長文読解は、センター試験・私立大学試験・国立大学二次試験のどの試験においても一番の比重を持つカテゴリーで、いわばメインディッシュのような存在だ。
難関大を受験する上で、長文読解が苦手だというのは英語という教科自体が苦手であることに等しく、それだけで大きなディスアドバンテージを背負ってしまうことになる。
そのため、長文読解でコンスタントに得点できるようになるのは必要不可欠なことである。
さてそんな長文読解だが、あまりにも大きすぎる敵がゆえに、どう取り組んだらいいかよくわからないと悩んでいる人も多いのではないだろうか。
筆者も受験生時代、長文読解には大変苦労させられたものである。
そこで今回の記事では、長文読解の効果的な勉強法を、いくつかの習熟度ごとに詳しく説明していこうと思う。
その際、是非とも使ってみて欲しい参考書もそれぞれの習熟度に応じて紹介していくので、参考にしてもらいたい。
長文読解はがむしゃらにやってもなかなか実力がつかない分野だ。まず自分の実力がどのくらいなのかを冷静に判断し、それに合った勉強を落ち着いて進めるのが一番である。
英語において人並みかそれ以上の点を取らなければ、どうしても難関大合格は難しくなってしまう。
しかしたとえ今は長文読解が苦手でも、適切な方法でしっかり練習を積み重ねれば、数ヵ月程度で大きく成績が上がることもしばしばだ。
諦めるのはまだ早い。本記事を活用して英語の成績を一気に向上させ、夢の合格をグッと引き寄せよう。
英語初級者の人へ
ここで言う初級者とは、文法と単語にまだちゃんと取り組んでおらず、センター試験形式の問題での得点が6割以下の人のことだ。
誰しもが最初に通る段階だが、ここでどのように勉強するかでその後の英語の伸びは大きく変わってきてしまう、大事な段階でもある。
ずばり言おう、英語初級者の段階では、長文読解をいくらがむしゃらにやってもなかなか成績は伸びない。
長文を正しく読むためには正しい文法の知識や語彙が必要不可欠である。
それが抜け落ちている状態のまま長文を読めた気になっていても、実際はフィーリングでおざなりに読んでいるということがしばしばだ。
そのためまだこの段階にあるという自覚のある人は、まずは大学受験で必要な文法事項と単語・イディオムをしっかり一周することから始めて欲しい。
時間の要る作業だが、これなくして英語の成績向上は見込めないと言っても過言ではない。
逆に言えば、今英語に対して苦手意識を抱いているという人も決して悲観する必要はない。
一度文法や語彙の分野に立ち返って着実に見直していくことで、英語を一気に得意教科にできる可能性が大いにあるからだ。
以下の記事では、オススメの単語帳や文法の参考書が紹介されているので、まだしっかり学習していないという人は合わせて読んで欲しい。
英文法の勉強、どれを使えばいいの? 有名参考書8冊を徹底解説!
英語初級者からの脱却に苦しんでいる人へ
ここでは1章で述べた初級者からスタートし、文法事項や単語・イディオムを一通り学習し終わったにもかかわらず、まだセンター試験形式の問題での得点が6割以下と苦しんでいる人へアドバイスしていく。
このような状況にある人は、そのまま対策を打たずにいると後々英語に苦手意識を持ってしまいがちだ。
そのためもう一度文法の基礎を体系的に整理し、インプットする必要がある。
長文読解が捗らない原因としてよくあるのが、英文解釈ができていないパターンである。
具体的に言えば、どこが主語でどこが目的語でといった文の文法的構造が、長い関係詞や不定詞の混在した文章になったときにわからなくなってしまいがちなのだ。
文法事項がある程度頭に入っているとしても、実戦でそれをアウトプットしていく力、つまり英文解釈の力がなければ長文読解はうまくいかない。
この英文解釈を体系的に解説しているオススメ参考書が、西きょうじの「英文読解入門基本はここだ!」である。
英文を読むための基本ルールを順に説明しており、高校1・2年生の頃に通読しておくと後々大変役立つだろう。
センター試験6割以上を目指す英語中級者の人へ
センター試験で6割を目指してくるような段階になると、いよいよ長文読解を素早く正確に進める能力が問われてくる。
このあたりからいよいよ、長文読解の演習を本格化させなければならない。
まず何よりも大事になってくるのが、長文を読むのに慣れることである。
初めの頃は長文と聞くと強敵に感じて思わず身構えてしまうだろう。
しかし大学受験では長文での出題が大半を占めるので、受験生は当然のようにそれを読まなければならないのだ。
長文に慣れていく上でなによりも大事なのは、とにかくたくさん長文和訳をすることである。
長文読解の問題ではたいてい下線部だけに絞った和訳を求められがちだが、それだけではなく全部の文章を逐語訳してみないと、せっかくの素材がもったいない。
また和訳していく際、文法的構造がわからない文、理解できなかった文にラインを引いておくとよい。
後になって復習する時、そこだけ見ておけば良いから効率的である。
さらに長文を一通り訳し終わって、日本語訳がある程度頭の中に入ったら、一旦英文をざっと音読してみるのが効果的である。
この時音読しながら日本語訳を思い浮かべることで、素早く訳しながら読み進めていく癖をつけることができる。
オススメの参考書は、
- 安河内哲也の「大学入試英語長文ハイパートレーニング レベル1 超基礎編」
- 河合塾シリーズの「やっておきたい英語長文300」
- 東進の「東進レベル別問題集2・3」
