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2021年度東大英語1(A)要約問題を徹底解説

東大英語において、一番最初に出てくるのが、1(A)要約問題だ。

この要約問題は10分から遅くとも15分以内という短い時間で処理しなければいけない

また、この要約力はこの問題で問われているだけでなく、他の東大英語の問題をスムーズに解いていくのにも必要なちからとなってくる。

2021年度の要約問題は、難しいと感じた人が多かったようだ。

実際、受験生の再現答案や高校2年生の答案を見てみると出来はあまり良くない。

中には、予備校の解答速報の中にもまずいものが存在する。

ここでは、2021年度東大英語1(A)要約問題の解説と、各予備校の解答速報の比較を行う。

要約についてかなり詳しく解説したので、ぜひともこの記事を読んで、今後の受験勉強に役立てて欲しい

目次

要約とは?

2021年度の東大英語の要約問題の解説をする前に、まずは要約をするということはどういうことかについて解説していく。

要約の定義とは、情報の優先の順番通りに、論理関係を保存して、文字数の許す限り情報を入れて、まとめたものだ。

情報の優先順位とは、どの情報が筆者が言いたいのか、順番に並べたものだ

例えば、一番の筆者の主張は優先順位は1位である。

その主張に対する直接的な根拠はこの次に重要であるということがわかる。

その根拠の一つに対する例というのは3番目に重要ということになってくる。

この優先順位を守って要約に情報を入れていくことが重要だ。

また、論理関係とは因果関係、例示、相同、比較などだ。

例えば、因果関係のないところに無理矢理因果関係を入れて要約を書いても、いくら必要な情報がそろっていても減点になる

このように、文章中の論理関係を保存して、要約に入れていくことが重要である。

この二つの要素が守られているのであれば、文字数の許す限りはできるだけ情報は入れたほうがより良い要約になる

以上のことを踏まえて、この2021年度の東大英語要約問題を分析していく。

文章の論理構造

まず、2021年度東大英語の1(A)要約問題の文章の論理構造を示して、それを解説する

以下がこの文章の論理構造である。

  • 第一段落
    10代の若者の好ましくない気質の変化についての固定観念は正しく、それは一時的なもので、大人になれば戻る。

    • ex:ちらかった寝室、気分の変化
    • 理由:オランダの10代の若者の研究
  • 第二段落
    10代の若者の気質の変化は親と子で評価が違い、親の方が評価が厳しい。

    • ex:2017年の2700人ものドイツの若者の研究
      • 大人とうまくやっていくための能力の減少の評価が親の方が厳しい。
      • 子供たちはより友好的になったと思っているが、親はより内気になったと思っている。
      • 親は子供たちの誠実さの減少に対してさほど驚いていない。
    • 第三段落:(第二段落の原因)
      自我の発達に伴った、親子関係の変化
      親と子での評価基準の違い

      • ex:親は典型的な大人と比較しているのに対して、子は自分たちと同年代の人と比較をして、人間性を図る。
  • 第四段落
    10代の若者の気質の一時的な変化の一般的なイメージは正しい。

    • 理由:これを示す研究がさらにある。

基本的に黒丸が最も重要なもので、白い丸が次に重要な要素、黒い四角が最も重要でないところだ。

また、下線部が引かれている部分が一番言いたいこと筆者の一番の主張である。

 

第一段落では、一番の主張は2文目の若者の気質の変化の固定観念が正しいというところだ。

それに加えて、3文目でこの変化が一時的なものであるということを主張している。

2文目3文目の主張をサポートするものとしてオランダの何千人ものオランダの10代の若者の研究が示されている。

ちらかった寝室や気分の変化は若者の気質の変化の具体例としてあげられている。

 

次に第二段落では、親と子では、気質の変化は互いに認めるものの、評価の違いが見られるということが一番の主張である。

この主張の根拠として、ドイツの若者の研究が示されている。

この研究で以下のような例が示されたということだ。

  • 大人とうまくやっていくための能力の減少の評価が親の方が厳しい。
  • 子供たちはより友好的になったと思っているが、親はより内気になったと思っている。
  • 親は子供たちの誠実さの減少に対してさほど驚いていない。

第三段落では、親子感でこのようなミスマッチがどうして起こるのかという問題提起から始まっている。

この時点で第三段落は第二段落の主張が起こる原因を記している。

その原因として、親子関係の変化(一文目)や評価基準の違い(二文目)が考えられるといのがこの段落の主張である。

 

