私立大学の最高峰・慶應義塾大学。
私立大学ということもあり、現役大学生だけでも数万人の規模を誇っている。
おそらく多くの高校生は慶應義塾大学は内部生、一般受験生、推薦組、帰国生など多様な出自の学生を受け入れており、それによる多様性があると考えていることだろう。
では、多様性に満ちた慶應義塾大学に入学したらどのような選択肢が待ち構えているのだろうか。
また、受験をして大学に入った人たちと内部進学生の間に学力の格差や学内カーストのようなものは存在しているのだろうか。
この記事の読者は、大学進学あるいは受験を前にしている者が多いことだろう。
今回は、慶應義塾大学の“塾生”である筆者が、慶応大の内部事情について語っていくこととする。
慶應義塾大学への入学方法
まずは、慶應義塾大学への入学方法について解説をしていくこととしよう。
様々な学生を受け入れるため、多くの入試制度を導入している。
慶應大を志す学生は、ぜひ以下の一覧を参考にしてみよう。
内部進学
慶應には、幾つかの付属校が存在する。
小、中、高のいずれかの段階で慶應の付属校に入学すれば、そのまま持ち上がりで慶應義塾大学に進学することができる。
〈小学校〉
- 幼稚舎
- 横浜初等部
〈中学校〉
- 普通部
- 中等部
- 湘南藤沢中等部
〈高校〉
- 高等学校
- 志木高等学校
- 女子高等学校
- ニューヨーク学院
- 湘南藤沢高等部
中でも特に幼稚舎は10倍以上の倍率を誇り、入試において知能や学力のみではなく親族関係(代々慶應の一家であるか・家柄)や縁故を重視されるとも言われている。
中学受験においてはどこも高倍率で高い学力が求められるが、湘南藤沢中等部では帰国生受け入れの割合がかなり高い。
そのため帰国生にはかなり入学しやすく、また、入学した後も英語力を活かしたレベルの高い授業を受けることができる。
高校受験では、特に志木高等学校や女子高等学校は高偏差値を誇る。
都立の進学校である日比谷高校や西高校などと併願する学生も多い。
高等学校(=俗に言う塾高)は推薦入試制度を導入しており、野球やラグビーなどのスポーツ推薦などで入学できる者もいる。
大学にはスポーツ推薦入試は導入されておらず、慶應側としては優秀なスポーツ選手は中学や高校のうちから囲い込み、より強い選手へと育成していきたいということなのかもしれない。
一般入試
筆者としてはもっとも馴染み深いのが一般入試である。
大学から入学するための入試方法として、もっともふつうなのが一般入試の受験である。
他の大学と同様に、2、3月にそれぞれの学部ごとに実施される入学試験(多くは小論文、英語、社会科目や数学など)を受験し、合格すれば慶應義塾大学に入学することができる。
この入試で見られるのは入学試験においての得点のみである。
高校での成績や学業以外の実績(スポーツ、慈善活動など)は全く見られない。
そのため、もっともわかりやすく単純な入試制度といえるかもしれない。
推薦入試
推薦入試にも種類があり、指定校推薦、文学部自己推薦、AO入試などがある。
それぞれアピールポイントをエントリーシートに書いて提出することがあるため、具体的に公表はされていないが高校時代の活動が見られている可能性が高い。
また、指定校推薦は各高校に慶應義塾大学の各学部の推薦枠が与えられ、そこに応募できる最低の内申が決まっているため、高校時代の成績も高く保っておく必要がある。
ちなみに筆者の高校には法学部の指定校推薦枠が来ていたが、内申の足切りラインは4.3(5段階評価の成績の全科目3年間の平均が4.3以上であること)であった。
帰国生入試
大学では、帰国生向けの入試制度を導入している。
学部ごとに入試を受験できる資格は変わってくるが、基本条件としては海外の高校に最終学年を含めて2年以上通っており、TOEFLなどの点数を保持していることが必要なようだ。
塾内の構成
ここまで、慶應義塾大学には多様な入学方法があることを説明してきた。
では、実際に大学生の出自はどのような割合なのだろうか。
- 一般入試組…約65%
- 推薦・AO組…約20%
- 内部進学組…約15%
