皆さんは高校時代、主要科目以外で、興味のなかった科目の試験勉強をどうしていただろうか?
主要科目と同様にしっかり勉強しただろうか?
それとも、試験直前に無理やり詰め込んで、試験後に全て忘れてしまっただろうか?
さて、なぜこんな話をしたのかというと、東大では入学後、高校まで同様に自分の興味にかかわらず様々な必修科目を修めることになるのだ。
大学に進んでまで、まだ興味のないことを勉強しなければならないのかとウンザリする方もいるかもしれない。
もちろん、自分の意思・興味で履修を選択できる講義も多数ある。
しかし、特に東大の1年生の間の多くの必修科目の中には、おそらく誰でもあまり興味のない講義があるだろう。
そして、後期で自分が興味のある学部へ確実に進むため、すなわち進学選択のために高得点を確保するには、そういった科目でも手は抜けないのである。
とはいえ、効率よく勉強して東大に受かった人たちにとっては、今まで通り時間や労力を適切に配分して望めば、進学選択のために高得点を確保することはむずかしいことではない。
今回は、実際に私や私の周りの東大生が、1年生の時にどのくらいの時間で、どのように試験に向けて勉強していたかをご紹介しよう。
私は理科一類なので、どうしても理系科目(数学や物理)の話が中心となってしまうが文系の人もある程度は参考になると思うので、ぜひ読んでいただきたい。
「一夜漬け」は現実的か?-必要な勉強時間
各科目をどのように勉強するか、具体的に紹介する前に、大学の試験は「一夜漬け」で乗り切れるかどうかという話をしたい。
結論から言えば、一夜漬けは可能ではある。
実際東大に合格できるほどの人達は、一夜漬けでもなんとか単位を回収する程度はできてしまうのである。
しかし、体力的・精神的負担はかなり大きく(体験談)、本当にオススメしない。
そのうえ、一夜漬けでも余裕で高得点を回収してしまう人も周囲にはいるが、それは東大生のなかでもさすがにごく一部の人達である。
前述のように私は直前詰め込み型だったのだが、試験前に詰めるのがあまりにも辛すぎて、そのうえ得点もいまいちだったため、計画的に勉強しようと心に決めたほどである。
そもそも東京大学としては、週一コマ105分の授業に対して、学生には4時間程度の自習が必要とされている…と、東京大学の入学者向け資料『履修の手引き』に書かれている。
多くの講義は週一コマで、全13回講義を行ったのちに試験になる。
全13回の講義に加え、一回につき4時間、単純計算で計52時間ほど学生が自習をしている、という前提で期末に試験が出題されるわけだ。
試験期間には、こんな試験が一日数科目、数日続くのである。
大学側が想定している勉強時間から考えても、かなり睡眠時間を返上して頑張らなければ一夜漬けで高得点は期待できないことが分かる。
そしてもう一つ、大学の講義の、高校までの授業との違いについて触れておこう。
私が実際講義を聞いていて思うに、高校までの授業と大学の講義の大きな違いの一つは、「講義(授業)内での演習量」である。
これも講義ごとに様々ではあるが、例えば数学の講義を例にとってみよう。
高校までの数学では、公式や知識が多いというより、むしろそれをどう使うかが重要である。
授業でも、各公式をどんな場面で使うか、たくさん演習なり問題解説があったはずである。
一方、大学では、扱う定義・定理の量が一気に増える。
そして、講義ではひたすら教授が定理を証明し、それを使って次の定理を証明し…という流れである。
実際にその定理を使って、どういう問題をどうやって解くのかは講義で十分に解説されるわけではない。
自分でよく考えるか、周りの理解している人や教授に聞きにいくしかない。
教科書にも練習問題はあるが、高校の教科書の章末問題のような感じで量も少なく、解説も親切ではない。
要するに、真面目に講義に出席だけしていても、自分で普段からしっかり勉強をしなければ、演習量が圧倒的に足りないのである。
こういうわけで、油断していると本当に試験直前に切羽詰まることになりかねないのだ。
長くなってしまったが、言いたいことをまとめると、
- 大学の講義は高校までの授業ほど親切ではない。
- そのため、時間をかけて自習しなければならない部分がたくさんある。
- なので一夜漬けしようとするとかなり大変である。場合によっては単位が落ちる。
- 計画的に勉強するのが一番。
ということである。
科目ごとのおすすめ勉強時間
本当の意味で勉強をするためには、「各科目このくらいの時間をかければ、このくらいの点数が期待できる」という考え方は、あまり望ましくないのかもしれない。