第四段落では、まず最初に、他にも若者の一時的な気質の変化を示す研究結果があることが示される。

そして最終的に結論として、若者の気質の一時的な変化に対する一般的なイメージは正しいと締め括っている。

論理構造から優先度を考える

次にそれぞれの情報の優先度を考えていこう。

ここで注目すべきなのは、第一段落、第四段落の主張が同じであるということだ。

文章において、最初の導入と最後の結論で同じことが述べられていた場合、その文章を通して一番言いたいことはその結論そのものになるという法則を覚えておくと良い。

これに当てはめると、この文章の一番言いたいことは、

「10代の若者の気質の一時的な好ましくない変化に対する一般的なイメージは正しい。」

ということになる。

これに比べて、第二段落の主張は論理構造の図では対等に扱ってはいるものの、第一、第四段落の主張をサポートする研究はたくさん存在するのに対し、そのうちの一つの研究からわかることにすぎない。

なので、第二段落の主張は第一、第四段落の主張よりも優先度はやや低い

そして、第三段落の主張は、あくまでも第二段落の主張の原因に当たる部分なので、当然他の段落の主張よりも一番優先度は低くなる。

要約を作る

いよいよ、論理構造と先ほど考えた優先順位をもとに要約を作っていく

以上のことを踏まえて、要約に必要な部分のみを取り出した論理構造は以下のようになる。

  • 第一段落
    10代の若者の好ましくない気質の変化についての固定観念は正しく、それは一時的なもので、大人になれば戻る。
  • 第二段落
    10代の若者の気質の変化は親と子で評価が違い、親の方が評価が厳しい。

    • 第三段落:(第二段落の原因)
      自我の発達に伴った、親子関係の変化
      親と子での評価基準の違い
  • 第四段落
    10代の若者の気質の一時的な変化の一般的なイメージは正しい。

これを踏まえて要約を作ると以下のようになる。

10代の若者の気質の一時的な好ましくない変化は、親子関係の変化や親と子での判断基準の違いから、親子での評価が異なるものの、それに対する一般的なイメージは正しい。(80字)

ちなみに、受験生や高校2年生の答案で第三段落の親子間での評価の違いの2つの原因を具体的に書いている物をよく見かけたが、この原因を具体的に書く字数はない。

「親子関係の変化や親と子での判断基準の違いから」のように、短くまとめておかないと他の優先度の高い主張を取りこぼすことになるので、注意が必要だ。

各予備校の解答について

最後に各予備校の解答について考察していく。

毎年、河合、駿台、東進、代ゼミの4社が解答速報で解答を発表している。

しかし、その中には良い解答もあればあまり良くないものもある。

この解答をしっかり分析して、良い部分は盗み悪い部分は反面教師にして、自分の勉強に活かそう

河合

河合の2021年度東大英語解答速報、1(A)の解答は以下の通りである。

10代の若者は好ましい気質が一時的に弱まる。親子の関係の変化や判断基準の違いのためその捉え方は親子で異なることもあるが、一般に10代は葛藤の時期だと言えるだろう。(79字)

出典:https://kaisoku.kawai-juku.ac.jp/nyushi/honshi/21/t01-11a.pdf

この解答はほぼ満点答案だ。

先ほど解説した情報の優先順位も我々のものと全く同じで、入っている要素も変わらない。

論理関係もしっかり文章のものが保存されている。

強いていうのであれば、文章の言いたいことは「10代の若者は好ましい気質が一時的に弱まる。」ということではなく、「10代の若者の気質の一時的な好ましくない変化に対する一般的なイメージは正しい。」である。

ほぼおなじことではあるものの、全く同じとは言えないため、ここを細かくとらえて解答に反映させるかどうかは、採点者の採点基準次第だ。

限られた時間で受験生が解いていることを考えると、そこは厳密には採点しないかもしれない

しかし、より安全な答案ということでいえば、ここは緻密に文章の言いたいことを反映すべきである。

駿台

駿台の2021年度東大英語解答速報、1(A)の解答は以下の通りである。

若者の気質の悪い面が目立つのは一過性のことである。この変化に対する若者と親の評価は異なるが、これは親子関係の変化と両者の判断基準の差によるものかもしれない。(78字)

出典:https://www2.sundai.ac.jp/sokuhou/2021/tky1_eig_1.pdf

この答案は、第一、第四段落の主張と第二段落の主張がほぼ同列に扱われている。

しかし、実際は第一、第四段落の主張の方が優先度は高いので、この点で減点を食らう可能性があるだろう。

また、第一、第四段落の主張に関しても、「若者の気質の変化が一過性のことである。」ことだけではなく、それに対して、我々が抱いている固定観念が正しいということも同時に述べている。

