東大英語の要約問題は、東大英語の一番最初の問題である。
短時間で多くの問題を解かせる東大英語においては、10分程度で素早く解かなければ、間に合わない。
また、要約力というのは東大英語全体としても重要な能力なので、この問題ができるかどうかは他の問題にも大きく作用するのだ。
なので、この要約問題はどのように対策してよいのかわからず、それを知りたがっている受験生は非常に多いのだ。
しかし、赤本やネット上の記事や動画を探してもまともな解説が載っていないというのが現状である。
そこで、今回は2018年度東大英語1(A)要約問題を現役東大生が徹底解説していく。
要約の対策に悩んでいる人は、是非参考にしてほしい。
要約とは?
2020年度の東大英語要約問題の解説に入る前に、まずは要約とはどのようなものなのか、要約するときはどのようなことを考えてするのかを知っておくことが大切だ。
以下の引用は2021年度の要約を解説した際に示した要約の解き方である。
2021年度の東大英語の要約問題の解説をする前に、まずは要約をするということはどういうことかについて解説していく。
要約の定義とは、情報の優先の順番通りに、論理関係を保存して、文字数の許す限り情報を入れて、まとめたものだ。
情報の優先順位とは、どの情報が筆者が言いたいのか、順番に並べたものだ。
例えば、一番の筆者の主張は優先順位は1位である。
その主張に対する直接的な根拠はこの次に重要であるということがわかる。
その根拠の一つに対する例というのは3番目に重要ということになってくる。
この優先順位を守って要約に情報を入れていくことが重要だ。
また、論理関係とは因果関係、例示、相同、比較などだ。
例えば、因果関係のないところに無理矢理因果関係を入れて要約を書いても、いくら必要な情報がそろっていても減点になる。
このように、文章中の論理関係を保存して、要約に入れていくことが重要である。
この二つの要素が守られているのであれば、文字数の許す限りはできるだけ情報は入れたほうがより良い要約になる。
以上のことを踏まえて、この2021年度の東大英語要約問題を分析していく。
この記事とあわせて、更に2021年度の要約の解説なども見ておくと参考になるので、是非参考にしてほしい。
文章の論理構造
それでは、いよいよ2018年度の東大英語要約問題について解説していく。
まずは、この文章の論理構造について解説していく。
この文章の論理構造は以下のようになっている。
- 第一段落
噂は、多数への意見の同調(popular confirmation)と集団内の意見の強化(in-group momentum)によって広がる。(第1文)- 多数への意見の同調(popular confirmation)についての説明(第2文~第5文)
(並列) - 第二段落
集団内の意見の強化(in-group momentum)についての説明
- 多数への意見の同調(popular confirmation)についての説明(第2文~第5文)
- 第三段落
表現の自由によって、ある程度誤った噂を信じ込まないことを防ぐことができる。(第2文、(第1文で問題提起))- 表現の自由=>均等かつ信頼性のある情報に晒されるということ。(第2文コロン以降)
- しかし、これでは不完全で、人々の意見を変えることは難しい。(第3文、第6文)
- (理由)人々は中立的に情報を処理せず、感情がしばしば邪魔をするから。(第4文、第5文)
まず第一段落第1文で、噂が拡散される2つの過程について書かれている。
Rumors spread by two different but overlapping processes: popular confirmation and in-group momentum.
それが、多数への意見の同調(popular confirmation)と集団内の意見の強化(in-group momentum)である。
ちなみにこれらを日本語に変換するのは難しい。
実際にこれを解いた人の多くは、噂を拡散させる2つの手段について言及されていて、それらが、popular confirmationとin-group momentumであることは、わかっただろう。
しかし、どのように日本語にして要約に盛り込めばよいのかがわからなかったと思う。
これについては後ほど解説する。
第一段落第2文目以降は、多数への意見の同調(popular confirmation)について詳しく説明している。
次に第二段落では、集団内の意見の強化(in-group momentum)について解説している。
なので、第一段落第2文目以降の内容と第二段落野内容は並列の構造となっている。
第三段落第1文目では、このような誤った噂が生成されるのをどのように防ぐのかについて問題提起される。
What can be done to reduce the risk that these two procceses will lead us to accept false rumours? The most obvious answer, and the standard one, involves the system of free expression: people should be exposed to balanced information and to corrections from those wo know the truth.
