東大では、1〜2年生の間は具体的な学部に属さずに前期教養学部というところに入る。
そこで、成績をもとに2年生のときにどの学部に進学するか決めるのだ。
だが、前期教養学部にも文科一類、二類、三類、理科一類、二類、三類といったように分類されている。
このうち、理科一類と二類の違いについてよく、一類が物理系で二類が生物系の科類であると言われている。
しかし、このような見解は現役東大生の僕からするとあまり正しくはない。
実は、これらの科類は、学習内容や進振りにおいてそこまで大きな違いはない。
理科一類であっても生命科学は必修になってくおり、理科二類でも力学や電磁気、微積分や線形代数などをがっつりやることになる。
理科二類から工学部への進学は難しいとも言われているが、一部の学科を除いてそこまで難しくはない。
ここでは、現役東大生の僕が理科一類と二類の正しい違いについて解説していく。
もし、どの科類にしようか迷っている受験生がいたら、是非とも参考にしてほしい。
理一は物理系、理二は化学、生物系というイメージは半分間違い!
理科一類と理科二類の違いについては、よく上記の章タイトルのようなイメージを持たれがちだ。
例えば、「理科一類 理科二類 違い」などと検索すると以下のように解説されている記事が拝見できる。
大雑把に、理一は物理系、理二は生物系というイメージです。
出典:https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1342241133
主に理科系の授業にちがいがあり、わかりやすくその違いを書くと、
理科一類・・・物理、化学
理科二類・・・生物、化学どの授業も高校までしっかり勉強していることを前提として進みます。ここで何が問題かというと、
生物化学選択で理科一類に入学すると、物理系の科目で地獄を見る。同様に、物理化学選択で理科二類に入学すると生物系の科目で地獄を見る。
特に後者が発生しやすいのが現実です。物理化学選択だけど東大に入りたいがために合格点の低い理科二類を志望した場合、覚悟しなければなりません。ゼロからのスタートとなってしまいますよ(笑)
このように書かれているが、実際筆者は理科二類にいたのだが、そのようなイメージは全くなかった。
後に詳しく解説するが、授業も理科一類と理科二類はほとんど変わらない。
理科一類でも生命科学は必修だし、理科二類では力学、電磁気学、微分積分学、線形代数などと物理数学系をがっつりやらされる。
また、理科二類でも実は筆者を含めて物理選択者もかなりいる。
なので、生物選択者でないければ生命科学の授業で地獄を見ることは全くない。
普通に物理選択者でも単位は取れていた。
このように世間では、「理一=物理」、「理二=生物・化学」といったイメージが先行しすぎているのだ。
理一、理二の入試上の違い
まずは、定員、合格最低点、足切点などの入試上の違いについて解説していく。
まず定員は以下のようになっている。
理科一類:1,108人理科二類:532人
次に二次試験の倍率は以下のようになっている。
理科一類:2.5倍理科二類:3.5倍
また、第一次選抜、第二次選抜の合格最低点は以下のようになっている。
<東大第一次段階選抜合格最低点>
年度入試 | 理一 | 理二 |
2018 | 715 | 717 |
2017 | 660 | 701 |
2016 | 728 | – |
2015 | 731 | 708 |
<東大入試合格最低点>
年度入試 | 理一 | 理二 |
2018 | 319 | 311 |
2017 | 347 | 335 |
2016 | 328 | 315 |
2015 | 323 | 312 |
このように、理科二類の方が定員も少なく、倍率も大きいかと思いきや、足切りや全体の入試の合格点は理科一類の方が若干高い傾向にある。(もちろん2014年などは逆転しているので絶対とはいえない。)
理系の科類の試験問題は統一されていることを考えると、理科二類の方が若干合格しやすいといえる。
授業の違い
次に理一、理二の授業の違いについて解説していく。
まずは、理一理二ではそれぞれどのようなことを学ぶのだろうか?