ここを書いていないことも減点の対象になりうる要員だ。

東進

東進の2021年度東大英語解答速報、1(A)の解答は以下の通りである。

(例1)
10代の若者の気質は一時的に悪化するが,その評価は親と 子供自身で異なる。これは親が大人を基準にするのに対して, 親離れが始まる子供は自分の同年代を基準にするからだ。(80字)
(例2)
十代の気質が一時劣化することは事実だが,その見方が親と 子で異なるのは,自立を求める子供が,大人の指標でなく, 仲間同士の評価を重視するからである。(72字)

出典:http://27.110.35.148/sokuho/data/2021/0l/e01/e0l211101k0.html

例1の解答については駿台とほぼおなじかやや劣っている答案である。

第一、第四段落の主張と第二段落の主張の優先順位が明確でないことと、主張が正確に述べられていないことが問題だ。

また、「悪化するが」で逆接を使ってしまうと、第一、第四段落の主張より第二段落の主張の方が優先度が高いとも捉えらる。

これは、実際とは違う優先順位になってしまうので、答案としてはあまり良くない

例2に関してはかなりひどい

「十代の気質が一時劣化することは事実だが」の部分で、「だが」という逆接を使ってしまっている。

このようにすると、第一、第四段落の主張と第二段落の主張が対等どころか、第二段落の主張の方が優先度が高いということが例1以上に強調されてしまう

もちろん日本語の「だが」というのは順接の意味でもとられられるが、それでも実際には対等ではない。

それに、第三段落の内容に至っては、親子関係の変化への言及がない。

親子関係の変化と、両者の評価基準の違いは、同じ対等な原因なので、どちらか一方のみを要約に入れるということはあまり好ましくない。

また、解答の文字数も72文字と少ない

基本的に情報の優先度と論理関係が担保されていれば、情報が多い要約の方が文章の情報がより多くコンパクトにまとめられているということなので、よりよいのだ。

つまりできるだけ多くの情報を入れようとすると必然的に文字数は多くなる。

文字数が余っているということは、それだけ情報が不足しているということなので良くない答案の目印なのだ。

(例2)の答案は模範解答としては少しまずいのではないかと思う

代ゼミ

代ゼミの2021年度東大英語解答速報、1(A)の解答は以下の通りである。

若者の気質の一時的な悪化と改善は、親と子の両方が認める。評価の度合いは親の方が厳しい傾向にあるが、それは双方の評価基準の違いと親子関係の変化による。 (74字)

出典:https://www.yomiuri.co.jp/nyushi/sokuho/k_mondaitokaitou/tokyo/kaitou/kaitou/1331513_5410

こちらも駿台の解答の変わらない。

第一、第四段落の主張と第二段落の主張の優先順位が明確でないことと、主張が正確に述べられていないことがよくない。

また、文字数もあと6文字余っているので、もう少し情報を足してコンパクトにまとめられそうなものである

 

以上見ての通り、オンラインで上がっている大手予備校の解答が必ずしも満点の解答とは限らない

しっかりと緻密に情報を整理して文章を要約する癖をつけておけば、これは容易に見破れる。

予備校の解答を鵜呑みにせずに、しっかりと自分で文章を分析しよう。

今後の受験生の勉強法

最後に今後の東大志望の受験生の要約の勉強法について解説する。

まず、一つ一つの文章の論理構造を書くトレーニングをするとよい。

これは、自分がわかれば良いので、この記事では箇条書き形式で書いたが別の形式でも大丈夫だ。

例えば、ツリー構造などで書いてもよい。

重要なことは、自分に情報の優先順位と論理関係が明確にわかることだ。

この論理構造を書いて、それを元に要約を書く練習をしていく必要がある。

実際は、10分程度で解かなければいけないが、この勉強法の段階では、20分以上かけてじっくり考えながら解いたほうがよい

そして、復習では必ず論理構造を思い浮かべながら音読や黙読をして欲しい。

実際は、10分程度で論理構造を頭で思い浮かべながら解かなければならない。

いくら時間をかけて正確に論理構造が書けても10分程度で解けなければ英語全体の解答時間に影響してくる。

必ず、論理構造を思い浮かべながら音読または、黙読する練習をしておこう

まとめ

以上が2021年度東大英語の1(A)要約問題の解説である。

また、予備校の解答速報が必ずしも正しいものではないということも解説した。

とにかく、情報の優先順位と論理関係を守って、文字数以内にまとめることが重要である。

要約問題は、東大英語でも重要な問題になるので、必ずこの記事を参考にして勉強しておこう

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