子供が小学校高学年にもなってくると、今後の進路を考え始める親が多い。
昔と比べて中高一貫校は特定の富裕層のみが進学するという考え方はあまりなくなり、中高一貫校も手の届きやすいものとなってきた。
子供を勉学に励ませたい、とにかくのびのびとやりたいことをやらせたい、など、さまざまに想いはあるはずだ。
しかし、子供のことを第一に考えたとしても、中高一貫校が適していると言うことも中高べつべつの公立の学校が適していると言うこともできない。
中高一貫校というものにはメリットとデメリットといえる特徴がそれぞれ存在しており、それを把握した上で自分の子供には中高一貫校の学習環境が適しているのか否かを判断したり、子供に判断させたりした方がいいためである。
ここでは、そんな保護者の悩みを解決するため、中高一貫校に通うことの具体的なメリットとデメリットについて解説していきたい。
ぜひともこの記事を参考にして子供の進路について考え、最適な決断をしてほしい。
中高一貫校に通うことのメリット
中高一貫校、と聞くとどんなイメージをいだくだろうか。
お金持ちな家庭の子供が通っていそうなイメージ、勉強に力を入れていそうなイメージ。
それらのイメージは本当なのだろうか。
ここでは、中高一貫校に子供が通うことによる、一般的なメリットを紹介していこうと考える。
中高一貫校の良さをここで一度把握し、特徴を捉えてみてほしい。
高校受験がない
中高一貫校に子供を通わせることのメリットは、高校受験がないということが大きい。
もちろん、高校受験がない代わりに中学受験がある。
しかし、12歳で受験をすませ、15歳という思春期真っ只中の時期には受験という一大ストレス要因から全く解き放たれているということは子供の成長にとって大きな意味を持つ。
受験というものは、乗り越えることで能力的にも精神的にも強くなることができる。
しかし、早めの段階でつらい受験を終わらせ、受験のない平穏な6年間を手に入れることを考えてみてもいいのではなかろうか。
絆が強い
中高一貫校では、たいていのばあい6年間同じ部活動に所属する。
また、学校によっては6年間同じ担任がついたり、クラス替えのないところもあるという。
とすれば、3年通って卒業を経て環境ががらりと変わる公立の中高と比べると、中高一貫校では確固たる絆が生徒と教師間ないし生徒と生徒間で築かれるということになる。
13~18歳の六年間は、先ほども述べたように成長期と思春期の真っ只中であり、同じ仲間と大きく成長したという経験をすることで一生ものの関係性を構築することが可能だ。
子供にとってかけがえのない人間関係を構築することが、公立と比較すると中高一貫校ではやや容易である。
教育水準が高い
中高一貫校では、中学・高校と区切るのではなく、6年間を一つのまとまりとして考えていることが多い。
そうであるならば、中学生のうちに高校での学習範囲を先取りして教えることが可能となる。
中学受験を突破して入学することが許されるため、全体の学力レベルが高い。
そのため、公立の中学と違ってかなり早いスピードで教育カリキュラムを推し進めていくことができるのだ。
教育のカリキュラムが早く進めば進むほど、高校二年生や三年生の段階では全教育過程を終えて、より多くの受験勉強や演習、
発展的な内容の学習に時間を割くことができる。
中高一貫校に通うことで学習のスピードが公立とはくらべものにならないほど早く進み、結果として大学の進学についても有利になるのだ。
治安が比較的保証されている
中高一貫校に子供を通わせる保護者は、教育熱心であったり裕福な過程環境であることが多い。
そのような保護者の子供たちはしっかりとしつけがなされており、正しいマナーを身につけている子供がほとんどである。
公立の学校でよく見られるいわゆる「不良」や「やんちゃ」な子供はほとんどいないと言っていいだろう。
いじめや人間関係のゴタゴタが極力少ない環境に子供を置きたい場合、中高一貫校がおすすめである。
中高一貫校に通うことのデメリット
ここまで、子供を中高一貫校に通わせることにより享受できるメリットについて解説をしてきた。
さまざまな面で良いことがあることがお分かりいただけたであろう。
しかし、この後に及んでも中高一貫校に通うことが向いていない子供もいる。
以下では中高一貫校に通うことのデメリットを紹介していく。
男女別学が多い
中高一貫校では、女子高や男子校というふうに男女別学としている学校が非常に多い。
男女別学にすることで勉強に集中できる環境が整い、さらに異性がいないことでより友人関係が深まるというメリットは確かに存在する。
しかし、10代の前半から後半にかけての六年間、全く異性と関わることがないという事実は重く受け止めた方がいいように感じる。
学校とは学力を伸ばすためではなくそもそもの人間としての生きる基礎力を育てていく場である。
