この4月から5月と新年度に切り替わったタイミングで特に多いのが、予備校についての問い合わせだ。
特に、「講座数が多すぎて復習が間に合わない。」、「講座を受けるだけで精一杯」といったような内容の問い合わせが中心となっている。
また、実際に予備校などの講座を大量に取っていしまうことで、復習が追いつかずに大学受験に失敗してしまう人も多いのが現状だ。
では、そもそもどうしてそのような講座を多く取りすぎてしまう状況になってしまうのだろうか?
また、どれほどの講座数が適切なのだろうか?
この記事では、講座を多く取りすぎてしまい、予備校で大学受験に失敗してしまう原因を徹底解説していく。
また、そのような状況に陥らないためにも、どのような講座をどのように受講していくのが良いのかについても解説する。
高校1・2年生や受験生、そして特に現在予備校に通っている人は、この記事をぜひ読んで、今後の対策に活かしてほしい。
<解説記事>
インプット・アプトップとの黄金比率
では、まずそもそもどうして講座数をいっぱい取りすぎると大学受験に失敗してしまうのだろうか?
これを考察するためには、インプットとアウトプットに関する有名な心理学的実験を見ると良い。
この実験は、樺沢紫苑氏の「学びを結果に変えるアウトプット大全」という本で紹介されている。
それは、以下のような内容である。
コロンビア大学の心理学者アーサー・ゲイツ博士の実験を見てみよう。100人以上の子どもたちに、人名図鑑に書かれた人物プロフィールを覚えて暗唱させた実験だ。覚える時間(インプット時間)と練習する時間(アウトプット時間)の割合を変え、最も高い結果を出したグループを調べた。最も高い結果を出したのは、インプットとアウトプットが3対7だったグループだ。これがインプットとアウトプットの黄金比だといえよう。
つまり、インプットが3に対して、アウトプットが7の割合のとき、物事を効率よく取得していくということなのだ。
これは、その他の多くの心理学実験で立証されているもので、今や世界的に有名な事実である。
これを、予備校の授業に置き換えてみてほしい。
予備校の授業はたいてい90分が一コマである。
なので、一コマ分の講義内容を完璧に自分の中に定着させて、100%身につけるためには、210分間のアウトプットが必要だという事がわかる。
そして、このアウトプットに当たるのが予習・復習の時間なのである。
果たして、高校生、受験生の皆はこの210分間の予習・復習の時間が確保できるように、予備校の講座をとっているだろうか?
私が知る限り、ほとんどの高校生、受験生はこの210分間を確保できるような講座のとり方をしていない。
現役生の場合、講座を実際に受講する時間とこのアウトプットの時間だけで5時間は必要ということになるので、放課後に1コマの受講が限界だ。
浪人生の場合も、一日2~3コマくらいが限界であろう。
しかし、現実では、現役生は一日に2~3コマ、浪人生は4~5コマ程度講座を入れている人が大半である。
結果として、自分でアウトプットをする時間がなくなってしまい、授業だけ聞いて、なにかが身についた気にだけなってしまう。
そのような人が、インターネットでググれもせず、カンニングもできるわけがない入試を実力が伴ってないままに受けて、大失敗をしていしまうというのが現実なのである。
どうして多数の受講をさせるのか
しかし、予備校側はあまりにも多すぎる講座数を1パックセットにして取らせたり、必要以上に講座数を取るように提案してくる。
成績が下がった項目があれば、すぐさまその項目の講座を取るという解決策のみが提示されるというのが実情だ。
どうしてこのような身に付けられもしない講座数を取らせるのだろうか?
