「山川」という出版社の名前を見て,みなさんはどう思うだろうか。
恐らく当サイトを利用してくれている受験生諸君であれば,ああ山川ね,歴史の教科書の山川でしょと気づくだろう。
それもそのはず,山川が出している教科書の「詳説日本史」は,ほとんどの高校において日本史の教科書として採用されているのだから,日本史選択の高校生であれば一度は目にしたことがあるはずなのだ。
そんな日本史の教材として最も一般的な山川の「詳説日本史」であるが,一般的だからと言って大学受験の日本史対策によく活用されているかと言えば,決してそういうわけではない。
恐らく受験生にとってみれば,あくまでも学校から配布された教科書だし,世間に出回っている受験対策の参考書や予備校の教材の方が即戦力になるだろうという印象があるのではないだろうか。
しかしながら,今回の記事で山川の「詳説日本史」を取り上げるにあたって,まずはこの教科書が,大学受験対策において何よりも「信頼できる」教材であると声を大にして伝えたい。
特に東京大学の二次試験対策においては,山川の「詳説日本史」が最も信頼できる教材であり,不可欠な主力兵器であるのは間違いない。
本記事ではそんな山川の「詳説日本史」について,特長や使用方法を詳しく解説していきたいと思う。
これを読んだ受験生諸君が山川の「詳説日本史」を有効活用して,東大入試で日本史を得点源にしよう。
山川の「詳説日本史」をオススメしたいのはこんな人
タイトルで明示した通り,山川の「詳説日本史」を是非とも使うべきなのは,東京大学を目指す文系の受験生である。
東大の日本史にトライするにあたって,山川の「詳細日本史」は必要不可欠だし,一番効果を期待できる教材なのだ。
一方で山川の「詳説日本史」は,東大受験生のみならず,日本史で論述形式を採用している一橋大学などの文系難関国立大学の対策においても,同様に役立てることができる。
本記事では東大の日本史を念頭に置いて解説をしていくが,そのような文系難関国立大学を目指す受験生も是非一読して役立てて欲しい。
残念ながら早慶を始めとした私立文系大学を目指している方には,山川の「詳説日本史」を中心とした勉強法はオススメできない。
私立大学は教科書範囲外のオカルト問題まで平気で出題してくるため,市販の問題集を用いて特化した勉強をすることが必要になってくるからだ。
文系難関国立大学を目指す受験生は、山川の「詳説日本史」を,高校で日本史を学び始めた時期から受験直前の追い込み期までずっと,日本史学習の一番の相棒にするべきである。
これ一冊で,序盤の知識を蓄える段階から終盤の過去問演習までなんでも対応できてしまうのが,山川の「詳説日本史」の最大の強みであろう。
東大対策で山川の「詳説日本史」を使う目的とは
東大の二次試験の日本史においてなによりも特徴的なのが,問題文とともに掲載されているいくつかの資料文である。
東大の日本史は大問4つからなり,それぞれが1問から3問の小問で構成されているが,その全てが記述解答である。
そして問題に付随する資料文を読み取り,書くべき内容を想起していく作業が,東大日本史の論述を攻略する上では必要不可欠なのだ。
つまり東大の日本史に対しては,この独特な形式の論述にしっかり慣れておかないと手も足も出せないのである。
山川の「詳説日本史」は,そのような東大日本史の対策において特に真価を発揮する。
というのも山川の「詳説日本史」は,学校の教科書なだけあって文章メインの形式で書かれており,文章を読む勉強法は論述の学習において非常に効果的であるからだ。
文章を通した学習をすると,物事の流れや因果関係が明確にインプットされやすい。
東大日本史では流れや因果関係が最も重要視されるので,教科書の文章を読むのが一番手っ取り早い対策法だ,という理屈である。
時には教科書の一文をそのまま引っ張ってくるだけで満点の解答が完成する,なんて場合もあるのだ。
また後述するように教科書を使って勉強する際には,文章の羅列を図や表にして自分なりにまとめるというやり方をオススメする。
この作業を通じて必要な知識を確実にものにすることができる。
これらのことを踏まえると,山川の「詳説日本史」を使う目的とは,東大二次特有の論述問題に対応できる記述力を身に着けることであると言える。
山川の「詳説日本史」ここが優秀なポイント
教科書に特有の武器として,すべて文章で構成されていることが論述対策をする上で非常に大きいということは前章で述べた。
本章ではそれ以外に山川の「詳説日本史」の長所を紹介し,いかに東大日本史の対策に適した教材であるかを解説していこうと思う。
山川の「詳説日本史」で東大二次の出題内容は完璧にカバーできる!
