「東大の過去問っていつからはじめればいいですか?」
このような問い合わせは度々寄せられる。
また、無料音声相談などでもかなり頻繁に聞かれる。
しかし、残酷なことに相談者がこの質問を聞いている時点で、適切な過去問開始時期を大幅に過ぎている場合がある。
中には、受験の一年前から過去問を解き始めなければいけない教科も存在する。
そして、それは一年前には過去問演習ができるだけの実力をつけていなければいけないということである。
ここでは、各科目別に具体的にいつから東大の過去問に取り組めば良いのか目安を現役東大生講師が解説していく。
この記事を読んで、皆さんも是非適切な過去問の開始時期までに過去問演習を開始できるだけの実力をつけて、過去問演習を十分こなして入試に挑もう。
<解説動画(高3生向け)>
<解説動画(高1・2生向け)>
過去問は東大受験を決めたその日から解け!
いつから東大の過去問を解けば良いのかという質問に素直に答えるのであれば、東大を目指そうと決めたその瞬間からだ。
過去問というのは大学が公開してくれている最高の参考書である。
過去問をまずは解いてみて、どのような問題が出題されているのかしっかりと認識し、自分には何が足りていないのか確認することが重要である。
まだ高校の勉強を始めたばかりの高校一年生であれば確かにほとんどの問題が解けない可能性の方が高い。
しかし、中には頭を使えばなんの知識もなしに解くことができる問題も存在する。
特に国語の現代文などは答えが文章中に書かれているので、特別な知識は必要ないだろう。
数学にしても、純粋な確率の問題が出題されれば、数Aの確率を習いたての高校一年生ですら解くことができる。
英語の英作文なども、中学生で習う英語を用いたとしても、正しい文法で問題文の条件に従って文章を書くことができれば、ある程度の点数を得点することだってできる。
このように、高校一年生でも解くことができる問題は中には存在する。
この記事を見ているということは皆さんはもうすでに東大の受験を決心していたり、検討したりしている人たちだ。
よって、この記事を読み終えたその日から是非東大の過去問を一年分解いてみてほしい。
そして、どのような問題が出題されるのか肌で実感して、自分に足りないものはなんなのか逆算して考えてみてほしい。
また、東進などが実施している東大同日模試という模擬試験が存在する。
これは、東大入試が実施されている2月25日、26日にその年の実際の東大入試の問題を解くという模試だ。
模試なので、ただ単にみんなが集まって解くだけでなく、採点もしてもらうことができ、結果も返ってくる。
高校二年生はもちろんのこと、高校一年生の東大志望者も多数受験している。
筆者が高校二年生のときはもちろんのこと、筆者の生徒にはほぼ全員受験してもらっている。
このような機会も存在するのでまずは東大の過去問にできるだけ早く触れてみてほしい。
数学
過去問の開始時期は一年前から
数学の過去問の適切な開始時期は一年前だ。
つまり、現役合格を高校二年生の2月ごろもしくは高校三年生の頭くらいにはもうすでに過去問を解き始めていなければならないのだ。
筆者自身の入試の体験と、筆者が指導して合格したり、残念ながら不合格になってしまったりした生徒を見ると、高校三年生以降に数学の過去問を解き始めると十分過去問演習をしないまま入試に突入する羽目になる。
もちろん、数学以外の科目を得点源にして、ぎりぎり合格できる人も中にはいる。
しかし、これも夏休み以降から始めてしまうとほとんど合格は難しいと思ってほしい。
もちろん、文系であってもこの開始時期は変わらない。
これは文理問わず、数学が東大入試の科目の中で最も点数に差がつきやすいからである。
数学というのは、文系であれば大問が4問、理系であれば6問出題され、およそ各20点の点数が割り振られている。
その中で、少しの計算ミスでも大問まるまる点数が引かれたり、そもそも全く手がつけられない問題も存在したりと、最後まで正しい答えが導出できなければ部分点をもらえる可能性が皆無である。