一つは、とても汚い話にはなるがそれが彼らのビジネスだからである。
予備校も営利目的を持って経営している1企業である。
当然そうなると売上を上げることが最大の指名となっている。
予備校は、講座ごとに値段が決まっており、多くの講座を受講してもらったほうが多くの売上を上げることができるのだ。
賢く優秀な人は、この提案をはねのけて自分に必要な講座のみ受講しているケースが多い。
しかし、あまり優秀ではなく、受動的な受講生に関しては、多くの講座を提案したほうが、何も考えずに受講してくれるので、彼らにとって都合がよいのである。
そして、いざ受講してみると、生徒の方は生徒の方でなにかわかった気になってしまう。
受講しているだけで、たくさんの知識が目の前に用意されるので、つい、自分はできた気になって安心しきってしまうのである。
筆者は数学などの記事で以前何度も「理解」と「定着」は似て非なるものであるということを述べている。
それは、数学だけに関わらず全てに教科に言えることだ。
予備校の生徒たちは、目の前に用意された知識を理解してその場では「なるほど」と思ってもそれを試験の場で使えるほど定着させる訓練をしていないのである。
このようにして、多数の予備校の生徒は、アウトプットとインプットの比率を壊すほどの講座数を受講して、それを当たり前だと思ってしまう環境が整っていくのである。
予備校で成功する人
しかし、予備校で成功する人がいるのも事実である。
偏差値を10上げることができるのは、1割程度と言われている。
また、実際に東大合格者も大手の予備校などからはかなり出ているのも事実である。
つまり、予備校で成功する人も一定数はいるということである。
ではそのような人たちはどのようにして受講しているのだろうか?
いくつか、予備校で成功しているパターンを解説していく。
授業を切っていく
予備校で成功する人の中で一番多いパターンの人は授業を切っている人だ。
これは、一パックである程度の数の受講を強制されている浪人生に多いパターンだ。
もちろん受講料はすべて一括で払っているケースが多いので、授業を切るということはお金の無駄になってしまう。
しかし、予備校の学費の中には、設備費として支払っている部分が多いと考えると、自ずと1講座あたりの値段が小さくなる。
予備校という環境を享受するためのお金だと思えば授業を切ることも怖くはないだろう。
特に浪人生は、様々なケースで浪人している場合が多く教科による習熟度がバラバラであることもある。
例えば、数学と理科は東大合格レベルに達してるが、英語が全くできないという場合である。
このような場合、理数系の授業はたいくつに聞こえ、英語の授業は逆に全くついていけないということになる。
両方とも切ってしまって、自分にあった勉強を自分でこなせるのであれば、その方が効率がよいのだ。
そして、「これは役に立つ」、もしくは「受験に大きく寄与しそうなもの」だけを選択的にとっていくというのだ。
このように、半数以上の講座を切ることによって、強制的に自分の勉強時間を見つけてアウトプットに時間をかけているのである。
チューターの言いなりにならない
もう一つのケースとしては、チューターの言いなりになって、ただただ言われるがままに受講を受けずに、自分で考えて必要な講座を選択しているケースだ。
これは、自分の勉強計画を立てることができて、必要なことがわかっている優秀で賢い人に多い。
大抵の場合、予備校のチューターは必要以上に多くの講座を受講するように勧めてくる。
チューターの言いなりになって、何も考えずに受講すると、先程説明した、インプット:アウトプット=7:3の比率が維持できなくなる。
そこで、優秀な人は、講座の内容をある程度周りにヒアリングしたり、情報を集めて、自分で選択的に講座を選んでいくのだ。
これは、ある程度有名講師が多く、講座数を選択的に選べる東進の現役生に多いだろう。
東進の有名な先生はネット上にある程度その評判が載っている。
過去の受験生の意見や、実際に自分の志望校に通っている先輩などの意見を聞きながら、自分にあっているかどうか判断して受講しているのだ。
実際に我々の問い合わせにも東進の講座に関する質問は多い。
筆者がもともと、現役時代に東進で受講していたこともあるので、我々の塾の生徒には、おすすめする講座は受講するようにと強く言っている。
逆に必要のない講座はアウトプットの時間が減るので、取るべきでないと強くアドバイスをしている。
生徒でない人にも必要のない講座はとらないほうがよいとコメントをしている。
