東大英語において、要約は一番最初にある問題だ。
そして、一番重要だと言っても過言ではない。
しかし、この要約問題は、最初からできる人とそうでない人にきれいに分かれる。
また、赤本などの過去問を解説している問題集のどれをみても、まともな解説がないというのが現状だ。
そこで、今回は、2020年度の東大英語1(A)の要約問題を現役東大生が徹底解説していく。
要約は正しいやり方で対策していけば必ず伸びる。
この記事の解説をみて、是非自分の受験勉強に役立ててほしい。
要約とは?
2020年度の東大英語要約問題の解説に入る前に、まずは要約とはどのようなものなのか、要約するときはどのようなことを考えてするのかを知っておくことが大切だ。
以下の引用は2021年度の要約を解説した際に示した要約の解き方である。
2021年度の東大英語の要約問題の解説をする前に、まずは要約をするということはどういうことかについて解説していく。
要約の定義とは、情報の優先の順番通りに、論理関係を保存して、文字数の許す限り情報を入れて、まとめたものだ。
情報の優先順位とは、どの情報が筆者が言いたいのか、順番に並べたものだ。
例えば、一番の筆者の主張は優先順位は1位である。
その主張に対する直接的な根拠はこの次に重要であるということがわかる。
その根拠の一つに対する例というのは3番目に重要ということになってくる。
この優先順位を守って要約に情報を入れていくことが重要だ。
また、論理関係とは因果関係、例示、相同、比較などだ。
例えば、因果関係のないところに無理矢理因果関係を入れて要約を書いても、いくら必要な情報がそろっていても減点になる。
このように、文章中の論理関係を保存して、要約に入れていくことが重要である。
この二つの要素が守られているのであれば、文字数の許す限りはできるだけ情報は入れたほうがより良い要約になる。
以上のことを踏まえて、この2021年度の東大英語要約問題を分析していく。
この記事とあわせて、更に2021年度の要約の解説なども見ておくと参考になるので、是非参考にしてほしい。
文章の論理構造
ではさっそく、2020年度東大英語1(A)要約問題の解説にはいっていく。
まず、2020年度の要約問題の論理構造を解説していく。
この文章の論理構造は以下のようになっている。
- 第一段落
高齢者にやさしい町づくり(age-friendly community)の提示。
その定義は様々であるが、全て社会的なつながりの強化とすべての年代を考慮に入れた視点の促進の重要性について触れている。- (ex1) Kofi Annanの国連でのスピーチの引用
- 第二段落
(ex2)WHOや他の国際的な機関でのagingの長期的なプロセスとしての定義の引用
- 第三段落
逆接:しかし、今までは高齢者にやさしい町づくりは高齢者のみに焦点を当ててきた。
その結果、若者や家族、高齢者とのつながりに関するデータの蓄積がない。 - 第四段落
- 理由:高齢者にとって良いものは全年代にとっても良いという想定があるから。
- 逆接:しかし実際若者と高齢者の価値観はかなり異なる。
=> 様々な世代から町づくりに関するデータを収集することが重要だ。
まず、第一段落では高齢者にやさしい町づくり(age-friendly community)という話題についての提示である。
様々な定義があると書かれているが、重要なことはどの定義もすべての年代の人たちについての視点を抑えている点である。
Although the definitions of “age-friendly community” vary, reflecting multiple approaches and methods, many models highlight the importance of strengthening social ties social ties and promote a vision that takes into account all ages.
続いて、Kofi Annanの国連でのスピーチや第二段落でのWHOなどのagingの定義などを引用してこのことを示している。
その後第三段落のHoweverと逆接がくる。
In practice, however, the age-friendly community movement has focused primarily upon the needs and interests of older adults and their caregivers and service providers.
この逆接は、第一段落の高齢者にやさしい町づくりのすべての定義が全年代の人たちにとって良い町づくりの促進を重要視していることを受けている。
これに対して、現状では高齢者のみに焦点を今まで当ててしまったということが第三段落の第1文で書かれている。
その結果第2文で若者や家族に関するデータの蓄積がないと述べているのだ。
第四段落では、なぜ高齢者ばかりに焦点が当てられてきたのかについて最初の1~3文で書かれている。
One answer may lie in the common assumption of the age-frinedly community movement that what is good for older adults is good for everybody.
この理由は、高齢者にとってよいことがすべての年代にとってよいことだという勝手な思い込みがあるからだと述べられている。
第4文目には、実際この思い込みが正しくないということをしめすために、年代によって好みや価値観が異なるということが書かれている。
These studies suggest that in order to fully understand what constitutes a city that is frindly to people at different stages of aging process, it is critical to gather data from multiple generations about what makes a city good for both growing up and growing older.