などだ。
分量・難易度・レイアウトなどを比較して、自分に合った問題集を選んで欲しい。
センター試験8割以上を目指す英語上級者の人へ
このレベルまで来ている人も、やるべき学習法は前述の英語中級者の人とあまり変わりがない。
とにかくひたすら長文を読む数を稼ぎ、慣れることである。
しかし160点前後のところには、体感的にかなり大きなハードルが存在する。
ここでつまずく人は、なんらかの大きな課題を抱えていることが少なくない。
その課題とは、序盤の文法問題の正答率だったり、長文精読の不正確さだったり、読む速度の遅さによる時間不足だったりと様々だ。
大事なことは、まず自分に欠如しているのは何かを自己分析することである。
特に読む速度の問題は、英語が苦手だという人にとって大きな問題になりがちだ。
センター試験のような時間制限の厳しい形式だと、その影響はダイレクトに現れる。
この問題を克服するには、音読による速読が最も効果的である。
読み進めながら考え込まなくとも勝手に文章の大意が掴めるようになれば、読むスピードは格段に上がる。
オススメの参考書は、
- 安河内哲也の「大学入試英語長文ハイパートレーニング レベル2 センターレベル編」
- 河合塾シリーズの「やっておきたい英語長文500」
- 東進の「東進レベル別問題集4」
などだ。
どれも難関大志望者のための登竜門のような位置づけの問題集だ。
MARCHレベルを目指す人へ
MARCHレベルを目指すとなると、いよいよ長文読解の確かな実力が必要になってくる。
いくら英語が苦手だとしても、世間から見れば人並み程度には英語を読めるになっておかないと合格は難しいだろう。
とはいえMARCHの英語は、センター試験プラスアルファ程度の難易度の問題が大半なので、まずは前章で述べた通りセンター試験で確実に8割以上得点できるようになることが大切である。
志望校がMARCHとはっきり決まっているのであれば、やはり一番効果的な素材は過去問になってくる。
何かと一つにくくられがちな5大学だが、各大学ごとに特色があるものだ。
それに慣れておくには過去問演習が必要不可欠である。
それ以外に演習の数を稼ぎたいというならば、以下の参考書がオススメだ。
- 安河内哲也の「大学入試英語長文ハイパートレーニング レベル3 難関編」
- 河合塾シリーズの「やっておきたい英語長文700」
- 東進の「東進レベル別問題集5・6」
などだ。
さらにこのレベルのみならず、早慶や東大京大を目指す人にも是非ともやって欲しい問題集が、西きょうじの「ポレポレ英文読解プロセス50」である。
ポレポレと呼ばれて多くの受験生に親しまれている王道の問題集だが、長文読解の手始めにとてもちょうどいい難易度・分量となっていてオススメだ。
ポレポレについては、詳しい解説記事を書いているので参考にして欲しい。
長文弱者必見!ポレポレ英文読解で偏差値を10爆上げする勉強法
早慶・東大京大レベルを目指す人へ
いよいよまさに最難関大学について解説していくが、結局やるべきことはこれまでと何ら変わりはない。
ただ取り組む問題の難易度がほんの少しばかり高くなり、要求される得点も少しばかり高くなるだけである。
まずは早慶・東大京大に照準を合わせた演習に手をつける前に、前述のポレポレなどで比較的平易な長文を素早く正確に読む訓練を積んでおくことが大切である。
過去問演習はその後でも遅くない。
時間に余裕のある人にオススメしたい参考書は、河合塾シリーズの「やっておきたい英語長文1000」、またZ会の「速読英単語2 上級編」も長文の速読の練習に活用できる。
とはいえ、最終的には過去問演習をみっちりやるしかない。
このレベルになってくると各大学ごとに問題の特色がはっきりと出てくるので、それに特化した訓練が欠かせない。
特に東大京大では、文章全体や段落ごとの要旨を素早く大まかに把握する能力が試される。これに対応するために、大意要約の問題をたくさんこなしておくべきだ。
自分が今どの程度のレベルなのかよくわかっていない人へ
ここまで6つのレベルに分けて、それぞれに学習方針をアドバイスしてきたが、中にはまだあまり試験を受けていなかったりして自分のレベルがわからないという人もいるだろう。
そこで自分のレベルを大まかに測るやり方としては、本記事で挙げたオススメ問題集から試しに一冊選んで解いてみて、どの程度歯が立つかで判断するのが良い。
具体的に言うと、正答率6割程度をキープできたら、その問題集がちょうど良いレベルにあると言える。
正答率がそれ以下だと難しすぎてためにならないし、それよりはるかに高くても簡単すぎてあまりためにならないだろう。
まとめ
何よりも大切なのは、自分の今のレベルと目標のレベルをはっきり見定めること、さらにそれに合った学習法・参考書を選択し、一つ一つ踏んでいくことである。
焦って難しい内容ばかりやっても、基本的なことがなっていなければいつまで経っても成績は改善されず、英語に対する苦手意識ばかり強くなっていく羽目になる。
一見足踏みや後戻りにしか感じられなくても、レベルをいくつか下げてやり直すことが、逆に速い成長をもたらしてくれることも多い。
受験本番までの時間を目一杯使って、一歩一歩前進していこう。
一方中には、問題集を順調に解き進められることに安心しきってしまい、自分にあったレベルより下のところで甘んじている人もいるだろう。
あまりにももったいないことだし、前述したように正答率6割を基準にして、積極的により高みを目指していこう。