受講中にアウトプット
中には、しっかりと人並み程度に受講をしており、なおかつ予習・復習は万全で、テストでも常に成績上位の人がいる。
実は、彼らはほとんど受講中にアウトプットまでしてしまっているのだ。
まず、予習の段階である程度一人で答えられるものが半分以上あり、それらをしっかりと定着させてくるのだ。
そして、受講中にはできていない部分は、しっかり聞きつつ、できている部分の解説をしているときには、内職という形で次のコマの予習をしているのだ。
このように、アウトプットを受講中にやることによって、かなりのアウトプットの時間をおさえることができる。
ただ、これをやるためには、講座のレベルが半分以上わかっている状態でないといけない。
なので、講座選びも重要である。
そして、受講中はかなり体力を消費する。
自分の勉強もしながら、同時に講師に話にも一応耳を貸しておいて、必要な情報が飛んできたときには、すぐさまペンを止めてインプットに切り替えるのだ。
かなり集中力が求められる。
このような人は、たいてい受講外のアウトプットも徹底して行っているため、かなり効率的なのだ。
実際、予備校の1コマ90分でアウトプットとインプットの両方を行うと、受講外でのアウトプットはその教科につき2時間程度で済んでしまう。
このように、予備校の講座をフル活用していて、なおかつ成功している人はアウトプットを受講中にも行っているというかなり高度なことをやってのけているのだ。
これはかなり優秀でないと難しいので、普通の人は、やはり講座数を抑えた方がよい。
受講すべき講座
最後に、どのような講座を受講すべきなのかについて解説していく。
限られた貴重な時間を講座の受講に当てるには、どのような講座に手をつければよいのだろうか?
筆者がいつも基準としているのは以下の2つである。
- 言葉や映像で説明されないとやる気がでないほど苦手な教科や学習する必要性の少ない教科を最初に学ぶとき。
- 難関大学対策など希少性の高い情報を手に入れたいとき。
例えば、理系の古文や漢文などは一番最初の項目として受講するのはありだ。
古文や漢文は理系の学生にとっては、特別力を入れて学習する必要性もないので、放ったらかしにしがちである。
ただ、一応共通テスト模試などでは、重要な位置をしめるので、ある程度は勉強しておきたいというところである。
そのような科目は、受動的に面白い先生の話も交えて触れておく機会をあえて強制的に作るというやり方も一つの手だ。
また、例えば地理が苦手でどうしても進んで勉強できない、抵抗感があるという場合も、まずは音声や映像でわかりやすく情報をインプットして、苦手意識を取っ払うというのもありだ。
そして、次が、希少性の高い情報を手に入れたいときである。
これは、一番わかりやすいのが、東進の林修先生の現代文や、苑田先生の物理に当たる。
林先生のように東大対策現代文を論理的に解説されている現代文の先生は少ない。
毎年、東大受験生を含めて多くの学生から人気を集めている。
筆者も実際に東進の東大特進コースで林先生の授業をとっていた。
とてもためになり、現代文に関係がない東大受験に必須の知識も教えてくれるので、かなり刺激的な時間であった。
また、苑田先生は、高校物理を数3の微積分を本格的に使って教えている。
よって、諸刃の剣ではあるものの、使いこなせるとかなり力となる。
東大受験生を含め、難関大学志望の理系の学生にはかなり人気の先生だ。
このように、希少性の高い情報をインプットするために講座を取るという方予備校も有効的な受講スタイルである。
ただ、各教科の基礎を勉強している段階では、市販の教科書で学べるような内容が多い。
このような情報は、わざわざ高い学費を払い、貴重な勉強時間を削ってまで受講しなくともよいのだ。
情報の希少性を求めて受講するのは、高3などの本格的な志望校対策をする局面のみである。
まとめ
以上が、予備校で講座を多くとってしまって大学受験に失敗するケースについての解説である。
予備校で講座を取る場合は、まずはインプット:アウトプット=3:7の比率になるように講座を絞って受講していくことが必要である。
このバランスが崩れると、受講によって得た情報が定着せず、結局入試本番で使い物にならないので失敗してしまう。
また、賢い子は予備校の講座を切ったり、選択的に受講したり、受講時にアウトプットも一緒にやったりと様々な工夫をして成功を収めている。
是非、この記事の成功例を参考に予備校の餌食になって受験に失敗するということがないように考えて受講してほしい。