実際、優秀な東大生の人達は、自分の興味のある分野について、講義など追い抜いて勉強を進めている人が普通にいる。
しかし、私の周りにいる、特定の科目でとても優秀な人ですら、自分の興味のない必修科目については試験前にむりやり詰め込んだりしている。
前期教養学部での点数による進学選択という、いわば「第二の大学受験」のようなものが待っている東大においては、いかに単位を回収して点数を稼ぐか、という考え方は必要なのである。
本当に自分の興味のあることを突き詰めることができるのは、しっかり点数を稼ぎ、進学選択で自分の進みたい後期学部に進むことができてからなのである。
労力を可能な限り興味のある勉強に注ぎ、かつ興味のない科目については最小限のエネルギーで最大限の点数を確保することが理想的なのだ。
ここでは、実際の私の経験や、私の友人達の様子を参考に、各科目ごとの必要な勉強時間とその量の確保の仕方を解説していく。
外国語
まずは外国語、英語と第二外国語についてである。
英語の必修では、英語一列という、高校までのコミュニケーション英語に近い講義で、全一年生共通の試験がある。
英語一列だが、教科書の英文、授業の内容ともに比較的易しい。
正直に言って、あまり勉強時間を割かなくても、東大に受かった人であれば余裕だ。
長文で注意すべき部分や教科書の問題については授業で解説もある。
ひととおり長文内容を理解し、特に難しい部分については授業を聞けば、あとの勉強としては知らない単語熟語をコツコツ覚えるくらいで十分だろう。
よって、課題以外の普段の勉強時間としては、まとまった時間を取る必要はなく、【毎日15分】程度、単語を覚えるなりすれば十分だ。
通学の電車内や暇な授業中など、空いた時間にささっと済ませてしまおう。
単語等さえ分かっていれば、試験期間も、長文をひととおり読み直し、分からない単語や部分がないかだけ確認しておけば、試験自体も易しいため余裕だ。
試験前の勉強時間は【1~2時間】も割け十分だ。
英語は英語一列以外にもいくつかの必修科目があるが、決まって試験があるのは英語一列のみで、他の英語科目は担当教員によって試験をするところもあればしないところもある。
私の受けた授業では、他はほとんど出席・期末スピーチ・期末レポートでの評価であった。
次は第二外国語である。
私の受けていたフランス語の必修講義は、前学期は週二コマ、後学期は週一コマであった。
そして前学期には、教科書の内容が1章終わるごとに、その章の文法や知識について小テストが行われた。
私は毎週の小テストのためにしっかり勉強していたため、小テストの成績はクラスでかなり上位だった。
その積み重ねのおかげで試験期間も勉強が楽で、試験の成績も上々であった。
後学期に入ると、毎週の小テストは無くなった。
授業も週一コマになった上、小テストの勉強もする必要がなくなった。
さらに、前学期で割と良い点数だったのもあり、油断した。
日々の積み重ねが無くなり、試験直前に気がつけば忘れてしまった内容が大量にあり、慌てて勉強したものの点数は単位取得ギリギリの酷いものであった。
当然ながら、特に外国語は日々の積み重ねが非常に重要である。
やはり外国語の講義なので、講義の中では演習問題をたくさんやることになる。
試験前に詰め込むのもアリかもしれないが、その日の講義の内容を次週の講義までにコツコツと身につけておけば、次の講義の演習もさらに有意義になっていいことづくめである。
普段の勉強時間としては、【毎日30分〜1時間】くらい見ておけばいいだろうか。
具体的な勉強法としては、高校の英文法と変わりはないだろうが、
- 暗記しなければならないような内容については、(できれば授業中にでも)暗記内容だけをまとめて、英単語等と同じように毎日空いた時間に軽く見られるようにしておく。
- 重要な文法は、教科書の簡単な例文をピックアップしてこれも丸ごと暗記してしまう。
- 講義でやった教科書の練習問題を定期的に解き直す。暗記すべき内容の暗記を済ませたら、ノート等何も見ないでやる。
といったことを、私は前学期(計画的に勉強していた時期)にやっていた。
試験前には、【2〜3時間】まとまった時間を取り、できる限り教科書やプリントの問題を解き直したりすればかなりの点が期待できるだろう。
もし他の科目の勉強が切羽詰まっており、外国語にそんなに時間を割けない、ということになっても、普段からしっかり演習を積んでおけば、当時できなかったところを復習するだけにとどめることもできる。
結局、受験勉強と同じで、基礎を時間をかけてコツコツと身につけておくことが大事である。
数学
次に、数学の講義についてだ。
