大学を選ぶとき、「経済学部」とか「文学部」とか「工学部」とか、たくさんの選択肢があるけれど、実際どんなこと勉強するのかよくわからない……
こんな風に思ったことはありませんか?
理系の学部はまだいいかもしれません。具体的にロボットを扱うとか、バイオテクノロジーの研究をしているだとか、想像しやすいからです。
でも文系の科目は高校などでほとんど扱わない分野のものも多いですし、全く想像もつかない、なんてものも多いと思うのです。
そのひとつが法学部でしょう。
ある意味で、「法学部」というのはイメージが確立しているとも思いますが、実際に法律の勉強ってどんなことをするのか、わからない人がほとんどなのではないでしょうか。
今回は法学部で勉強する法律というのがどんなものなのか、簡単に紹介してみようと思います。
そもそも法律ってどういうものなの?
法律といえばなにを思い浮かべますか、と普通の人に聞くと。
犯罪とか、契約とか、国会とか、裁判とか、そういう答えが返ってきます。どれも正しいでしょう。でも、ひとつ、多くの人が勘違いしている、もしくはあまりちゃんとわかっていないのが、「法律はあくまで道具である」ということなのです。
例えば、XさんがYという人からお金を借りて返さなかったとします。YさんはXさんからお金を返してもらおうと裁判所に訴えます。
これを法律的に言うと「YはXY間の消費貸借契約に基づく金銭支払い請求訴訟をXに対して提起した」となります。
これだけだと、裁判所は「XはYにお金を返しなさい!」という判決を出すだけのように思えます。でも実際はそうはならない。
Xの側はお金を払ってたまるかと、法律を駆使して、払わない論理的な理由を主張します。例えば、「Yは不当に高い利息を要求しているから、この契約は公序良俗違反で無効だ」という主張などです。
これに対し、Yは再反論として「 不当に高い利息だったとしても、正当な利息分と元本は返すべきだ」などと主張したります。
この言い合いにぴったりと答える法律があるわけではありませんから、裁判所はどっちの言い分がもっと論理的で説得的か、過去の判例はどんな基準で同じような事件を処理してきたか、などを考えて判断をすることになります。
法律というのは言うなれば武器なのです。ナイフという武器は投げて使うこともできれば、切りつけて戦うこともできる。柄で相手を殴りつけることもできる、というのと同じで、法律も使う人の腕次第で様々な論理の根拠になり、裁判で相手を負かす道具になるわけです。
法学部ではどんなことを勉強するの?
ただ、法律は道具です、といっても、好き勝手使えばいいというわけではありません。
論理的な結論を導くためには法律というものを論理的に分析した上で、戦い方の基本的なルールに従ったやり方で勝負を挑む必要があります。
これがいわゆる「学説」とか「法律的思考」、「判例」などというものです。
そのため、法学部ではどんな考え方があって、その考え方はどこが強くてどこが弱いのか、どうやって使うと説得的になるか、というようなことを勉強することになります。
もちろん、最初の頃は基本の基本を頭に叩き込まなくてはいけないのでつまらないし大変、というだけなのですが、もう少し発展的な内容になるととても奥が深くて面白い学問です。
終わりに
今回は大学の法学部でどんなことを勉強するのか、解説してみました。
法律、というと冷たい感じででつまらない、という印象を覚える人がとても多いようですが、実はとっても人間的で熱い学問なんです。
突き詰めるとある一人の人間を助けるための道具ですから、当然のことです。ただ、すべての道具がそうであるように、使い手の腕次第でその人は助かりもすれば取りこぼされもする。言葉通り人の人生や命を左右する仕事をする者の責務として、道具の扱い方をしっかりと学ぶ必要があります。
そしてこれこそが大学の法学部で学ぶことなのです。
ではまた!
(白黒熊 東京大学法学部)