年度によって多少左右するが、だいたい上記の割合で成り立っている。
この割合を見て、どのように感じられるだろうか。
大学受験を志す高校生は、「だいたいの慶應生が一般入試を受験して入学しており、内部生や推薦生は一握り」という考えを(特に地方の高校生は)抱いている人間が多いように感じる。
しかし、その認識は全くの間違いであり実際は一般入試で慶應義塾大学に進学する人間は全体の6割強でしかないのだ。
塾内の雰囲気
ここまでに説明してきた慶應生だが、果たして一般入試組と内部生は仲良く大学生活を一緒に送ることができるのだろうか。
答えは、「所属する団体やどう大学生活を送るかによる」としか言うことができない。
例えば文学部の内部生の割合は8%程であり、クラスに1人内部進学者がいるかどうかなのである。
そうなると、部活動やサークルで内部進学者に関わることがなければほとんど関わらずに終わるだろう。
また、内部進学者は体育会部活動に入ることが多い。
逆に言えば、体育会部活動では半数以上、あるいは7,8割が内部進学者であることが多い。
理由としては、慶應義塾の付属校はスポーツ系の部活動がかなり盛んであること、大学入試がないため部活動にうちこめる時間や労力がかなり多いこと、中学生や高校生の時点で慶應義塾大学に行くことが確定しているのでどんな大学生活を送るかの計画を立てやすく、考えた挙句ストイックな選択肢を選ぶことが多いこと、などが挙げられる。
さらに、内部生のネットワークで楽な授業の情報などがかなり出回るため、教養の授業でも内部生が多く履修している科目やそうでない科目がある。
つまり内部生と仲良くなれば楽な授業や試験の対策方法なども簡単に情報が入ってくるのだ。ゼミに関しても同様である。
筆者は一般入試で大学に入学し、大学生活を通して非常に多くの内部生と関わった方だと自負している。
その中で感じたことは、大まかに以下の通りである。
内部生も最初は不安で同じ高校同士で固まる傾向にある
入学式の時などは体育会生は着用マストであることが多い「学ラン」を来て固まってたむろする内部進学者が散見される。
そしてそれをみて圧倒され、怖がる外部生も多い。
しかし、気にすることはない。
みんなもきっと、大学の入学式に行くのに、同じ高校の奴が居たら一緒にいくだろう。
それと全く同じである。
誰もが知っている有名会社の御曹司や、テレビで活躍する有名人の二世などと出会う機会がある。
やはりこれは内部生の割合が極めて高く、特に幼稚舎出身者は目がくらむような家庭の出身であることが多い。
幼稚舎は6年間クラスが一緒であり、かなり絆が深い。
もちろん同じ出身同士で親友のような関係を築いている者が多いが、外部生とも隔てなく仲がいい人が多い。
そんな時は彼らの武勇伝を聴いてみると面白いかもしれない。
そして、内部生と大学受験組、帰国入試組の関わりという点から導くことのできる結論は以下の通りであろう。
結局外部生の方が割合が圧倒的に多いため、関わる機会さえあれば仲良くなる
帰国生もそもそも人生の背景がかなり多様であり、そこで育まれた価値観も人と異なる。価値観が合わないと感じて関わらないようにすることも可能。これは大学生活の人間関係そのものについて言えることである。
内部生だ、帰国生だ、というだけで壁を作ってしまうのはせいぜい最初の数ヶ月だけである。
もちろん内部生はもとから仲のいい人間が大学にいる。
しかし、結局そこだけで固まっているということはない。
帰国生も、最初はまず日本での大学生活で本人たち自身も文化の許容に悩み、帰国生と関わる者も関わり方に悩むことがあるかもしれない。
同じ大学生活を共に営んでいくにあたり、多く関わり、互いの価値観を開示しあい、適応しあっていく。
そうすることで多様な学生のいる慶應義塾大学では、人との関わり合いを通じてお互いの価値観を広げ、人として成長していくことができるのだろう。
理想の大学生活
それぞれの人間にとってたくさんの選択肢が与えられることが慶應義塾大学の強みであることがお分かりいただけただろうか。
では、最後に理想の大学生活について触れていく。
