英語についての最も多い問い合わせの一つに、英検は受けるべきか、どの級を受験するのが良いかというものがある。
生徒の皆さんは、学校で英検を受験することを勧められたり、周りの受験生も皆英検を受験するので、焦って自分も受けなければと思いがちなのである。
しかし、実際難関大学を目指すのに英検は受けておいたほうがいいのだろうか?
どの程度の級であれば難関大学の受験レベルとして適切なのだろうか?
実は、筆者は帰国子女でアメリカに幼少期4年以上住んでおり、帰国後高校2年生のときに英検準1級を取得している。
この経験から、受験で英検がどのように役に立つのかについて、自分の経験をもとに徹底解説していく。
この記事を呼んで、英検の受験を考えている受験生のお役に建てると幸いである。
<解説動画>
英検のレベル
まずは、英検の各級のレベルに関して解説しておく。
英検のホームページには、英検の各級のレベルについて、
習得目標 級 推奨目安 出題目安 出題形式 使える英語の登竜門
- 基礎力定着
- 高校入試レベル
5級 中学初級程度 英語を習い始めた方の最初の目標。
家族のこと、趣味やスポーツなど身近な話題が出題されます。
英語の基礎固めに最適です。
スピーキングテストも受験可能です。
- 録音形式のスピーキングテスト
4級 中学中級程度 出題形式や内容が、より実用的に。
身近なトピックを題材とした読解問題が加わります。
基礎力をぐんぐん伸ばしていきましょう。
スピーキングテストも受験可能です。
- 録音形式のスピーキングテスト
3級 中学卒業程度 二次試験でスピーキングテスト。英語で考えを伝えましょう。
筆記試験の題材は、海外の文化など少し視野が広がります。
中学卒業段階の英語力の達成目標:3級(文部科学省)
使える英語で世界へ
- 大学入試レベル
- 2級から海外留学
- 履歴書で評価される
準2級 高校中級程度 教育や科学などを題材とした、長文の穴埋め問題が加わります。
センター試験の問題形式と共通点が多く、入試対策にも最適。
高校卒業段階の英語力の達成目標:準2級~2級(文部科学省)
2級 高校卒業程度 医療やテクノロジーなど社会性のある英文読解も出題されます。
海外留学、国内での入試優遇・単位認定など、コミュニケーション力が高く評価されます。
ビジネスシーンでも採用試験の履歴書などで英語力をアピールできます。
ライティングが加わります。
リーダー(品格)の英語
- ライティング、スピーキングを含む4技能の総合力を測定
準1級 大学中級程度 エッセイ形式の実践的な英作文の問題が出題されます。
「実際に使える英語力」の証明として高く評価されています。
1級 大学上級程度 二次試験では2分間のスピーチと、その内容への質問がなされます。
カギは英語の知識のみでなく、相手に伝える発信力と対応力。
世界で活躍できる人材の英語力を証明します。
この表を見る限りでは、大学受験に関わってくるのが、ちょうど英検2級程度だと思われる。
ここからは、筆者が実際に受けた主観を含めて話をする。
筆者は英検2級と準1級を受けたことがある。
英検2級というのがちょうど現在のセンター試験や共通テストに相当する難易度である。
なので、正直難関大学の二次試験のほうが圧倒的に難しい。
それでは、準1級はどうだろうか?
正直難関大学の二次試験と英検準1級とでは、難易度の方向性が異なる。
英検準1級はとにかく単語が難しく、中には大学受験以上の単語のレベルが要求されるものもある。
しかし、文章の論理構造は比較的簡単だ。
ニュースや科学雑誌の文章が多く、一次情報がメインの文章なので、専門的な単語が分かる人にとっては読解は難しくない。
また、筆記試験はすべてマーク式なので、和訳など難関大学で要求される記述試験はないのだ。
難関大学の英語では、センター以上の単語力は要求されるものの、英検準1級ほどではない。
それに、論理構造が難解な文章が多く、単語がわかったからといって、記述問題に対して容易に答えられるわけではないので、別途読解の対策が必要となってくる。
英作文に関しては、条件が各大学ごとでバラバラなので、なんとも言えないが、英作文に関しては、しっかり対策すればどんな試験形態だろうが、ある程度の文章を書くことはできる。
なので、英作文を除いて考えると、英検準1級と難関大学の二次試験の英語とでは、このように難しさの方向性が異なるのだ。
英検利用が可能な大学
それでは実際に入試で英検利用が可能な大学はあるのだろうか?