必修の数学と一口に言っても、線型代数学・微分積分学・それらの基礎となる数理科学基礎というように分かれているが、私が思うに、しなければならない勉強は結局どれも同じである。
私が実際に「試験を見据えて」勉強をした中で、重要だと感じたことを先にまとめておく。
- まず前提として、様々な記号や文字の意味と使いかた、基本となる定義などについては、しっかりと理解して頭に入れる。
- その講義の議論の流れを一通り理解する。
- その上で、特に問題を解くのに使う「公式」はどれなのかを把握し、実際に問題を解く練習をする。
特に三つ目が重要である。
大学の数学の講義では、教授は順番に様々な定理や命題を証明していく。
しかし、講義の中で具体的に「こういう問題はこの定理を使ってこう解く」という解説が十分にされるわけではない。
どの定理を使うということがわからないと、ものすごい数の定理を全て覚えていなければならないかと思ってしまい、気が遠くなることだろう。
周りの、数学の試験を楽々乗り越えている人を見るに、やはり重要なのはこの
「どれを使って、どう解くか」
を把握しているかどうかである。
この点、数学の講義には、演習の時間が用意されている。
どういう問題をどのように解くのかというのを身につけるには最適である。
配られる演習プリントの問題の解き方をしっかり理解すれば、数学の試験はそこまで怖いものではない。
数学の普段の勉強としては、毎日である必要はないかもしれないが、週一程度どこかで【3〜4時間ほど、まとまった時間】
を確保し、講義の内容を見直し、演習の問題を解き直すなりするのが良いだろう。
そして試験前にも、時間は多少かけて、それまでの演習プリントの問題を確認するなどすれば良い。
やはり、日頃の積み重ねがあれば、試験前も無理をしなくて済むだろう。
物理
次は物理学の講義だ。
必修では、力学・熱力学・電磁気学などがある。
講義の内容自体は数学の講義と近いが、数学との違いは
- 「公式」がどれなのか、はっきりわかる。
- どういう場面でどの公式を使ってどう計算していくのか、講義中に詳しく解説がある場合が多い。
などという点である。
特に試験を見据えるならば、数学よりも親切な講義と言えるだろう。
数学と違って演習という講義はないが、物理という科目自体が具体的な現象をどのように計算していくかを考えるものであるし、講義の中で実際に様々な例を計算していくので十分である。
普段の勉強としては、数学と同じようにどこかで【2〜3時間程度】使って、講義の内容を復習し、ノートを見ないで、講義でやった例題の計算を再現できるように練習すると良いだろう。
試験前にも同様である。
講義中の例題を何も見ないで解けるかやってみて、不安な部分は講義の内容を復習すれば良いだろう。
やはり、数学・物理の試験前の勉強は時間がかかるため、その他の外国語などには試験直前にあまり時間を割かなくても良いようにしておくとよい。
その他必修、総合科目
その他の必修科目や総合科目でも、講義によっては試験を行うものもある。
それらの試験に関しても、今まで書いてきた外国語・数学・物理のどれかのパターンには当てはまるはずである。
参考までに、私は理科一類だが、いくつか文系の総合科目を履修し、中でも「日本国憲法」や「精神分析学」などでは試験があった。
これらに関しては外国語や物理のパターンに近く、知識として用語を覚えたあと、教科書や参考図書を一通り読み、授業の資料も何日かかけて何度か目を通して、その講義で結局どういう議論をしてきたのかを思い出した上で試験に臨んだ。
結果、「精神分析学」では優上(90点台)の評価を手に入れたりと、勉強の仕方は間違ってはいないだろう。
まとめ
最後に、今までの内容を簡単にまとめておこう。
- 外国語は、毎日の積み重ねが不可欠。記憶すべき内容はどれかを選別して、毎日少しづつ時間を見つけて勉強すると良い。
- 数学は演習の時間を大事にする。講義は必ずしも親切ではないので、「どの公式でどう解くか」をどうにかして身につけなければいけない。
- 物理は授業で扱う具体例が重要。具体例での計算の流れは理解し、自力で再現できるようにしておきたい。
- その他の科目は、上の3種類のパターンも参考にしつつ、どう勉強すべきかを計画的に考える。
最後に、ここに書いた勉強法・勉強時間は、あくまで私個人の経験をもとにしたものである。
勉強方法に絶対はない。
一人一人に別々の最適なやり方があるはずである。
過去問も見ながら、その科目の試験では何が聞かれるのか、その問題に答えるためには自分は何をどのように勉強しなければいけないのか。
それを考えながら、自分にぴったりの勉強を見つけることが重要である。