これまで筆者は数学で涙を見る生徒を多数見てきた。
この科目は、文系理系問わず最も受験生を不合格に導いてしまう科目なのだ。
よって、一年前には過去問演習を開始できるよに高校1・2年生のときからしっかりと計画を立てて勉強を進めてほしい。
ただ、理科三類を志望している人は、さらに演習量を確保することが必要である。
通常理系の6問中3問得点できると普通の科類への合格は難しくはない。
しかし、理三に関しては確実に4問以上は必要になる。
安定して4問以上を完璧に解ききるには1年半前から過去問演習を始めておくことが大切である。
演習する年数、演習方法
実際に演習する過去問の年数は25~30年分である。
まずは、夏休み前までに10~20年分ほど演習を進めてほしい。
一年分をやる際には、
- 時間(理系:150分 文系:100分)を計って一年分解いてみる。
- 時間内に解ききれなかった問題を数時間かけて考えてみる。
- 答え合わせと復習、解けなかった問題の解き直し。
- 青チャート、フォーカスゴールド、一対一対応などの数学の問題集に過去問の類題あるいは問題の要素を含んだ問題などがあれば適宜問題集を復習する。
- 再度時間を計り一年分もう一度解き直す。
このようなサイクルで進めると良い。
このようにすることによって、最低限一年分の過去問を2回、問題によっては3回は解くことができる。
頻度としては、4つの目ステップである問題集に戻る復習が少なければ1週間に一年分、復習が必要であれば2週間に一年分解くと良いだろう。
夏休み以降は残りの過去問を早急に解き終えて、2周目に突入しよう。
初見の問題が欲しければ東大模試の過去問も適宜使うと良い。
また、個人的には直近2、3年分の過去問は共通テスト後の直前期に残しておくことをおすすめする。
英語
過去問の開始時期は一年前から
英語は、かなり得意で英文を高速に読解できたり、リスニングや英作文が得意な人以外は基本的に一年前から始めた方が良い。
英語は数学の次に点数の差が開きやすい科目である。
さらに、英語は他の科目に比べて点数がとりやすい科目となる。
数学などは5割取ることができれば合格点となる、国語も目標点は5割ほど、社会や理科が6割ほどなのに対して、英語の目標点は7割である。
中には8割近く取る人もいる。
このように英語は他の科目の中で最も得点源になりやすいのだ。
しかし、東大の英語は他の大学と異なり、問題の種類も多く、時間も少ないので、高速な処理能力も要求される。
東大英語の形式を見てみよう
- 1A:要約問題
- 1B:段落整序また空欄補充問題
- 2A:自由英作文
- 2B:和文英訳
- 3:リスニング
- 4A:文法、精読問題
- 4B:和訳
- 5:小説読解
このように数が多い上に、普段他の大学の入試問題では出題されないような問題も存在する。
これを120分で解くのだが、かなりスピードが要求される。
このスピードで時間内に問題を処理するためには一年は練習が必要なのだ。
中には、帰国子女や昔から英会話などで英語に馴染みが深く、留学経験もあるような人であれば話は別だが、しっかりと目標の7割以上の得点を目指すのであれば、一年は必ず演習時間をとるようにしてほしい。
演習する年数、演習方法
英語の過去問演習方法は少々複雑である。
まず、リスニングと英作文の対策は多くの人が苦労する場面である。
これらの対策は過去問だけでなく、リスニングと英作文そのものの対策を1年間通して常時やっておく必要がある。
リスニングであれば、過去問の他に日々の長文をCDで聴いたり、キムタツリスニングやTOEICなどのリスニングの問題集もやると良い。
英作文もドラゴンイングリッシュの構文暗記や、キムタツライティング&グラマーによる演習など、過去問以外の問題集でもある程度演習しておく必要がある。
その上で、まずは2009年以前の過去問は各問題時間を測らずに個別に解いていこう。
この段階で正しい解き方のプロセスをしっかりと養うことが大切だ。