東京大学は間違いなく日本で最難関の大学だが,それでも肩書きは国立大学だ。
国立大学の大きな特色として,入試問題は文部科学省認定の教科書の内容からほぼ逸脱しないという点がある。
つまり東京大学が出してくる日本史の問題は,教科書を隅から隅までしっかり頭に入れれば必ず太刀打ちできるものなのだ。
そこで,山川の「詳説日本史」の表紙を見てみよう。
左上の隅に,「文部科学省検定済教科書」という表示がされているのがわかる。
この印字が,山川の「詳説日本史」の教科書としての信頼性を裏付ける何よりの証拠である。
山川の「詳説日本史」,これ一冊をしっかり覚えきってしまいさえすれば,東大日本史に対して全く問題なく挑むことができるようになるのだ。
そのことを思えば,少しでも前向きな気持ちで勉強に取り組めるようになる。
小見出しのお陰でテーマごとに取り組みやすい
膨大な知識が要求される日本史を学習する上で,○○時代といった時系列による分割はもちろん必須だ。
しかしそれとともに,政治史・外交史・宗教史・文化史など,テーマごとに分割して学ぶことも非常に重要になってくる。
特に東大を始めとした難関大の論述では,一つのテーマに関して時代をまたいで差異や変化を考察させる問題が大変多く出題されるので,様々な知識を時代とテーマの両方で的確にカテゴライズした上で頭に入れていかなければならない。
山川の「詳説日本史」は,時代による章立ての下にさらに小見出しを細かく設けており,これを参考にすることでテーマを絞って効率的なインプットをすることができる。
過去問を解いていて参考文が欲しいと思った時にも,小見出しを辿れば即座に目当ての箇所を見つけられるのだ。
各ページの下についている注釈が有用
東大はあくまでも国立大学であるため,入試での出題範囲は教科書に記載されている内容に絞られるということは既に述べた。
しかし東大は紛れもなく日本一の大学であるから,それに見合った高いレベルの入試問題が要求されるのは当然である。
出題者側からすれば,教科書範囲にちゃんとかすりつつもいかに難易度の高い問題を作れるかが腕の見せ所なのだ。
そこでよく題材として狙われるのが,山川の「詳説日本史」の各ページ下部に設けられている注釈である。
難関国立大学の東大は,こういった重箱の隅を突くような問題を平気で出してくるが,逆に言えば頻出のネタでもあるので,この注釈までしっかり頭に入れることは非常に効果的なのだ。
山川の「詳説日本史」の効果的な使い方
ここまで山川の「詳説日本史」について,その有用な特長についてざっと見てきた。
さらにこの教科書のポテンシャルを最大限に引き出すため,有用な使用方法を解説していこう。
山川の「詳説日本史」に取り組む時期
山川の「詳説日本史」は,東大文系を志望するならば受験勉強の始めから終わりまで常に主力の教材として使っていくべきである。
前述したように,これ一冊で知識の詰め込みから論述問題の実戦演習までの全ての学習に対応できるからだ。
ただしセンター試験では二次試験と違って論述が不要な一方,用語的な知識を万全にしておく必要がある。
用語を効率よく覚えられる山川の「一問一答用語問題集」をメインに据えると良い。
この教材についてはまた後程解説する。
山川「詳説日本史」への取り組み方 ~基礎編~
まず山川の「詳説日本史」に取り組むにあたって何よりも心掛けて欲しいのは,何度も述べているように教科書特有の文章形式を上手く利用するということである。
例えば知識をインプットする際の学習法としてアンダーラインやマーカーを引いていく人が多いと思う。