そして、その答えがすぐ後ろの第2文目で示されていて、それが表現の自由である。
この文のコロン以降は表現の自由の説明になっており、基本的にこれらの内容はこの文章内では同じだとみなして良い。
しかし、第3文目でそれだけでは完全に防げないということが書かれている。
Freedom usually works, but in some context it is an incomplete remedy.
第4文、第5文目でそれがなぜなのかが書かれており、最後に第3文目と同じ内容で文章をまとめている。
It can be extremely hard to change what people think, even by presenting them with facts.
論理構造から優先度を考える
次に、上記で解説した論理構造から一つ一つの要素の優先度を考える。
まず、第一段落、第二段落で一番言いたいことは、第1文の「噂は、多数への意見の同調(popular confirmation)と集団内の意見の強化(in-group momentum)によって広がる。」ということだ。
その後は、第一段落に「多数への意見の同調(popular confirmation)」と第二段落に「集団内の意見の強化(in-group momentum)」の説明がそれぞれ詳しくなされる。
この説明は第一段落第1文の次の優先度となる。
また、長いのでほとんど要約には使わないことが予想される。
これらの要素を何に役立てればよいのだろうか?
「popular confirmation」と「in-group momentum」を日本語に変換するのに大いに役立つ。
この文章の第1文を読んだだけでこの2つの日本語訳をすぐに思い浮かべられる人はほぼ皆無だ。
むしろわかりにくい言葉でまとめることで、読者を先に読み進めさせようという文章上の筆者の工夫なので、下の説明もうまく活用できるとよい。
次に第三段落について議論していく。
第三段落での一番の主張、つまり最も優先度の高い要素は、第2文の「表現の自由によって、ある程度誤った噂を信じ込まないことを防ぐことができる。」と第3文と6文目の「しかし、これでは不完全で、人々の意見を変えることは難しい。」という要素だ。
第2文のコロン以降の内容は、第2文の表現の自由の説明になっているので、優先度は低い。
また。第4, 5文目は第3, 6文目の理由となっているので、これも優先度は低い。
最後に段落間の優先度について解説する。
第一段落、第二段落は噂の広まり方に関する現状を述べており、第三段落はその解決策について述べている。
よって、第一段落、第二段落と第三段落の主張は対等であり並列構造になっている。
要約を作る
いよいよ、上記で述べた論理構造とその優先度を元に要約を作っていく。
まず、それぞれの段落の最も優先度の高い情報だけを論理構造にまとめると以下のようになる。
- 第一段落
噂は、多数への意見の同調(popular confirmation)と集団内の意見の強化(in-group momentum)によって広がる。(第1文) - 第三段落
表現の自由によって、ある程度誤った噂を信じ込まないことを防ぐことができる。(第2文、(第1文で問題提起)) - しかし、これでは不完全で、人々の意見を変えることは難しい。(第3文、第6文)
なので、これらを要約にまとめると次にようになる。
この問題の字数制限は70~80字なので、字数が大幅に足りない。
おそらく出題者が想定している答案からは要素が1つ欠け落ちていることが予想されるので、これらの次に優先度の低い情報に目を向ける。
- 第一段落
噂は、多数への意見の同調(popular confirmation)と集団内の意見の強化(in-group momentum)によって広がる。(第1文)- 多数への意見の同調(popular confirmation)についての説明(第2文~第5文)
(並列) - 第二段落
集団内の意見の強化(in-group momentum)についての説明
- 多数への意見の同調(popular confirmation)についての説明(第2文~第5文)
- 第三段落
表現の自由によって、ある程度誤った噂を信じ込まないことを防ぐことができる。(第2文、(第1文で問題提起))- 表現の自由=>均等かつ信頼性のある情報に晒されるということ。(第2文コロン以降)
- しかし、これでは不完全で、人々の意見を変えることは難しい。(第3文、第6文)
- (理由)人々は中立的に情報を処理せず、感情がしばしば邪魔をするから。(第4文、第5文)
すると、論理構造のうち上記の下線部4つに注目することになる。
このうち、「popular confirmation」、「in-group momentum」、「表現の自由」についての説明は、ある程度その単語だけ見ても意味がわかるように日本語に変化させているので、必要がない。
いれるとしたら、最後の表現の自由だけでは、噂の拡散を防止できない理由である。
これを盛り込むと要約は以下のようになる。