要約、和訳、小説読解の問題はかなり古い年度でも問題形式は全く変わらないので、1990年台の物まで遡っても問題ない。
1Bの段落整序や空欄補充問題は1999年以前は形式が全く異なるので2000年以降の問題で演習をしよう。
2009年以前の過去問で個別に問題を解くことができたら、2010年以降の問題を時間を計って解こう。
いくら2009年以前の問題を十分演習したとしても、いきなり時間通りに解くことはできない。
時間のかかっている問題を集中的に復習し、英文を感覚的に読んで問題を感覚的に解いていくことができるようにしよう。
この時間を測る演習には、本番同様リスニングを必ず筆記試験開始45分後に流すようにして、できるだけ本番の環境を再現して演習すると良い。
なお、和文英訳は2018年度以前の問題ではあまり過去問が存在しない。
よって、筆者の生徒には京大の和文英訳の過去問演習をしてもらっている。
京大の和文英訳は東大のものよりも遥かに難しいので、京大の過去問を演習しておくことによって、東大の和文英訳はかなり余裕を持って解くことができるようになる。
こちらも過去問が足りなくなってしまったら、東大模試の過去問を解くと良いが、各予備校によってクセがあるので注意が必要だ。
河合、代ゼミのものが標準的だがたまに変な問題が混じっている。
駿台のものは一番方向性が異なっているのであまり演習しない方が良い。
東進は最も方向性が似ているが難易度が難しいので、注意が必要である。
また、英語も共通テスト後の直前の演習のために直近2, 3年分は残しておくことをお勧めする。
国語
過去問の開始時期は一年前から半年前の間に始める。
国語に関しては、正直半年前に開始していれば、いつ開始しても大丈夫である。
まず第一に国語は文理ともに点数の差がつきにくい。
英語や数学ほどそこまで時間をかけて演習をする科目でもないのだ。
よって、一年前あたりから、2, 3週間に一年分のペースでたまに過去問に触れておくというのが良いだろう。
もちろん、英数に不安があれば夏以降の演習でも問題はない。
また、国語の半分を占めている現代文については、過去問をただ単に演習するというよりも、正しい解き方を教えてもらう機会を作ることの方が大切である。
現代文については、赤本や各予備校から公開されている模範解答はかなりばらつきがあり、中にはそのまま入試で書いたとして点数になるかどうか怪しいものも存在する。
よほど現代文が得意でない限りは、自分で勉強すると、正解がわからないままになってしまう。
後ほど詳しく説明するが、正しい解き方を教わる機会をしっかり設けることの方が年数をこなすことよりも重要なのだ。
また、古典(古文・漢文)に関してはまずは古典単語、古典文法や漢文の句法などといった、知識面のインプットが済んでいるかどうかが大切だ。
これらのインプットをやらずして過去問を解くことは、英単語帳を全くやらずに過去問を解くことに等しい行為だ。
とはいっても、英語の1/5程度しか知識量としてはないので、早急に覚えてしまうことをお勧めする。
一年前にはこれらの暗記が終わっていると理想的だが、遅くとも夏休みまでには終わらせるようにしよう。
この暗記を終えてから過去問に入るようにしよう。
演習する年数、演習方法
演習する年度は最低で10年分である。
それ以上は早めに過去問演習を始められた余裕のある人がやれば良い。
ただ、東大の国語は2001年から大幅に問題数が減少し、今もこの問題形式をたもっているため、使える年度は2022年現在は多く見積もって22年分だ。
これだけあれば十分である。
それよりも現代文の正しい解き方を教わる機会が大切だ。
最もお勧めなのが、東進での林修先生の講義を受講することである。
林先生はその他の多くの現代文の先生とは異なり、解答の組み立て方を数学のように論理的に教えてくださるので、誰しもしっかりと練習をすれば大きな失点を免れるレベルには成長できる。
林先生が講義内で教えてくださる解答へのプロセスをしっかりと復習してもう一度解き直しの際に実践していくという勉強方法がかなり有効だ。
