日本国民であれば、日本一といわれている東京大学という大学のことは知っているだろう。
高校生ならば大学受験のことを考えるときには東京大学というものを一度は意識すると思う。
実際1,2年生の中には軽い気持ちで受験してみようと思っている人もいるのではないだろうか?
しかし、特に地方国公立の1,2年生の多くは東大の受験システムや受験対策についてあまり詳しく知らない人も多いのではないだろうか?
だが、受験システムを早期に理解していない人は、対策自体をまちがってしまう可能性が大きい。
実際東大の受験において共通テストの勉強はそこまで必要ではないのにもかかわらず、共通テストの勉強ばかりしている人も多い。
ここでは、そんな人たちのために東大の受験システムについて詳しく解説する。
東大受験における共通テスト
東大を受験するには、まずは、共通テストという全国の受験生が受ける共通の試験を受けたのちに、東大の作った二次試験という東大受験者のみが受ける試験を受け、その二つの合計点で合格を決定する。
この東大受験における共通テストについてここでは解説する。
共通テストの点数比
先ほど東大の受験では共通テストと東大の二次試験の点数の合計で決めるといった。
しかし、それは単純に二つの点数を足した合計点ではない。
そもそも共通テストの合計点は900点満点である。
また、東大の二次試験は440点満点である。
これを単純に足したら共通テストの比重が重くなってしまう。
これを避けるために、実はまず共通テストの点数を900点満点から110点満点に圧縮するのだ。
そして、これを二次試験の点数に足して、550点満点にしてその合計点で合否を決めている。
つまり、東大受験の二次試験と共通テストの点数比率は、
二次試験:共通テスト = 4:1
となる。
また、東大二次試験は科目も絞られ、共通テストの約二倍近くもの時間のかかる筆記試験であり、共通テストよりもかなり難しい。
よって、共通テストの勉強ばかりやっていては二次試験に失敗して、落ちてしまうリスクがかなり高くなる。
この点数比率からわかるように、東大対策の勉強をする上では、共通テストの勉強はほどほどにしておかなければならないのだ。
共通テストの科目
ここでは、東大を受験するために共通テストでどの科目を受験すればいいのか、またそれぞれが900点満点中の何点分なのかを紹介する。
まず文系受験必須科目とその点数は以下の様になっている。
国語(200点)・・・現代文、古文、漢文すべて
数学①(100点)・・・数学ⅠAの内容
数学②(100点)・・・数学ⅡBの内容
外国語(200点)・・・中国語、フランス語、スペイン語なども受験可能だが主に英語
社会(2科目100点ずつ)・・・倫理政治経済、地理、日本史、世界史から二科目
理科(2科目50点ずつ)・・・物理基礎、化学基礎、生物基礎、地学基礎から二科目
次に理系の受験必須科目とその点数は以下の様になっている。
国語(200点)・・・現代文、古文、漢文すべて
数学①(100点)・・・数学ⅠAの内容
数学②(100点)・・・数学ⅡBの内容
外国語(200点)・・・中国語、フランス語、スペイン語なども受験可能だが主に英語
社会(100点)・・・倫理政治経済、地理、日本史、世界史から1科目
理科(2科目100点ずつ)・・・物理、化学、生物、地学から2科目
注意:外国語で英語を受験する場合は、リーディング100点とリスニング100点の計200点だが、これをリーディング140点、リスニング60点に換算する。
以上のような900点満点の内訳になっており、繰り返すがこれが110点満点に圧縮されるのだ。
なお、教科ごとの共通テストの対策法を知りたい人たちは以下の記事を合わせて読んでほしい。
東大生が解説!センター英語長文を得点源にする読み方4つのステップ
東大生が解説!文系受験生が数学二次対策で取るべき勉強法とは?
共通テストの足切りについて
共通テストの比率が二次試験の1/4であるのならば、東大を受験する上で、共通テストは全く勉強しなくていいのだろうか?