以下のページには、英検で受験可能な私立大学がすべて掲載されている。
これを見る限りだと、一番難関な大学は早稲田大学になる。
あとは、MARCHなどの大学が英検の利用による加点、テスト免除、得点換算などを受けることができる。
さらに、これを見る限りだと出願資格で必要という場合もありほとんど、英検2級もしくは準1級が要求されている。
難関大学に関していえば、英検2級はもちろん、準1級以上の級を持っているからといって直接的に入試にプラスの影響を与えるということはなさそうである。
難関大学受験に必要?
ここからは、難関大学の受験に英検は必要かどうかについて考察していく。
東大・京大受験
まず、東大と京大受験を考えている人の場合について解説する。
正直いうと、まったくもって役に立たないので、英検を受験することは考えなくて良い。
先程も解説したように、英検2級レベルであれば、センター試験と共通テストと同様のレベルになる。
なので、東大と京大に向けて勉強をしていれば、英検の勉強をせずとも自ずと合格することができる。
また、英検2級が東大、京大受験に有利になることはない。
そもそも、東大、京大受験で英検を取得していないと、出願できなかったり、取得により加点されたりといったことはないのだ。
では、英検準1級はどうだろうか?
こちらに関しては、更に回り道になるので受験することはおすすめできない。
特に、東大は語彙が標準的なものしか出題されないが、その代わりに、論理的に難解な文章を短時間で読まなけれならないという点が難しい。
なので、論理的に平易な文章で、なおかつ語彙がかなり難しい英検準1級とは難しさが真逆なのである。
さらに、東大、京大受験ともなると、他の大学の受験に比べて受験科目がかなり多い。
たとえ、英語がかなり間に合っていて、余裕があったとしても他の教科が間に合っているケースというのは稀である。
なので、英検の対策をしている暇などがあれば、他の教科の対策、特に数学の勉強にしっかりと時間をかけたほうが、合格率は上がるのである。
東大、京大の受験を考えているのであればまず必要ないのである。
旧帝大・医学部
それでは、旧帝大、もしは医学部を目指している人はどうだろうか?
医学部を目指している人に関しても、東大、京大志願者と同じく英検は全く必要ないだろう。
特に医学部は、英語の他に数学や理科の配点や得点率が高かったり、面接対策をしなければいけなかったりする。
なので、普通に受験することを考えれば、英検の勉強をしている暇はなさそうである。
それに比べて、医学部の中でもレベルの低い大学では、英語は比較的簡単なことが多いので、英検準1級の勉強をしたところで、入試の英語に役立つことはない。
旧帝大に関しても、理系の場合は医学部と同じ理由で受験してもあまり大学受験には役に立たないだろう。
しかし、文系の特に国際的な学部を志望している人は、もし自分の大学受験の勉強に余裕があれば受けておくのもありだ。
大学受験には約には立たないが、大学に入ってから英語で授業を受けたり、留学をするときにその能力は役に立つ。
特に文系の人は比較的受験科目も少なく、余裕を作ろうと思えば作ることができる。
将来のために大学入試以上のレベルの英語を高校生のうちから勉強しておくのも悪くはない。
ただ、大学以降、特に留学や大学院入試ではTOEFLであったり、就活ではTOEICの点数のほうが英検より重視されている。
なので、将来のことを考えると、英検を今受けておくというよりは、TOEICやTOEFLを受けたほうが良い。
私立大学
私立大学の場合では、その学校に応じて英検を取得しておくと入試に利用することができる。
先程示したリンクの中に各私立大学での英検の活用方法が記載されているので、興味のある方は是非確認してほしい。
一番難関だもので早稲田大学の国際教養、文化構想、商学部などがある。
また、ワンランク下のMARCHや関関同立では、英検のCSEスコアを得点に換算したり、準1級を取得しておくことで、共通テストを満点換算することができるのだ。