先生の講義はある一定以上の成績を模試で出すことができれば、東大特進コースの特待制度を利用して無料で受けることができる。
1講座無料の特待制度であればそこまで難しくはないので、是非一度林先生の講義を受けてみると良い。
また、どうしても直接講義を受けられなくても、メルカリやヤフオクなどで先生のテキストが売られている。
これを購入して、他の赤本や解答速報の解答と比較しながら自分で勉強を進めていくことも一応可能ではある。
どうしても林先生の講義を受けられないような人はこのやり方を試してほしい。
古典に関しては、先ほども述べた通りまずは暗記事項を押さえてから過去問に入るということが何よりも重要だ。
こちらは市販の赤本の解答でも十分一人で演習ができる。
こちらもしっかりと復習と解き直しをしよう。
なお、東大の国語に関しては他の科目とは異なり時間にはかなり余裕がある。
よって、わざわざ一年分通しで解かなくともよい。
例えば、現代文と古典で分たり、大問別に解いても大丈夫だ。
理科・社会
過去問の開始時期は半年前から
理科と社会に関しては、英数とは異なり直前で伸びやすい科目の一つだ。
そして、勉強量も英数に比べるとそこまで必要ではない。
よって、英数とは異なり多少対策が遅くなっても全く問題はない。
まず、社会や理科の基礎的な項目を勉強し始めるのが、余裕がある人で一年半前、普通のペースで一年前となる。
そこから基礎事項を習得するには半年はかかってくる。
よって、余裕のある人は一年前くらいから過去問演習に入ることができるが、デッドラインとしては半年前となる。
ちょうど夏休みくらいから過去問演習に入れるよう勉強しておけば大きな問題はない。
さらに、理科や社会は過去問の演習もそうだが、基礎的な項目をいかにマスターしているかで、そこまで演習を積まなくともある程度点数をとることができる。
よって、過去問演習も確かに大切だが、それ以前に基礎的な項目をしっかりと学習していることが大切である。
ただ、理三志望や英語がどうしても苦手で理数系がかなり得意な人は理科でどうしても高得点が取りたいところである。
実際理科は演習量さえ確保すれば高得点を取ることも難しくはない。
理科を得点源にしたい人は一年前から余裕を持って過去問に入ることが重要である。
演習する年数、演習方法
先ほども述べた通り、理科や社会は英数ほど過去問の演習量を必要としない。
さらに、地理などはデータが古すぎると過去問演習としては不適切であるということもある。
よって、必要な年数は十年分だ。
基礎をしっかりとマスターして、その上で10年分を徹底的に分析すれば総合点が合格点を越えるだけの点数を稼ぐことは難しくはない。
ただ、前章の最後の記述の通り理三を志望している人など理科でどうしても高得点を取りたい人は、20年分以上やることが重要だ。
さらに、たいていの人が物理・化学選択だが、このうち化学は時間がどうしてもかかってしまう。
理科は150分で2科目一気に解くので高得点を目指す場合は、物理を半分の75分以下で解く訓練も欠かせない。
まとめ
以上、東大の過去問をいつから解けば良いのか、また何年分をどのように解いていけば良いのかも含めて各科目ごとに解説した。
まとめると、
- 数学:一年前から 30年分程度
- 英語:一年前から 30年分程度
- 国語:半年〜一年前から英数に支障がでないペースで 10~22年分
- 理科・社会:半年前から 10年分程度
ただし、理科三類を志望している人は、数学と理科をこれらの目安よりも半年前から始められるように勉強する必要がある。
このように見ると、東大の過去問演習はかなりの時間が必要であるということがわかるだろう。
つまり、それまでに過去問演習をやるだけの実力がしっかりとついていなければいけないということだ。
今この記事を読んで東大を目指そうと思っているみなさんはまずこの日から東大の過去問をすぐに一年分解いてみてほしい。
そして、上記に示した時期から余裕を持って過去問演習ができるよう日々の勉強を計画的に進めてほしい。