以下が東大ホームページの引用である。
理科一類:
数学、物理学、化学を中心にして数理科学・物質科学・生命科学の基礎を学び、自然の基本法則に関する探究心を養い、科学や技術と社会の関わりについても理解を深める。理科二類:
生物学、化学、物理学を中心にして生命科学・物質科学・数理科学の基礎を学び、自然の諸法則に関する探究心を養い、科学や技術と社会の関わりについても理解を深める。出典:https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/admissions/adm-data/e01_02_10.html
とこれを読んでも理二の方が生物系が強い以外はほとんど変わらないように思える。
理一の理系の必修では以下のような科目がある。
- 微積分
- 線形代数
- 生命科学I
- 力学
- 電磁気学
- 構造化学
- 物性化学
- 物理化学基礎実験
- 熱力学
理科二類だと以下のようになる。
- 微積分
- 線形代数
- 生命科学I、II
- 力学
- 電磁気学
- 構造化学
- 物性化学
- 物理化学生物基礎実験
- 化学熱力学
なので、違いとしては、熱力学が化学熱力学になり、生命科学の授業が多く、生物基礎実験をやるだけであとはほとんど一緒なのだ。
また、理科二類も物理選択者が多く彼らが生命科学についていけないことはない。
教科書の内容をしっかり理解していれば、だいたい単位は取ることができる。
生物選択者には、力学、電磁気学では、特別に高校の内容から物理が学べる簡単なクラスも選ぶことができる。
なので、高校時代の理科の選択科目によって大きく左右されることもない。
他の英語や情報、体育(通称:スポ身)などの必修も違いはない。
なので、基本的に授業の内容に大きな差はないのだ。
進振りの違いについて
進学振り分けについてもよく、理一は工学部、理学部の理数系の学科がメインで理二は、農学部、薬学部、理学部の化学生物系の学科がメインだと思われがちである。
これも過度な偏見である。
まず、今の東大では基本的に進振り点さえあればどの科類からどこの学部学科への進学も可能なのだ。
実際、筆者は理科二類に入学したのだが、進学先は理学部の情報科学科だ。
生物、化学系とはかなりかけ離れた学問領域に進学したのだ。
また工学部へ進学した理科二類の同級生もたくさんおり、決して理科二類は工学部にいけないということはないのだ。
理学部の理数系の学科についても、大抵第二段階で「理科類枠」というものがありそこから進学することは平均以上の進振り点を持っていれば難しくはない。
多くの同級生を見てきたが、今の東大では、この科類だからこの学部に進学するという考えはどんどん薄れているように思う。
単純に進振り点がある人は、科類に関わらず自分の学びたい学問分野に飛び込んでいくのが普通だ。
なので、この科類は主にこの学部に進むということ自体偏見なのだ。
ただ、多少どちらかの学部の方が行きやすいといった学部学科も存在する。
これらを順に紹介していく。
工学部
まずは、工学部の社会基盤と機械工学Bだ。
工学部は大抵理科一類の方が枠が多く設定されており、どこの学科も底点が理二、三の方が若干高かったりする。
だが、これらの学科以外のところは、ある程度勉強していればその底点を超えることは難しくはない。
この社会基盤と機械工学Bだけは、理二、三の底点がかなり高い。
以下のサイトを見てほしい。
このサイトは各学科の底点を各科類ごとに閲覧することができる。
進振り点は75点が平均で、80点で上位30%、85点で上位10%、90点で上位1.5%となっている。
上で紹介した学科は、まず80点ないと理二、三から進学するのには相当厳しい。
時には85点以上ないといけない可能性もある。
また、社会基盤Cと機械Bでは90点をも超えてくる年もある。
これらの学科は理一の底点も決して低くはないが、理二から入るには相当勉強しないと難しいと言える。
医学部医学科
そもそも医学部に行きたいのであれば理三に進学するのが一番効率的であるが、理三以外からも若干進学することができる。
その人数が、
理二:10人理一と文科類合わせて:3人
なのだ。
もちろん、理一も理二も点数は相当高く、90点はないと厳しいのだが、1〜2点ほど理二の方が低かったりする。
理三以外から医学部へ進学しようと考えている人は、理二の方が通りやすいことが多い。
理学部、薬学部は本当にどちらも変わらないのか?