その時に是非とも単語単位ではなく文章単位で重要なところにラインを引くようにして欲しいのだ。
せっかく文章でわかりやすく流れや因果関係が説明されているのだから,その文章のまま頭の中にコピーしてしまおう。
この学習法は特に,東大の二次試験のような論述問題にトライするにあたって効果を発揮する。
丸暗記したセンテンスをいくつか組み合わせることで簡単に解答ができてしまう,なんてこともしばしばある。
時代とごとに区切って学習を進め,一つ一つ確実に定着させていくことも大切である。
やる気満々で一気に山川の「詳説日本史」を斜め読みしたところで,次の日にはほとんど頭から抜け落ちているのがオチだ。
数日かけて一つの時代をじっくり整理しながら学んでいくのが遅いようで結局は速いやり方である。
また文化史・宗教思想史といったテーマごとの勉強もじっくり時間をかけてやるべきである。
それぞれのテーマの歴史的変遷を流れで覚えるのはとても大切だ。
この時にこそ前述した小見出しによるカテゴライズを是非利用して欲しい。
山川「詳説日本史」への取り組み方 ~応用編~
東大の二次試験を意識した勉強法として,自分なりの日本史まとめノートを作り,山川の「詳説日本史」の内容を噛み砕いてそのノートに図や表で整理して書いていくやり方を強くオススメする。
記述のほとんどが文章からなる教科書スタイルの山川の「詳説日本史」,文章だからこそ物事同士の関係性は理解しやすいが,それをさらに箇条書きや図表に直した方が体系的にインプットしやすく効率的である。
山川の「詳説日本史」を一周全てさらい切れたら,もう論述の演習問題に取り組んでしまおう。
市販の論述問題集や予備校の教材を利用して,いわゆる典型問題に数多く触れていくのが大切である。
最初のうちは何を書けばいいのか見当もつかないだろうが,ここでは山川の「詳説日本史」を手元に置いておき,記述の参考にしてしまって全く構わない。
こんな問われ方をしたらこんな内容を書けば良いというマニュアルを,少しずつストックしていこう。
さらに,山川の「詳細日本史」の補完として,同じく山川の「一問一答用語問題集」を併用することをオススメする。
特に用語を中心とした対策が必要不可欠なセンター試験の存在を考えると,何らかの用語集で知識量を増やしておくことは非常に重要である。
市販されている用語集のなかでも山川の「一問一答用語問題集」がオススメな理由は,何よりもまず「詳説日本史」と同じ山川出版社が出している用語集であり,内容が完全に準拠しているからである。
そのため教科書範囲を逸脱した用語はほとんど削られており,やはり東大日本史の対策にうってつけであると言える。
大手予備校が市販している用語集は,私大にも対応できるよう難問・奇問を多く掲載しているのがしばしばで,国立大対策の上では非効率になりがちである。
まとめ
以上が、山川の「詳説日本史」について,特長や使用方法だ。
東京大学の二次試験では,社会科目が大きなウェートを占める。
2教科合計で120点というのは実に国語・英語と同等の配点であるのだ。
そのため世間的にサブのような扱いを受けがちな社会科目で一気にアドバンテージを取ることも可能で,その逆もあり得てしまう。
また国語・英語・数学は残念ながら地頭の影響が多少なりとも出てしまうものだが,歴史系の科目は勉強しただけ必ず結果が伸びていく。
東大の日本史は60点満点であり,例年の合格水準は35点前後である。
しかし本記事を読んでくれた受験生のみなさんには,これから山川の「詳説日本史」を良き相棒にして,是非40点以上の高得点を取って他の受験生に差をつけてもらいたい。