最後に結論として、すべての年代の人たちにとってよい町づくりをしていくためには、さまざまな年代からデータを収集する必要があると述べている。
この最後の文がこの文章の中で最も筆者が言いたいことになる。
論理構造から優先度を考える
次に論理構造をもとにこの文章のそれぞれの要素の優先度を考えていく。
まず、第一段落は、「高齢者にやさしい町づくり(age-frinedly community)」という話題の提示をしている。
いわゆるこの文章の主語に当たるもだ。
なので、第一段落は筆者の一番の主張の一部分であるといえるので、優先度は一番高い。
この町づくりについてどういう事がいいたのかということが、主張の述語に当たる部分でこれを探していけば、おのずと筆者の言いたいことはみつかる。
次に第二段落は、第一段落で提示された話題の具体例である。
さらに、第一段落の具体例と並列になっていることから、あくまでも優先度は低い。
第一段落と第二段落合わせて、一つの意味段落を形成しているととらえてもよい。
第三段落では、「高齢者にやさしい町づくり」はこれまで高齢者のみに焦点を当ててきたと述べている。
これは、逆接の接続詞”However”を第一段落の「高齢者にやさしい町づくり」の定義の共通部分とは逆になっていることを述べている。
この第三段落の主張はこの文章の主題である「高齢者にやさしい町づくり」の現在の状態を表しているので、優先度は高い。
最後の第四段落の冒頭には、高齢者のみに焦点が当てられてきた理由が書かれている。
人によっては、この理由も重要だと感じ要約にいれてしまう人もいるかもしれないが、冷静に考える必要がある。
因果関係において、ほとんどの場合理由は結果よりも優先度が低い。
なぜならば、結果が優先度の高い主張であれば、あくまでもそれをサポート説得材料にすぎないからだ。
なので、この理由はあくまでも第三段落の主張をサポートするものなので、優先度はこれより一段階低い。
第三段落の主張とその理由を受けて、その理由が間違っていることを示している。
これらすべてを受けて、最後に筆者の一番の主張である、
という内容が来るのだ。
要約を作る
いよいよ、上記の論理構造と優先度の考察から要約を作っていく。
論理構造から、優先度の高い部分だけを取り出すと以下のようになる。
- 第一段落
高齢者にやさしい町づくり(age-friendly community)の提示。
その定義は様々であるが、全て社会的なつながりの強化とすべての年代を考慮に入れた視点の促進の重要性について触れている。 - 第三段落
逆接:しかし、今までは高齢者にやさしい町づくりは高齢者のみに焦点を当ててきた。
その結果、若者や家族、高齢者とのつながりに関するデータの蓄積がない。 - 第四段落
- 理由:高齢者にとって良いものは全年代にとっても良いという想定があるから。
- 逆接:しかし実際若者と高齢者の価値観はかなり異なる。
=> 様々な世代から町づくりに関するデータを収集することが重要だ。
これらを踏まえて要約を作ると以下の様になる。
これで、128文字になるので、字数制限の70~80字を優に超えてしまう。
よって、いくつか情報を削り落とす必要がある。
ここで、情報の優先度が一番低いものは、第四段落の高齢者のみに焦点を当ててきたことに対する理由だ。
こちらを抜いて要約を作ると以下のようになる。
これで93文字になるので最低でもあと13字は削らなければいけない。
次に優先度が低いものは、「実際に若者と高齢者の価値観がかなり異なる。」という情報である。
こちらを抜いてまとめると以下のようになる。
これでちょうど80字となる。
なので、以上のように要約をまとめると良いだろう。
基本的に良い要約は、短い字数でできるだけ多くの情報を簡潔にまとめているものになる。
なので、基本的に字数制限ギリギリに多くの情報をまとめられている要約の方が良いのである。(もちろん、きれいにまとめられていればの話であるが。)
要約を書く際は、結果的に字数ギリギリになっていれば必要な情報が入っている可能性が高いということである。
今後の受験生の勉強
最後に今後の受験生のために要約の対策法について解説しておく。
以下の文章は2021年度の要約の解説記事からの引用である。
最後に今後の東大志望の受験生の要約の勉強法について解説する。
まず、一つ一つの文章の論理構造を書くトレーニングをするとよい。
これは、自分がわかれば良いので、この記事では箇条書き形式で書いたが別の形式でも大丈夫だ。
例えば、ツリー構造などで書いてもよい。
重要なことは、自分に情報の優先順位と論理関係が明確にわかることだ。
この論理構造を書いて、それを元に要約を書く練習をしていく必要がある。
実際は、10分程度で解かなければいけないが、この勉強法の段階では、20分以上かけてじっくり考えながら解いたほうがよい。
そして、復習では必ず論理構造を思い浮かべながら音読や黙読をして欲しい。
実際は、10分程度で論理構造を頭で思い浮かべながら解かなければならない。
いくら時間をかけて正確に論理構造が書けても10分程度で解けなければ英語全体の解答時間に影響してくる。
必ず、論理構造を思い浮かべながら音読または、黙読する練習をしておこう。
まとめ
以上が2020年度の東大英語1(A)の要約問題の解説である。
とにかく東大英語の要約問題は得意な人にとってはなんともないが、苦手な人にとってはどのように対策すればよいのかわからない問題である。
また、まともな解説が世の中になかなか出回っていないのも確かである。
この記事に書いてあることを自分の中によく落とし込んで、他の年度の問題にも応用させながら自分なりに過去問研究を進めてほしい。
また、他の年度の解説も合わせて読んでおくと勉強になる。
以下のurlには、このサイト内の他年度の要約問題の解説が載っているので合わせて見て参考にしてほしい。