国公立文系を目指すにあたって、どうしても避けては通れない共通テストの理科科目。
文系の受験生なら、とにかく英語や社会を得点源にするために最優先でやらなければいけないし、なかなか理科までは手が回らないと嘆く人も多いのではないだろうか。
それでも共通テストの理科科目でポロポロ失点すると、思わぬ形で結果に影響しかねない。
とはいえ、理科科目で9割を目指そうと気合を入れてみたところで、どう勉強していけばいいものかよくわからないという人は少なくない。
そんな厄介者の文系理科だが、かといって高校や予備校が手厚くフォローしてくれるかというとそうとも言えない場合が多い。
本記事では、どうしても手探りでやっていくことになりがちな文系の共通テスト理科について、科目選択についてのアドバイスや勉強法、本格的に取り組む時期などについて詳しく解説していこう。
文系の受験生にとって、共通テスト理科への不安を取り除くことは非常に大切なことだ。
本記事が少しでもその手伝いとなれば幸いである。
文系向け共通テスト理科の概要
大学によって共通テストで要求される科目は変わってくるが、一般的に国公立文系では理科科目の受験が必須となっていることが多い。
共通テストの理科は、通常の「物理」「化学」「生物」「地学」の4科目と、「物理基礎」「化学基礎」「生物基礎」「地学基礎」といったように基礎を付した4科目がそれぞれ存在する。
前者は発展科目、後者は基礎科目とも呼ばれる。
高校の教科書も、それぞれの基礎科目・発展科目ごとに分けて作成・配布されている。
東京大学をはじめとする国公立大学の文系学部は、このうち発展科目から1科目、または基礎科目から2科目のいずれか2パターンを選択させる場合がほとんどだ。
世間の文系を志望する受験生は、ほとんどの場合基礎科目から2科目を選択して受験するようだ。
というのも、発展科目は理科科目に集中して取り組んできた理系の受験生に向けた問題となっているため、大変広範囲で掘り下げたところまで聞いてくるからだ。
それに対して基礎科目は、かなり薄い教科書を全て読み込みさえすればしっかり対応できる問題が中心となっている。
そのため受験直前期に詰め込むだけでも割かしなんとかなってしまうのである。
2科目必要な基礎科目より1科目だけで済む発展科目の方が取り組みやすそうに感じるかもしれないが、特別な事情がない限り、基礎科目2科目を採用した方が負担は軽く済むと断言できる。
本当か?と思うかもしれないが、実際に教科書にざっと目を通してみるとその差がよくわかるのだ。
理科基礎の科目選択について
この章では、これから理科の選択科目を決めるという文系志望の高校生に向けて、物理基礎・化学基礎・生物基礎・地学基礎のそれぞれの科目についてその特徴を解説していく。
物理基礎
とにかく計算量が必要とされる科目である。
文系が対象の物理基礎ではそれなりに知識そのものを問う問題も出題されるが、試験の大半を占める力学やエネルギーの問題では常に計算がついて回る。
そのため、数字を扱うことにある程度慣れていたり、数式と向き合って手を動かすことに抵抗がない人には、物理選択を強くオススメできる。
一方で、数学系に強い苦手意識を持っていたりする場合は、物理基礎はなるべく避けた方が得策だと言える。
とはいえ物理基礎で出題される内容は、ごく初歩的な公式を当てはめれば解決できるものばかりなので、記憶量という点ではかなり負担が少なくなっている。
計算がそれなりに得意な人が上手に学習すれば、特に短期間で効率よく成績を上げられる科目であるとも言えよう。
よって、数学が得意で、暗記量を少なくしたい文系の学生にとっては、かなりコストパフォーマンスが良い科目となる。
科目によっては、高校で選択できなかったり予備校のカリキュラムがあまり充実していなかったりするが、物理基礎ではそのようなことはほぼないというのもプラス要素だ。
化学基礎
体感的に難関校を受験する層で一番選択者が多いのがこの化学基礎だが、実際のところ一番取っつきやすい科目ではない。
物質の特徴や化学反応式に関してはある程度の分量の知識を要求されるが、かといって知識偏重なわけでは決してなく、物質量の算出などで大きな桁・小数点以下の小さな桁の計算もしっかりやらせてくる。
つまり知識と計算の両方にバランスよく対応しなければならないのが、化学基礎の大きな特徴である。
とはいえ化学基礎の出題範囲は、理系向け化学のそれと比べて相当に限定されており、短期間でも集中して教科書を通読すればそれなりに対応できるようにはなるので安心して欲しい。
それに世間に多くの参考書が出回っており、予備校の共通テスト対策でも比較的手厚くフォローしてくれる科目なので、安心して学習に取り組むことができる。
時間と労力はそこそこかかるが、一方でバッチリ勉強すれば満点近い高得点が狙えるというのも大きなポイントだ。
生物基礎
文系の受験生から根強い人気を得ている生物基礎。
一般的に、地学とともに「理系科目らしくない理科」というイメージを持たれている科目だ。
そのイメージの要因として挙げられるのは、かなりの知識偏重な科目であることと、数字をあまり扱わないということの二点だ。
文系向けの生物基礎では、大部分の問題が知識を問うものとなっている。
生物の構造や遺伝子、生態系などの知識を詰め込めば、共通テスト試験には十分対応できる。
