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おかげさまで、かなりの数の勉強相談の問い合わせをいただいている。
そんななか下記のような質問をしばしば見かける。
・高校1年
・〇〇高校
・志望校:東京大学理科二類
・塾なし
・現在1年生で、青チャートの例題を解き解法パターンを暗記するようにしています。しかし、例題がかなり多いように思えますが、全部やる必要はあるのでしょうか?
・高校3年
・〇〇高校
・志望校:京大理学部
・河合塾
・現在僕は、フォーカスゴールドで例題を解いていますが、全部解いていると入試まで間に合いそうにありません。例題を絞って解いても大丈夫でしょうか?
数学の参考書には、青チャートやフォーカスゴールドなどの網羅系と言われる数百問以上の例題がつまっている参考書がある。
確かにこれらを全て網羅するのはかなり難しく時間もかかる。
しかし、MARCHレベル以下の大学を志望しているのであればともかく、東大・京大レベル、旧帝大レベルの理系、を志望している学生は、数学の網羅系の参考書の例題を全部解けるようにすることは必要条件なのである。
これをやらずに、過去問や、「やさしい理系数学」、「新スタンダード演習」などの実践系の問題集に移ってもあまり効果を発揮しないからだ。
とすると、少なくとも旧帝大の理系レベル以上の大学を志望している人は、遅くとも高3の8月までに網羅系の参考書を仕上げていないと数学に関しては志望校合格レベルまでは持っていけないということだ。(他の科目で十分得点できれば、合格できるかもしれないが、特に理系はその学力で大学に合格しても大学からついていけなくなるだろう。)
この、網羅系の例題が完璧に解けるようにするということの重要性があまり周知されていないように思う。
そこで今回は、いわゆる難関大学を志望している人に向けて、数学の網羅系参考書の例題を仕上げることの重要性について解説していく。
受験生になってから、「もう間に合わない!」ということにならないように、今のうちから網羅系参考書をこなしていこう。
これはあくまでも、旧帝大理系、早慶の理系、東大・京大を志望している人たちに向けての内容である。MARCHや地方中堅大学については、逆の網羅系の参考書をすべてこなすのはコストパフォーマンスが悪かったりするので、注意が必要だ。
網羅系の参考書を仕上げるということとは?
よく受験生から、網羅系の参考書を仕上げたはずなのに、全く解けないという人がいるので、まずは、「網羅系の参考書を仕上げること」の定義について述べていく。
網羅系参考書を仕上げるということは、
である。
例えば、「1周して、とりあえず問題を解いてわからないものは解答を見て理解をした。」ことは全く関係ないのだ。
もちろんこうすることで、全ての問題において、何も見ずに解けるようになるのであれば良いのだが、よほどの天才出ない限り不可能だろう。
また、「例題を見て、ちょっと考えて解法が思いついた。」というのも仕上げたことにはならない。
一瞬で解法が思い浮かぶということは、基本的に問題を見た瞬間からノンストップで解答が記述できないといけない。
また、答えは正しくても、導出過程を論理的に記述できていないのも仕上げたことにはならない。
こうしてみると、「青チャートを仕上げる」、「フォーカスゴールドを仕上げる」ということがいかに大変な作業かわかってもらえただろう。
どうして、例題を完璧にすることが必要条件なのか?
では、どうしてこのように例題やその類題を見て一瞬で解法が思い浮かんで何も見ずに解答が導出できないといけないのだろうか?
基本的に受験の数学における最終的な目標は、入試問題において、できるだけ多くの問題で正しい答えを導出して、点数をかせぐことである。
しかし、東大・京大、旧帝大理系レベルの数学の入試となると見たことのある問題はまずでない。
それも、答えまでの道筋がかなり複雑なものも多い。
受験をする時までに、この難易度の高い問題で正しい答えを導出し、その導出過程を論理的に正しく説明しなければならないのだ。
では、どうすればこのような問題が解けるようになるのか?
