センター試験まで半年を切ったが受験生のみんなは、勉強は計画通りに進んでいるだろうか?
進んでいないひとはここで一度計画を立て直し、効率の良い計画を立てる必要がある。
さてこの記事では前回の名大数学と英語に引き続き、名大の物理についてその特徴と対策について解説していく。
入試問題の解答・解説というよりは、各設問の方式や傾向、アプローチの仕方をメインに説明していくので参考程度に、気を張らずに読んでいただきたい。
名大についての説明や志望校の決める時期などについては名大数学の記事で紹介しているので、そちらを参照してもらえればと思う。
名大・物理の特徴
まずは名大・物理の配点、傾向などの特徴について説明していく。
試験時間
試験時間は理科2科目合わせて150分。
理科合わせて2科目で150分与えられるため、各科目での時間配分が重要となってくる。
配点 (理科2科目の配点/2次試験の合計点)
- 情報学部:自然情報学科 – 300/1100点 (27%)
- (*自然情報学科のみ理科1科目が必要。)
- 人間・社会情報学科 – 理科不要
- コンピュータ学科 – 500/1100点 (45%)
- 理学部:500/1450点 (34%)
- 医学部医学科:500/1650点 (30%)
- 医学部保健学科:500/1500点 (33%)
- 工学部:500/1300点 (38%)
- 農学部:600/1400点 (43%)
配点に関しては以上に記載した通りである。
物理は情報学部コンピュータ学科、工学部は必須科目であり、情報学部自然情報学科は物理・化学・生物・地学から1科目から選択、理学部は物理・化学・生物・地学の2科目から選択、医学部医学科/保健学科、農学部は物理・化学・生物から2科目選択しなければならない。
理系学部であるから、理科の比率は3割から4割程度と大きなウェイトを占めており、しっかりと対策することが必要であると分かるだろう。
名大・物理の特徴
では、どのような問題が実際に出題されてきたか、試験内容の特徴について説明していく。
また後ほど2018年度入試の問題を詳しく見ていくので、ここでは概要を説明する。
例年、名大の物理の試験は大問3題構成で、2018年は熱力学、電磁気、力学が出題された。
複雑そうな装置が出題されるが小問や誘導などによって見た目によらず素直に解いていくことができる問題も多い。
2018年も例外でなく、3題とも複雑に見える装置であったが、設問がていねいに設定されているため、内容はいたって標準レベルの問題が多いといえる。
また昨年度の2017年度入試に比べると分量も少なくなり、難易度も易化した印象であった。
出題範囲としては、熱力学、電磁気、力学とまんべんなく出題されている。
また前半の問題の解答を後半に使用して解答する問題も出題されており、計算量が多い問題も出題されることがあるため、計算力も必要となってくる。
2018年度入試の詳細
それでは、ここからは2018年度入試を大問ごとにみていこう。
第1問・熱力学
第1問は機体の状態変化に関する熱力学の問題であった。
2つの異なる断面積の円筒部を有するシリンダーを鉛直に設置されており、その中に物質量nの単原子分子理想気体が封入されているという設定で出題された。
設問(1)は文章の空欄(ア)~(サ)に適切な数式を当てはめていく問題。
空欄に当てはめる数式に使う文字も空欄ごとに与えられており、内容も基礎的な知識で解答できるため必ず点をとりたい問題である。
ただし、気体を冷却するときと加熱するときによって状況が異なるため注意が必要である。
設問2は体積V0、圧力P0の状態0から体積V1、圧力P1の状態1に至るまでの過程をP-V図に表すという問題。
状態0からピストンがx=0になるまではピストンが自由に移動するため定圧変化で体積が減少、そこから状態1まではピストンがCに接した状態でゆっくりと気体を加熱するため、定積変化で圧力が増加することをP-V図で表せばよい。
以上が第1問であったが、文章中の空欄を埋める設問(1)は使う文字が指定されていたため、概ね間違っていないかを確認しながら進められるのではないかと思う。
とはいえ、先ほども少し述べたように初めてみるような装置あったために少し、見かけ倒しされてしまったかもしれないが、落ち着いて解いてほしいと思う。