内部生の例
内部生にとっての失敗例とはなんだろうか。
それは、十分ある大学準備期間で十分に大学生活をどう過ごすかを考えられず、大学生活を謳歌しきれないことだ。
内部生の最大の強みは、大学受験をする者よりもはるかに「慶應義塾大学に入学するまでの準備期間が長い」ことである。
大学受験組は、国立志望で3月の後期入試まで受験した人間であれば慶應に入学することが決まってから入学準備するまでに1週間ほどしかない。
準備期間の長さは圧倒的なアドバンテージであろう。
自分はどんな大人になりたいのか。
そのためにどんな大学生になりたいのか。
これを考える期間は十分にあるし、入試勉強というものがないので(卒業試験などはあるが、そのための必要学習時間は入試よりもはるかに少ない)職場見学や大学の部活動見学に時間を当てることもできる。
この記事の読者の中に慶應にかぎらず私立大学の内部生がいれば、ぜひ大学生活の準備を入念に行って欲しい。
それは、外部生が死ぬほどやりたいけれどもできないことなのだ。
一般受験組の例
一般入試受験組は、とにかく大学が決まってから時間がない。
地方から引越しをする人間であれば特にドタバタであろう。
大学の情報が特にない中で活用した方がいいものは、以下の通りである。
同じ高校で慶應に入った先輩
とにかく、同じ高校の先輩を辿って連絡を取り、アドバイスを求めよう。
同じような環境から慶應に飛び込んだ人間として、たくさんの履修情報やサークル情報などをあたえてくれる。
地元の三田会
地方の学生は三田会を利用しよう。
都道府県、世界各都市に慶應のOB団体である三田会という者が存在している。
入学前に三田会で新入生を祝う会合が催されることが多く、そこには年次の高いOBOGから慶應大学を卒業して数年とたたない者もいる。
多くの先輩に出会える機会であるため、ぜひ活用しよう。
慶應のSNS
ツイッター、インスタグラムで慶應の団体の情報を常にチェックするようにしよう。
ツイッター限定で発信される新入生向けイベントや推薦生限定新歓イベントなどがある。
ギリギリに大量の情報をかき集めなければいけない一般受験組にとって、SNSは絶対必要なアイテムだ。
推薦受験組、帰国受験組の例
推薦受験組や帰国受験組は、一般受験組よりは早く合格をもらい、進路を決定することができる。
そのため、まずは4-2で書いた情報収集を行っておくことをお勧めする。
また、それに加えて以下のことを行っておくとスムーズに大学生活を滑り出すことができる。
住居の確定
一人暮らしをするのであれば、上京する学生で不動産が溢れる2,3月をさけるため推薦で合格が出た秋や冬の時点で家を決めるようにしよう。
そうすれば日吉キャンパスのそばの優良物件をいち早く抑えることができる。
アルバイト探し
大学生にとっての永遠の問題。
それが金欠である。
とにかく遊びたい、そのためにはお金が必要になってくる。
大学進学が決定したら様々なアルバイトに目星をつけておこう。
高校に内緒でバイトを始めてしまうのもアリかも、、、?
自動車免許取得
大学に入学してから免許を取得することは以外と億劫なものである。
そのくせドライブなどは大学生の遊びにつきものだ。
さらに、就職活動において自動車免許を保持していることがマストな企業も存在する。(社会人になると営業外回りで車を出さねばならないこともあるため、必要最低限のスキルとしている会社がある。)
合格が決まったらすぐに自動車学校に通い始めることをお勧めする。
まとめ
ここまで、慶應義塾大学の様々な入試制度の説明と合わせてそれぞれの入学方法での”慶應義塾大学での処世術”を伝授してきた。
いかがだっただろうか。
慶應義塾大学を志望している君、内部生の君、すこしでもこの記事を参考にしていただければ幸いだ。
いろいろなことを説明してきたが、結局は慶應大学は多様性溢れる大学なのである。
そのため、他者を受け入れていく姿勢さえ持てば、いろいろな価値観に出会い、人として大きくステップアップできる大学生活が送れることまちがいない。
ぜひこの内容を心に留め、大学生活について思いを馳せてほしい。