実際、共通テストが0点でも二次試験で挽回すれば物理的には合格可能かのように見える。
しかし、東大の受験では、共通テストの点数を使った第一次選抜(通称:足切り)という制度が存在する。
東大受験において共通テストの受験さえすれば二次試験を受けられるわけではない。
なぜならば、東大のキャンパスで物理的に受験できる人数は限られているからだ。
よって、東大二次の志願者が多すぎてキャンパスにいれられないという自体を避けるために、共通テストの点数を使って、キャンパスに入りきらない人を不合格にしてしまうのだ。
最終的に以下のような倍率になるように、足切りが実施される。
- 文科一類:3.0倍
- 文科二類:3.0倍
- 文科三類:3.0倍
- 理科一類:2.5倍
- 理科二類:3.5倍
- 理科三類:3.5倍(理科三類は、面接試験に時間がかかる等の理由で4.0倍から3.5倍に足切り人数を削減)
これが東大受験の難しい所で、普通に共通テストの勉強ばかりしていても落ちるし、二次試験の勉強ばかりやっていて共通テストの勉強を全くせずに、悪い点数を叩き出してしまっても不合格が待っているのだ。
しかし、二次試験の勉強をしっかりして、共通テスト直前期に(12月ごろ)からしっかり共通テストの勉強を始めれば、共通テストの足切りには引っかかることはあまりないほど足切りの点数は低い。
つまり、しっかりと1ヶ月前から共通テストの勉強も始めておけば大丈夫である。
以下のサイトでは過去の足切り点(第一次選抜の合格最低点)があるので参考にしてほしい。
(参考→https://todai.info/juken/data/)
共通テストに変わって以降、共通テストの難易度自体も定まっておらず、2021年度では、難化により大幅に足切り点は減少した。
よって、どれくらい取れれば足切り点を突破できるのか読みにくくなっているが、旧センター試験でおよそ85%ほど得点できる実力があればほぼ大丈夫だろう。
東大の二次試験
先ほどは、東大受験における共通テストについて詳しく解説した。
次、いよいよ東大の二次試験について詳しく解説していこう。
東大二次試験の科目と配点
共通テストについての説明の際に東大の二次試験は440点満点だと解説した。
しかし、東大の二次試験の点数の配分はどのようになっているのだろうか?
以下に示す。
【文系】
国語(150分、120点満点)・・・現代文、古文、漢文を含む
数学(100分、80点満点)・・・数学Ⅰ、A、Ⅱ、Bまでの内容(数学Ⅲは含まれない)
社会(150分、二科目60点ずつ)・・・地理、世界史、日本史から2科目(2科目一気に受験する。)
外国語(120分、120点満点)・・・中国語、フランス語、ドイツ語などの第二外国語もあるが、主に英語だろう。
【理系】
国語(100分、80点満点)・・・現代文、古文、漢文を含む
数学(150分、120点満点)・・・数学Ⅰ、A、Ⅱ、B、Ⅲまでの内容
理科(150分、二科目60点ずつ)・・・物理、化学、生物、地学から2科目(2科目一気に受験する。)
外国語(120分、120点満点)・・・中国語、フランス語、ドイツ語などの第二外国語もあるが、主に英語だろう。
(理科三類のみ面接を実施。)
英語は文理共通の問題で、国語と数学は一部が文理共通問題となっている。
このように見ると、教科は共通テストと比べて絞られるといっても、文系に数学が課されて、理系に国語が課されるなど他の大学に比べて試験科目が多いことがわかるだろう。
また、試験時間も100~150分であり、かなり集中力がないとこなせないハードなものとなっている。
東大の二次試験の特徴
東大の二次試験の一番の特徴は、ほぼ9割がたが記述であることがいえるだろう。
今までの、すべて選択肢だった共通テストからは、かなり乖離している。
選択肢のなかから解答を探すという作業よりも、自分から一から解答を作るという作業がいかに大変で難しいものかは想像すればわかるだろう。
しかし、これを乗り越えないことには東大生にはなり得ないのだ。
科目ごとの具体的な特徴は以下の様になっている。
国語については、すべて二行か一行程度の記述で、自分で答えを文章中から見つけて、それを自分の言葉で構築し直すというとても難しい作業が必要だ。
数学についても、すべて記述で3~5行程度(より多いものもあるが)のシンプルな問題に対して、答案用紙ほぼ全面に解答を書きつくさなければならない。
理科や社会に関しても、ノートや原稿用紙のような解答用紙に自分で書き込まなければならない問題が多い。(選択肢問題も存在する。)
英語は、主に記号で答える問題が多いことから、2015年度入試からマーク用紙が解答用紙の一部として使われるようになった。
しかし、これは共通テストのような簡単な選択肢問題ではなく、並び替えられた段落を正しい順番に戻したり、小説読解というあまり受験生が勉強しないようなことをさせたりと、かなり難しいものになっている。
(なお、共通テストで他の外国語を受験した人はその言語を受験しなければならない。また、英語受験者は問題の一部を英語ではなく、他の言語に変えることができる。)
このように、東大の二次試験は記述式であるがために、かなり難しくなっている。
十分な訓練をするためには相当な時間が必要だろう。
東大の二次試験対策
東大の二次試験はほとんど記述式で、選択肢問題であってもかなり難しいことがわかっただろう。
では、どのように対策していけばいいのだろうか?