第2問・電磁気
第2問は磁場から電流が受ける力と誘電起電力に関する電磁気の問題であった。
直流電源に導線でつながれた2本の導体レールがθの角度で鉛直平面上に固定され、その上に導体棒を置かれているという装置であった。
設問(1)の(a)においては、抵抗R = ρ・L / S と電流I = V / Rに代入することで求められる。
(b)はF0 = IBL のIに(a)で求めたI0を代入することで求められる。
設問(2)は導体棒の固定を外しても棒は静止したままだったことから、導体棒が磁場から受ける力と導体棒にはたらく重力とが釣り合っていることがわかる。
よってF0 = mgからV0を求めることができる。
設問(3)からは導体レールを延ばし下端を抵抗R1がつながれた。
設問(3)は、導体棒と導体レール2本の接点との距離をl0になるように固定し、その後固定を外すと導体棒は移動するか否かという問題。
前問より、固定を外しても導体棒は「静止したまま」である。
設問(4)からは導体棒が一定の速さvで降下するような力を加えた。
設問(4)は文章に沿って空欄を埋めていく問題で、問題分をしっかり読めば解けるためここでは省かせてもらう。
設問(5)は導体棒に流れる電流の大きさIを求める問題。
ここでは導体棒と電源を含む閉回路が形成されるため、キルヒホッフの法則Ⅱの式から”V0 + Blv – ρlI / S”を立式できるため、Iを求めることができる。
設問(6)は導体棒が磁場から受ける力FBを求める問題であった。
設問(6)は設問(1)の(b)と同様に、F = IBL に代入して求める。
設問(7)は速さvで運動するために加えている力Fを求める問題。
はたらく力のつり合いを考えると”mg = F + FB “という式を立てることができる。
以上が第2問であったが、導体レールに角度がついており、また鉛直方向に装置を設置しているため、少し取り組みにくいかもしれない。
しかし、角度と重力を考慮すればいつも解いている電気回路の問題として解くことができるため、焦らないことが重要だと思う。
第3問・力学
第3問は仕事とエネルギー、鉛直面内の円運動に関する力学の問題であった。
それぞれ質量の異なる物体A, B, Cが同一鉛直平面内に並んでおり、物体Bが滑らかな水平床の上で静止しており、物体Cは十分離れたところで糸に吊るされ静止している状態である。
そこに質点とみなせる物体Aを速さV0で物体Bの重心に向けて衝突させると物体Aは物体Bに距離dだけ食い込み、一体なって運動を始める。
設問(1)は運動量の保存則を用いて物体Bに衝突する直前の物体Aの速さを求めればよい。
設問(2)は衝突から、物体AとBが一体となって運動し始めるまでに失われた力学的エネルギーを求める問題。
ふたつの物体の位置エネルギーは衝突時も一体となって運動し始める時も一定であるから、衝突時(V=V0)の物体Aの運動エネルギーから一体となって運動し始める時(V=V)の物体A'(質量:m+M)の運動エネルギーで引いた値が損失したエネルギーである。
設問(3)は物体Aが物体Bに衝突して食い込む際に一定の大きさの水平力Fがはたらき、そのFの値を求めるという問題。
衝突から一体となる過程で失われたエネルギーのすべてがこの水平力Fに使われたと仮定しているため、F × 距離d (水平力Fがした仕事)が失われたエネルギーと等しくなるはずであり、その関係を式で表せば水平力Fを求めることができる。
設問(4)からは一体となった物体A’が吊るされた物体Cに衝突し、物体Cが円運動を始める現象について出題された。
設問(4)は衝突直後の物体Cと物体A’の速さを求める問題。
跳ね返り係数(反発係数)がo.5であるから、反発係数の定義式と、運動量保存則の式を立てることで1次の連立方程式ができるため、それを解けばこの問題は解決できる。
設問(5)は静止状態から回転した糸の角度θにおける張力Tを求める問題。
角度θのときの物体Cの速さをvとして円運動の運動方程式をたてると” 2m × v2/L =T – 2m × gcosθ “という式を立てることができ、また力学的エネルギーの保存則から立式することでvとTの連立方程式となり、Tを求めることができる。