人生について考え、ベースとしていく六年間が異性と全く関わらずに終わってしまうと、大学に進学した時や就職したときに人間関係で困ることが出てきてしまうはずだ。
そのため、中高一貫校に子供が通うことのデメリットとして男女別学が多いということが挙げられる。
狭い世間で生きることになる
前述した通り中高一貫校では六年間を貫いて絶対的な仲間関係を構築することが可能である。
しかし、逆に言うと非常に人間関係が深い分、狭くなってしまうということである。
中学生のうちにある友人グループに属すと、高校を卒業するまでそのグループと行動を共にしなければならないということもあり得る。
特定の人間とだけ仲良くしていればいいという安心感はあっても、新しい友人関係を作っていくことにより得られるさまざまなメリットをとりこぼしてしまっていることになるのだ。
また、そのように狭い人間関係であると、一度トラブルなどが生じた時に修復が難しいということがある。
なにかが起きたとして、その事実は高校を卒業するまでずっと同じ仲間の間で共有されてしまい、リセットされることがないのだ。
このような世間の狭さは、中高一貫校にかようことの弊害とも言える。
部活動が変えられない
先ほど述べたように、中高一貫校では、だいたいの学校が生徒を6年間同じ部活動に所属させている。
これは、たしかに6年という長い時間をかけて一つのことにがむしゃらに取り組むことできる絶好の機会と言える。
しかし、一度決めた部活を6年間続けなければならないというのはなかなかのプレッシャーとなることだろう。
だいたいの学校では、部活動を決める前にいろいろな部活動を見学しに行き、体験する期間が設けられている。
だが、部活動の見学期間は決して長くはなく、入学してから数週間でどの部活に入部するのかを決断せねばならないのだ。
6年間を左右する大きな要素となるのが部活動。
部活の顧問、部活の先輩、同期、雰囲気など、非常に多くのことを見て今後の6年間を決めることをまだ中学に入学して間もない12歳の子供がおこなわなければならない。
少々重たすぎる決断であるように思える。
そして中学のうちに部活を途中でやめてしまうとなると、のこり3年以上ある学校での生活をかんがみた上で転部を考える必要があり、少々それは骨の折れることなのだ。
学費がかかる
中高一貫校では、イメージ通り公立の中学校と高校を合わせた6年間と比べて学費がかさんでしまう。
もちろんそれにより優れたテキストを用いた授業を受けることや完備された施設を子供が利用することが可能となるが、家庭環境と合わせて学費を調べてみてほしい。
以下では、具体的に公立の中学校、高校の学費と私立の中高一貫校の平均的な学費を提示する。
私立の中高一貫校がかなり高額な学費を必要とすることが一目瞭然であろう。
6年間でかかる学校教育費、給食費の平均
私立中高 5,054,746円
公立中高 1,213,854円
(※文部科学省「子どもの学習費調査」より)
私立の中高一貫校に通わせることにより、さまざまなメリットを享受することは確かにできる。
しかし、それによって家庭環境が圧迫されて部活動にお金をかけられない、国公立の大学しか志望させられないなど、逆に子供に不自由を強いる状況になりかねないのである。
そうであるならば、お金のかかる私立の中高一貫校への進学はあまりお勧めできるものではない。
まとめ
今回の記事では、保護者の目線に立って子供を中高一貫校に通わせることのメリットとデメリットをわかりやすく説明してきた。
中高一貫校にかようことにより、非常に多くのメリットを得ることができると同時に、たしかにデメリットも存在している。
どこに重きをおくかによって、自分の子供には中高一貫校あるいは公立の中学校と高校のどちらが向いていると考えられるか判断していくと良いということがお分かりいただけたはずだ。
ここで、ひとつだけ述べておきたいことがある。
それは、どこの学校にかようかを最終的に決めるのは子供であるということである。
もちろん若干10年程度しか生きていない子供に全ての決断権を委ねることは心もとないことであるにちがいない。
しかし、実際に学校に通い数年間をすごすのは子供本人に他ならない。
親である以上、中高一貫校と公立の中高のちがいなど、さまざまに学校に関する知見を深めることが必要だ。
これは親の望む進路を早期に明確にし、子供にうながすためではない。
子供が進学先を考え始めた時に的確に助言ができる親であるためである。
ぜひとも今回のこの記事を参考に、学校に関する知識を深めていってほしい。
中高一貫校にはいろいろなメリットとデメリットがある。
これを子供に分かりやすく説明し、本人はどのような学校への進学を望むのか聞いてあげられる親を目指してほしい。