これらの問題の解法は、実はフォーカスや青チャートの例題の考え方や解法が基本になっている。
多少高度なひらめきが必要な問題もなかには含まれているが、網羅系参考書の例題の解法や考え方を複数組み合わせたり、ちょっと工夫すれば合格に必要な点数を稼ぐことができる。
なので、これらの例題の考え方が頭の中にしっかりと定着して、アウトプットしてはじめて、入試問題の対策をする準備ができたと言えるのだ。
この例題の考え方がしっかり身についていないと、いくら過去問や難易度の高い実践系の問題集をこなしても、基本的な考え方が身についていないので、伸びてこないのだ。
英単語や英文法をやらずに難しい長文を読むのと同じくらい無謀なことなのだ。
MARCH以下の大学の場合、網羅系参考書を全てやるのは、逆にコスパが悪いのだが、旧帝大の理系レベル、東大・京大レベルの大学を受験する人にとっては、網羅系参考書の例題が完璧なのは大前提なのだ。
網羅系参考書の正しい使い方
次に網羅系の参考書の正しい使い方について解説していく。
まず、例題を見て順番に解いていく。
その中で、わからない問題があれば、下の解答を読んで、答案が書けるものは書き、書けないものはまず理解をする。
このわからない問題に出会って、解答を理解した後の工程が一番大切なのだ。
それは、もう一度何も見ずに解答が記述できるかどうか必ず確認することだ。
これをせずに、ただ解答を読んで理解できた気になっている人が非常に多い。
フォーカスを1周したのに、成績が全く上がらないという人、模試では解けないけど後で解答をみるとなんだ簡単じゃないかと思う人などは、これをやっていない場合がほとんどだ。
以前、ツイッターで東進の物理のカリスマ講師苑田先生がおっしゃっていたことを紹介する。
・物理や数学はどのように復習すればいいのか。
(引用元: 苑田尚之、ハイレベル物理、東進、2000年) pic.twitter.com/urXR1JmGID
— 理学部医学科 (@physicsmedicine) 2018年8月18日
苑田先生もおっしゃっているように、数学や物理などの体系的な学問というのは、復習するときは何も見ずに論理展開して、答えを導出できて初めて、復習したというのである。
これをさぼってしまうと数学は全くできないので、必ずこれはやるように守ってほしい。
また、例題の考え方や解法をさらに定着させるために余裕があれば、練習問題や、章末についている問題などもといてほしい。
青チャートではエクササイズ、フォーカスゴールドなどではステップアップといわれているものだ。
まず、解けなかった例題の解法が完全に覚えられた後に、下にかいてある練習問題を解こう。
ここでしっかりと解答(記述答案)が書ければこの例題は定着したといえる。
また、やっている分野の全ての例題が何も見ずに解けるようになったら、今度は例題で学んだ解法を定着させ、応用させるために、エクササイズ、ステップアップなどの章末問題に是非とも取り組んでほしい。
このように全ての例題を完璧にすれば、後々の東大数学対策でかなり伸びやすくなる。
これを読んだ高校1・2年生へ
というわけで、これを読んだ高校1・2年生は、いかに数学の網羅系の参考書を仕上げることが大切か、そしていかに時間がかかるかということがわかっただろう。
特に、東大・京大レベルの理系は高校3年生に入るまでに完璧にしていなければならない。
すなわち、高校1・2年生のうちに計画的に勉強しておくことが、非常に重要なのである。
また、決して一つ一つの例題を中途半端にこなしてはいけない。
よく、例題が完璧になってもいないのに、解答だけ見た気になって先へ先へと進めて、3周も4周もする人がいる。
確かに、解法を暗記するという観点からすると、単語などの他に暗記モノのように、短期間で何回もやるのがよいと思われるかもしれない。
しかし、数学の「解法の暗記」とはその中に必ず論理が存在する。
例えば、”apple”という英単語が「りんご」を意味するが、この二つには論理的関係性が全くない。
しかし、数学においては「問題A」に対して「答えB」が導出されるのは、その中に論理的過程が存在する。
なのでその論理的な思考が身についていれば、必ず答えは導出できるのだ。
数学の網羅系の問題集は1個1個丁寧に時間をかけてやり、多くても2周で完璧になるようにしよう。
ちなみに、塾や予備校などでこれと同等の演習を授業などでしている場合は、その復習をしていれば、新たに網羅系の参考書を買ってやる必要はないので、そのような人たちは、しっかりと塾や予備校の授業の復習をしておこう。
これを読んだ受験生へ
次は、受験生へ向けてやってほしいことを書いていく。
もし、夏休み過ぎた時点で、網羅系の参考書がしっかり仕上がっているのであれば、まだまだ合格の可能性はある。
次は、その例題をどう入試問題レベルの問題に生かしていくかという演習をしていくことになると思うので、それらをしっかりとこなしてほしい。
逆に終わっていなければ、次の年に浪人するかいなかをそろそろ考え始めなければならない。
他の教科の仕上がり具合によっては確かに、合格の可能性が0とは言えないが正直かなり低いというのが真実だ。
浪人するのであれば、間に合わないと焦って、上のレベルの参考書に手を出すのではなく、網羅系の参考書の例題を今まで通りしっかりとこなしていこう。
浪人して、予備校に入るのであれば、必ず一度このレベルの問題を授業でやることになる。
現在上のレベルの演習をこなすよりも、網羅系の参考書の例題を3月までに完璧に仕上げ、浪人時の前期に上のレベルの問題演習をこなした方が、最終的に伸びやすくなるのだ。
浪人ができないのであれば、滑り止めに必ず合格できるように、しっかりと対策しておくことが必要である。
たまに、明らかに夏以降にほとんど例題が完璧になっていない状況で、他の教科の成績もそこまでよくない人が、「どうしても、東大に現役で、今年行きたいですけど何か方法はありますか?」と質問してくる人がいるが、残念ながら不合格になる可能性の方が高い。
これは、例えるのであれば、東京からニューヨークまでどうしても2時間以内に行きたいと言っているようなものである。
東大レベルを合格するためにはそれなりの長期的な計画に基づいた対策が必要なのだ。
まとめ
今回は、難関大学を志望している人に向けて、網羅系参考書の例題を仕上げることの重要性を解説した。
このように、網羅系参考書の例題は、長文を読むときの単語のようなもので、しっかり定着していないと難解な入試問題に太刀打ちできないのだ。
また、網羅系参考書の例題を仕上げるのはかなり時間がかかる。
しかし、仕上げておくことは必須条件なので、特に高校1・2年生、来年度も浪人するかもしれない人は、今のうちに計画的に勉強してほしい。