よくもたれるイメージが、理学部の物理数学系は理一で、理学部の化学生物系、薬学部は理二というものだ。
しかし、実際理一だろうが理二だろうがどちらも進学のしやすさでいうとそこまで変わらない。
確かに、理学部の物理数学系は理一の定員が多かったり、理学部の化学生物系、薬学部は理二の定員が多いのだが、それはある程度その学科への進学の需要が考慮されてのことだ。
結局第二段階選抜で、理一も理二も混ぜて理科類全体の枠としてとるのでこの二つの学部は理一であろうと、理二であろうと入りにくさはそこまで変わらないのだ。
クラスの雰囲気について
実は、東大の1~2年生は、学部に進学するまでクラスという30人程度の単位で行動して一緒に授業を受ける。
これは、科類と第二外国語によって決まる。
なので、科類によって多少クラスの雰囲気も変わってくる。
まず、理二は、理三の生徒と一緒にクラス分けされる。
なので、1クラス理三が5〜8人程度いる。
理一は理一単体でクラス分けがされることが多い。(言語によっては履修者が少ないと科類を混ぜる場合もある。)
なので、理二、理三のクラスの方が女子率が多い傾向にある。
理一では、第二外国語によっては、女子が0人のクラスもあり得る。
クラスの雰囲気については、第二外国語の選択について解説している記事で詳しく書かれているので、興味のある人は、合わせて読んでおこう。
理一か理二で迷っている受験生へ
最後に理一か理二どちらを志望しようか迷っている受験生にアドバイスをする。
進学先が決まっていない人
進学先が決まっていない人は正直いってどちらでも大丈夫だ。
進振りのところで述べた通り今は全ての科類から全ての学科を志望することが可能である。
なので、入学してから真面目に勉強して、進振り点をしっかり稼いでおけば、ほとんどの学部、学科へ進学することができる。
また、その中で入試や足切りに不安のある人は理二へ志望しても問題ない。
多少生命科学を多めに勉強するだけで、そこまで進学先が変わる訳でもないので、それであれば、合格点や足切り点が低くなりやすい理二へ志望することは合理的な判断だ。
実際筆者も二次試験は問題なかったのだが、センターが苦手で案の定本番で過去最低点をマークした。
もともと理一を志望していたが、足切りにあうことを警戒して、直前に理二へと志望を変えて、理二に出願した。
今から思うと、進振りにも全く影響はなかったうえ、クラスの雰囲気も理二の方が合っていたので、後悔はしていない。
似たような境遇の人は、参考にしてみてほしい。
進学先が決まっている人
進学先が決まっている人でなおかつ、以前紹介した、理一か理二かで進学しやすさが変わる学部、学科を進学している人は、進学しやすい科類を志望すると良い。
進振りは、入学してからの頑張りで大きく左右はされるものの、それなりのアドバンテージを持っていた方がよい。
科類によって底点が下がる学部、学科を志望している人は、このことを視野に入れて科類を決めると良い。
まとめ
以上、理科一類、と理科二類の違いを入試情報、履修する授業や進振りなどを中心に解説した。
最初に述べた通り、理一は物理系、理二は化学生物系と思われがちだが、それぞれそこまで大きな違いはない。
理一でも生命科学の授業は行われるし、理二でも力学や電磁気、微積分、線形代数などもがっつり行う。
また、進学先も先ほど紹介した学部学科以外は、基本的に真面目に勉強して底点を稼げば、進学するのには難しくない。
世間に出回っているような、イメージに惑わされずに、まずは東大に入学して、その中で真面目に勉強をして、いざ進振りの時がきたら自分の行きたい進学先に行けるように、受験期も入学後も真面目に勉強しよう。