のモチベーションを欠いて全く勉強しなくなってしまった場合、そのロスは高校受験を挟んだ人よりも大きくなります。
非常に頭の回転が早く、スペックが高いと思われる子でも中学のころからサボり続けていると、高2になって中学英語すらかなり怪しいということになります。
また、このような人たちはロスが大きいというだけでなく、周りの子がかなり進んでいることによって余計に劣等感を感じることになります。
周りの子は当然先取り学習で日本の進学校の平均以上にも進んでいます。
そことのギャップで余計に自分が今何をすれば良いのかわからず、過度に劣等感を感じてしまうことが多いのです。
ドロップアウトしたあとも立ち直りにくい環境
中高一貫校のデメリットとして、ドロップアウトしてしまうことと同時にもしそうなった場合余計に立ち直りにくい環境であるということがあげられます。
これは、先ほども申し上げた通り、周りの子が日本の平均以上に先取り学習で進んでしまっているからです。
気が付いた時には、もう高校2年生でみんなは東大の過去問を解いているという環境なのです。
その中で、たとえ自分が実も日本の進学校の平均以上でまだまだ大学受験に間に合う段階でも、過度に劣等感を感じてしまうのです。
また、そのような人たちはその環境の中では少数派なので、その子がいま何を勉強するのが適切であるか、自分でもわからないし、周りの教育者もコメントができないのです。
私は、様々な中高生の勉強相談に乗ったり、実際に指導させていただいているケースが多いのです。
このように、まだまだ東大受験には十分時間があるなと思われる場合でも、過度に劣等感を感じて、自分が何をやればいいのか見失って時間を無駄にしている人たちに多く出会いました。
この中高生たちは、このままだと現段階の自分にあった勉強が全くできず、時間を無駄にしてほおっておくと、最終的にもう間に合わないというところまできてしまうのです。
このように、少数派ではあるものの、先取り学習から一旦ドロップアウトしてしまうと、余計普通の高校よりも立ち直りにくい環境であるというデメリットもあるのです。
これから中学受験を考えている人たちへ
これまで、中高一貫校のメリットやデメリットについて解説していきました。
これをもとに、これから中学受験でこのような難関大学を目指す中高一貫校の入学を目指している人とその親御さんに、アドバイスをしていきます。
中高一貫校に入ったら、是非とも「勉強が楽しい」と思えたり、「この大学に入って〇〇したい」というような、勉強のモチベーションとなるものをできるだけ維持できる動機が作れる環境を用意してください。
中高一貫校のデメリットとして、先取り学習からドロップアウトしてしまう危険性を先ほど指摘しました。
これは、中学受験をなんとなく親に言われてやったなど、これまでに勉強のモチベーションとなる明確な動機がない人が、受験後もそれをつかまえられずにいる人に多いです。
明確な動機があれば、必ず自発的に勉強したり、周りの生徒と勉強で競うようになります。
なので、できるだけ入学後に勉強のモチベーションを維持できる明確な動機が見つけられる環境を用意してください。
もし落ちこぼれてしまったら
もし、中高一貫校で落ちこぼれてしまって、立ち直れなくなったとしても、志望校への合格を諦める必要はありません。
重要なことは、周りのと差を意識して、早めに追いつこうと思うのではなく、早めに適切な対処(勉強)をすることです。
場合によっては、東大にすら逆転合格できる可能性があるのです。
以下の記事では、進学校で落ちこぼれてしまった場合の対処法が紹介されています。
合わせて、参考にしてください。
まとめ
以上が、東大志望者が中高一貫校へ進学するメリットとデメリットを解説しました。
中高一貫校、特に灘や開成などの名門校に入学することによって、先取り学習を中学の時点から行うことができ、東大受験にはかなり有利になります。
また、鉄緑会などの東大専門塾への入塾資格なども与えたれます。
しかし、かなりハイスピードの先取り学習はそこからドロップアウトしてしまう危険性があり、もしドロップアウトしてしまうと、周りとの差が大きく立ち直ることは難しいです。
先取り学習から取り残されず、中高一貫校のメリットを最大限に活かすためにも、中学受験をされる人には、入学後の明確な勉強の動機、ビジョンをつかめるような環境作りをしてください。