また、英検利用枠というものを使って受験ができる大学も存在する。
ただ、こちらもよっぽど英語が得意でない限りは、受験はおすすめしない。
そもそも英検2級を合格することができるレベルであれば、普通の受験でも難なく突破することができる実力があるということだ。
また、大学入試以上の対策が必要となってくる準1級については、大半の人がその対策をするほどの余裕が他の教科にないというのが現状である。
なので、よっぽど英語が得意で他の教科の勉強に余裕があるくらいでないと、英検の受験はおすすめできない。
筆者の体験談
ちなみに、筆者も実は高校2年生のときに英検準1級を受験して、合格している。
それが、自分の受験に役に立ったのかどうかについて解説していく。
結論からすると全く役に立っていない。
当初から東大志望一筋であったので、そもそも英検利用ができるような私立大学の受験など考えていない上、受かったところで東大に落ちた場合は浪人することを決めていた。
強いて役に立ったことといえば、国際教養大学の英語試験免除である。
しかし、中期の試験でほぼほぼ東大に合格するであろうということがわかっていたので、当日受験会場にすら行っていない。
また、筆者は帰国子女で東大の英語の対策を全くしていなくても、ほとんど合格点が取れてしまうという異常な状態であった。
数学の勉強もこつこつ高校1年生のときからしていたので、高校2年生の時点で英数はほぼ合格点を取得することができていた。
このような特別な状況下でかなり余裕があったため、高校2年生のときに英検の勉強がたまたまできただけである。
通常の受験生の場合、東大志望者にとっては、高校2年生は3年生と同様に大切な時期になってくる。
このような時期に英検を勉強する余裕など他の受験生にはまずないのだ。
難関大学志望者は必要ない!
結局の所、難関大学を志望する人にとっては、英検は全く必要ないのである。
そして、受験の役に立つ可能性というのもほぼない。
なので、英検を受けようとする前に、まずは自分の志望校の英語の対策がしっかりできているか、他の教科の対策は大丈夫かなどをしっかりと吟味してほしい。
ほとんどの人は、よく考えると英検など受けている場合ではないということになる。
学校はなぜ英検を推奨するのか
最後になぜ学校側は英検を推奨するのかについて少し解説しておく。
我々に対する英検の問い合わせでは、「学校に勧められて」、「皆が受けているから」などと学校が英検を案内してそれで皆が受けるというような構図を多く耳にする。
では、どうして学校側は受験にあまり関係のない英検の受験を勧めるのだろうか?
それは、英検の主催団体を見るとよくわかる。
英検は、日本英語検定教会が主催しているが、その後援についているのが文部科学省である。
なので、単純に、文科省から、英検を勧めるようにという何らかのお達しがあり、それに従って学校側は受験を勧めているだけなのだ。
特段生徒の今後のことを深く考えて提案しているわけではないのである。
現実に、経済産業省が運営しているTOEICの受験案内などは学校側に全く来ない。
しかし、大学に入ってからそしてその後の就職活動のことを考えると英検などよりTOEICのほうが断然有利である。
つまり、学校側の英検の推奨は、そこまで深い考えが伴っているわけではないのだ。
そのような推奨に、進んで自ら乗って、自分の貴重な受験勉強の時間を当てる必要はないと筆者は強く思うのだ。
まとめ
以上、難関大学志望者に英検の受験は必要かについて帰国子女の筆者が自分の体験談とともに解説した。
今まで何度も申し上げているが、難関大学の受験に英検は決して必要ではない。
英検2級レベルであれば特別な対策なしで取得できなければならない。
それに、英検準1級に関しては、大学受験のレベルを逸脱しており、他の教科の勉強のことを考えると大半の受験生がそこまで英検の対策に時間を割く余裕などないのである。
自分の貴重な勉強時間を何に割くのかよく考えながら日頃から行動していくのが大切になるのだ。