記憶量は相当なものになるが、文系の受験生なら社会科目などで暗記には慣れているだろう。
基礎範囲程度であれば短期集中でなんとかすることができるはずだ。
また前もってインプットしてある知識と、その場で与えられた実験の情報などを組み合わせて思考させるような問題も出題される。
このタイプも、文系の受験生は社会科目で当然のように対策していることだろう。
ということで、生物基礎は文系の受験生でも取っつきやすい科目であると言える。
ただし、生物は成績をそれなりに上げるのは簡単だが、時間をかけて勉強しても満点近くを取るのは難しいので注意が必要だ。
地学基礎
地学は理科4科目の中でもいわゆる「異端」な科目だ。
理系の受験生で地学を選択している人はかなり希少である。
そのせいで文系にとってもマイナーな科目というイメージを持たれがちな地学基礎であるが、内容は意外にも文系に向いていたりする。
地学基礎は生物基礎とともに知識が主軸となる科目である。
そのため数値の扱いが苦手だという文系の受験生でも抵抗感なく取り組むことができる。
その同タイプな生物基礎と比較すると、少々計算は増える一方で、必要な知識の量はかなり抑えられている。
しかも数値の扱いと言っても、理解は物理基礎・化学基礎と比較して相当容易である。
物理基礎・化学基礎より計算が少ない・容易で、生物基礎より知識量が少なく済むとなると、時間の限られている文系の受験生にとって取り組みやすいのは、この地学基礎であるのだ。
ただし大きなデメリットとして挙げられるのは、基本的に文系の受験生しか選択しないため参考書のレパートリーが狭く、高校によっては授業自体行っていなかったりする場合もある点である。
また少数派の科目を選択すると、その科目が突然難化した時に他の受験生よりも不利になってしまうという心配も挙げられる。
年によっては、難化により得点調整が実施されることもあるが、地学は受験者が少ないことから、対象外になることが多い。
このような形で不利になることは承知しておきたい。
共通テスト試験に向けた理科基礎の勉強方法・時期について
さて、ここまで共通テスト試験理科基礎の仕組みと科目選択のアドバイスについて述べてきたが、肝心の勉強はいつから・どのようにやっていけば良いのだろうか。
もちろん得意不得意があるので一概には言えないが、学校の授業をそれなりにちゃんと受けてきた一般的な国公立大学志望の受験生なら、2~3ヵ月集中して取り組めば共通テスト試験で8~9割取れるようになる。
そのため、スタンダードなやり方としては高3の秋頃、10月から遅くとも11月頭までには本格的な対策を始めるべきなのだ。
もちろんこれを基準にして、手こずりそうな人は夏から他の教科と並行してやり始めれば良い。
逆に学校の授業などで既に大まかなところを把握できている人は、秋の東大模試などの冠模試が終わってから始めても十分に間に合う。
続いて勉強の具体的な進め方について。
なによりもまず、学校の通年の授業をちゃんと聞くところから始めておくべきだと強く言っておこう。
授業の時間中に、メインの受験科目ではないからとぼーっとしていると勿体無い。
家などに理科基礎の勉強を持ち込みたくなければ、学校の授業内を利用して、この時間で学習を進めておくと、後々の対策にかなり余裕が生まれる。
逆に、筆者のように他ごとをしていると、後々苦労する羽目になるのだ。
そして前述した時期に本格的な対策を始める際は、最初に教科書を何周か通読することをオススメする。
というのも共通テストは、徹底して文部科学省が定めたカリキュラムの範囲内に限って出題してくるので、理論上教科書を完璧にさらえばどんな問題にも対応できるからだ。
ただし教科書に載っていさえすれば重箱の隅をつついてきたりも平気でするので、時間をかけて丁寧に読み進めていこう。
自分なりのまとめノートを作るのも効果的だ。
そのあとは市販の参考書や問題集に進むと良い。
また夏期・冬季・直前期には各予備校が共通テストの特別講習を開いており、これらを利用すれば1週間程度で頻出の内容を抑えることができるので合わせて利用しよう。
過去問や市販のパックなどを使った演習は、12月から直前にかけてやれば十分に間に合う。
くれぐれも他の科目との兼ね合いに注意しながら、実戦形式に慣れていこう。
まとめ
以上が、難関大学の文系受験生に向けた、共通テスト理科基礎の対策方法とその開始時期についての解説である。
文系の受験生にとって、共通テストの理科基礎は目の上のたんこぶだ。
共通テストの100点分のために理科をイチから真面目に勉強するとなると、骨は折れるしモチベーションも上がらないだろう。
しかし東大をはじめとする難関大学の受験では、共通テストでの失点が合否に直結することもしばしばだ。
また共通テストで高得点をマークできれば、自分は受験生の中でもできる方なのだという自信が生まれる。
理科基礎は出題範囲がかなり限定されており、教科書は半月もあれば一周通読できる。
だからあまり身構えず、英語・数学や社会の合間の息抜き程度にやってしまえばよい。
また東大の前期教養課程では、文系の学生であっても理系の授業を取らなければならなかったりする。
この機会に理科科目のいろはを学んでおくと後々役立つと思えば、少しは救いになるのではないだろうか。