これでちょうど80字となり、要約に盛り込めるだけの情報が正しい論理関係を保って、入る形になるのだ。
日本語への変換について
補足として要約の際に重要になってくる日本語への変換についての解説をしていく。
近年では、2018年度が特徴的だが、「popular confirmation」、「in-group momentum」などを日本語にする際に人によってはかなり苦戦するだろう。
このとき以下の2つのことを必ず実践してほしい。
それは、
- まずは、直訳する。
- そのキーワードの意味が推測できる説明、もしくはヒントがないか探す。
である。
2番目については先程も述べたように、この場合第一段落2文目以降から第二段落の最後までの間にこの2つのキーワードについての説明が書かれているのでここを参考するということだる。
1番目については基本過ぎてあまり実践する人は少ない。
もちろん直訳をそのまま書いて点数が来るわけではないが、直訳してみるとヒントになることがある。
例えば「popular confirmation」、「in-group momentum」を直訳すると以下のようになる。
- popular confirmation:人気の確認、大衆の確認
- in-group momentum:集団内の勢い
このように考えると、日本語としては不自然で、これら単体だけでは意味がイメージしにくい。
しかし、これと2番目の説明を合わせることで、上手な日本語訳を探しやすい。
例えば、popular confirmationの場合、第一段落の第4文や第5文が最大のヒントになる。
,and so most of us often simply trust the crowd. As more people accept the crowd view, the crowd grows larger, creating a real risk that large groups of people will believe rumors even though they are completely wrong.
これによると、多数の人の意見に従うことで、噂を信じる大衆そのものが大きくなることを言っているのだということがわかるので、多数への意見の同調などと訳しておくとよいだろう。
in-group momentumについても同じである。
例えば、第1文目には以下のように記されてる。
In-group momentum refers to the fact that when like-minded people get together, they often end up believing a more extreme version of what they thought before.
ここで、より極端なものを信じるようになると書かれている。
このmomentumで表されている勢いとは、集団の中で意見が広まるについれて、それが強化されていく勢いのことを表現していたのである。
なので、これは、集団内の意見の強化、極論化などと日本語に変換することができるのだ。
このように、文章中の説明だけでなく、直訳そのものが重要なヒントにもなるので、日本語訳に困ったら、必ず直訳を見るようにしよう。
今後の受験生の勉強
最後に今後の受験生のために要約の対策法について解説しておく。
以下の文章は2021年度の要約の解説記事からの引用である。
最後に今後の東大志望の受験生の要約の勉強法について解説する。
まず、一つ一つの文章の論理構造を書くトレーニングをするとよい。
これは、自分がわかれば良いので、この記事では箇条書き形式で書いたが別の形式でも大丈夫だ。
例えば、ツリー構造などで書いてもよい。
重要なことは、自分に情報の優先順位と論理関係が明確にわかることだ。
この論理構造を書いて、それを元に要約を書く練習をしていく必要がある。
実際は、10分程度で解かなければいけないが、この勉強法の段階では、20分以上かけてじっくり考えながら解いたほうがよい。
そして、復習では必ず論理構造を思い浮かべながら音読や黙読をして欲しい。
実際は、10分程度で論理構造を頭で思い浮かべながら解かなければならない。
いくら時間をかけて正確に論理構造が書けても10分程度で解けなければ英語全体の解答時間に影響してくる。
必ず、論理構造を思い浮かべながら音読または、黙読する練習をしておこう。
まとめ
以上が、2018年度東大英語1(A)要約問題の現役東大生による解説である。
2018年度の要約問題はかなり標準的な要約問題であった。
しかし、上記でも解説されているように、「popular confirmation」、「in-group momentum」など日本語への変換が難しいものも存在した。
この記事で、2018年度の要約問題の解き方と、今後の対策方法が見えてきただろう。
是非参考にして、今後の受験勉強に役立ててほしい。
また、他の年度の解説も合わせて読んでおくと勉強になる。
以下のurlには、このサイト内の他年度の要約問題の解説が載っているので合わせて見て参考にしてほしい。