設問(6)は文章中の空欄に入る数式を答えるという問題。
空欄(あ)は物体Cがθ = 90° まで至らずに左右に振動するための物体A’の速さVの条件を求める。
力学的エネルギーは運動エネルギーと位置エネルギーの和であり、物体A’と物体Cの衝突時の重心の高さを基準面とすると、物体Cの位置エネルギーはゼロ、運動エネルギーは設問(4)より “1/2 × 2mV2 ≤ 2m × gL” からVが満たすべき条件を算出できる。
(い)について、π/2 < θ < π のとき糸がたるむには、運動の最高点θ = π でT < 0 となればよいから、((5)で求めたTの式) < 0 からVの条件を求めれよい。
設問(7)は、衝突してθ = 2π/3 のときに糸がたるんだとしたとき、物体Cが到達する最高点の高さhを求める問題。
題意からθ = 2π/3 のときT = 0となるから、これを設問(5)で求めたTの式に代入するとVが算出できる。
ここで力学的エネルギー保存則より最高点に達したときの物体Cの力学的エネルギーと、糸がたるんだ瞬間の力学的エネルギーを等式にすればたるんだ位置から最高点までの高さを求めることができる。
しかし、ここで注意したいのが求める高さは衝突した位置から最高点までの高さであるから、衝突した位置から糸がたるんだ位置までの高さ” L + L sin(π/6) = 3 L/2″ を足した高さが正しい解答となる。
第3問は力学分野の主要な項目がたくさん盛り込まれた、いわば力学の複合問題であった。
この問題を見るだけでも知識に抜けがあったら最後まで解き進められないことが分かるだろう。
しかし、内容・分量としてはそこまで厳しいものではないのでなんとか完答を目指したい問題であった。
次の章で名大・物理のために必要な力や勉強方法について紹介する。
名大・物理の攻略法
2018年度の試験内容を詳細について説明したので、この章では名大の英語にはどのような勉強が必要なのかを解説していく。
先ほども少し述べたが、分野的にはまんべんなく出題されているため、知識の漏れがないようにすることと、まんべんなく演習を積むことが必要である。
大問3題しか出題されないため、苦手な分野が出題されると大きな失点につながる可能性があるため、苦手分野がある場合は必ず克服するようにしよう。
断面積の異なるシリンダーが複数連結された装置や導体レールがへ行くではなく角度をつけて設置したりと、見慣れない設定ではあるが、その分誘導や設問がしっかりと設定されているため特別な知識は必要としないため、安心して取り組んでもらいたい。
また、過去に計算量の多い問題が出題されていること、前半の解答を後半解いていく過程で使うという問題がよう出題されているため、普段から演習を積むときは正確に、かつスピーディに計算できる力を養っていく必要がある。
また、情報学部自然情報学科以外の理系学部は理科が2科目で150分となっており、時間配分も考慮しなければならない。
例えば、物理・化学を選択して解答する人は化学は分量が多く、時間をかければ解ける問題も多いため、できるだけ化学に時間を残すために、物理から解いてできるだけ早めに終わらせるというのもひとつの方法である。
過去問にチャレンジしてみよう
夏休みが明けた9月頃から過去問に取り組んでみよう。
時間配分や分量などを早めに把握して感覚を掴んでおく必要があるため、この時期から始めるのが良いと思う。
過去問10年分を12月中旬、センター直前期と呼ばれる時期までにひと通り解いてみるのが理想であるから、計画的に勉強を進めよう。
センター試験は出題形式こそ選択問題であるが、計算分量が多い問題も少なくないため、センター対策も9月から過去問や問題集と並行して取り組むようにしよう。
まとめ
名大の物理の特徴について2018年度入試の問題を中心に説明してきた。
名大の物理はそこまで分量は多くないが、時々計算量の多い問題や計算の煩雑な問題が出題されることがあるから、演習するときは丁寧に計算して解ききる心がけをしよう。
また出題範囲としては分野に偏りなく出題されるため、苦手な分野は必ず克服して抜けのないようにしておこう。
2018年度の入試問題を中心に名大・物理について解説してきたが、この記事を少しでも役に立てていただけたら幸いである。