大切なことは、勉強時間の確保と勉強する教科の優先順位である。
東大受験で失敗する人のほとんどが勉強時間が足りていないことが原因である。
これは、東進が出している難関大学の合格者と不合格者の勉強時間についてのデータである。
https://www.toshin.com/news/topics/detail/2/20210501
これによると、合格者の勉強時間の平均が4247時間であるのに対して、不合格者は3898時間となっている。
よって、たった349時間で合否がきまってくるということだ。
成績というのは勉強時間に比例して伸びてくるわけではなく、どちらかというと指数関数的に伸びるので、あるラインを越えると急激にあがるのだ。
よって、難関大学の合格には4000時間は最低でも勉強しなければいけないということだ。
東大は、難関大学の中でも最高峰なので、多く見積もって、5000時間は必要になってくる。
これを3年間1000日で割ると5時間である。
この勉強時間というのは、授業を受けている時間ではなく、自主学習の時間であるということに注目したい。
また、東大を目指すにあたっては、過去問演習の時間を1年は確保して、30年近くの過去問と余裕があれば、東大模試の過去問をやりこんでいく必要がある。
ということは、高校2年生の終わりまでに、過去問演習ができるだけの実力を備えている必要があるのだ。
つまり、英語は高校2年生までに東大以外の難関大学の長文がスラスラ読めるようになっており、数学は網羅系参考書の例題が全て頭の中に入っている必要がある。
さらに、理科や社会などの選択科目については教科書レベルの基礎的な内容をマスターしていなければいけない。
このように考えると、3年間で5000時間というのは妥当な数字である。
今この記事を読んでいる人が、東大対策で悩んでいるのであれば、まずは自主学習の勉強時間を1日5時間程度確保するところから始めてみてほしい。
部活動や習い事などで、そもそも物理的に時間がない場合は、急には無理かもしれないが、部活動を途中でやめたり習い事も制限したりと、物理的に勉強時間を確保する必要がでてくる。
また、時間はあるが、家でダラダラしてしまい、結果的に勉強習慣がついていないという人もいるだろう。
どんな状態であれ、まずは3年間でトータル5000時間勉強できなければ合格は難しくなってしまうのだ。
また、どの教科を優先的に勉強していくのかということも大切だ。
東大志望者の問い合わせで多いのが「現代文が伸びません」、「〇〇塾の△△先生の物理は受けた方がよいですか?」というような英数以外の他科目の質問である。
しかし、毎年東大受験生を指導している中で、不合格者は英語か数学のどちらかで失敗しているケースがほとんどである。
英語や数学は教科の特性上、1から勉強を始めて入試で得点できるまでに必要な勉強時間が多い。
例えば、英単語を1つ覚えたからと言って、入試で得点できる能力がつくには程遠い。
数学も青チャートなどの網羅系参考書を完璧に仕上げた段階でスタートラインにたったも同然になる。
それに比べて、現代文はそもそも点数の差がつきにくく、古典は暗記力が英語の1/5以下である。
理科や社会も教科書レベルの内容だけで問題によっては得点が可能である。
よって、英語と数学は他の教科に比べて圧倒的に勉強時間が必要なのだ。
不合格になってしまう人は、おそらくこの英数の勉強時間を高校1、2年生のうちからしっかりととることができず、結果的にこの2教科で失敗してしまうのだ。
そして、恐ろしいことに、英数の対策は1年では終わらない場合が多い。
特に的外れな勉強をしてきた人に多いのが、1年浪人するという決断をしたものの、まだ1年では英数が仕上がらないレベルにいるという人だ。
仮に、浪人していくことを少しでも考えている人でも英数は高校1、2年生のうちにある程度やっておかなければいけないのである。
以上のように、高校1、2年生のうちから平均5時間程度の自主学習時間をしっかりと確保して、英数中心に勉強していくことが東大受験対策では重要なのである。
高校3年生になってから対策しても手遅れになってしまわないように、早め早めの対策を心がけよう。
まとめ
以上が、東大受験の具体的なシステムと東大受験のための主な対策である。
東大受験は、難しいということは誰でもわかっているが、実際に共通テストはさほど問題にはならず、二次試験が記述式で時間も長くかなりハードなものになっているため難しいということが分かっただろう。
また、この東大入試の二次試験対策では、高校1、2年生のうちから数年かけて英数を中心にじっくりと始めていく必要があるのだ。
東大受験を少しでも視野に入れている人は、是非ここに書いてあることを参考にして、できるだけ早く二次対策に乗り移ってほしい。
(celly 東京大学理科二類在学)