「山川」という出版社について,みなさんはどんなイメージを持っているだろうか。
恐らく世界史・日本史を学んだ学生のほとんどがその名を知っているのではないだろうか。
日本中の多くの高校が,世界史Bの教科書として山川出版社の「詳説世界史」を採用しているからだ。
しかしながら受験対策という分野においては,山川の「詳説世界史」はあまり活用されていない。
あくまでも教科書は教科書,学校の勉強で使うことはあっても受験対策はそれに特化した参考書を使った方が効果的だという考えは,多くの受験生が持っているのではないだろうか。
だが山川の「詳説世界史」は,学校で配布されてすぐそのまま本棚の肥やしにするにはあまりにも惜しい教材である。
特に東大の二次試験の独特な論述を対策する上では,絶対に欠かせない強力なメインウェポンとなるのだ。
今回はそんな山川の「詳説世界史」について,その特長や使用方法を詳しく解説していこう。
これを読んで東大入試で世界史を40点以上という高得点を獲得していこう。
また、東大志望者以外にもうまく活用すると世界史の点数を伸ばしてくれるので、ぜひこの記事を読んでおこう!
山川の「詳説世界史」をオススメしたいのはこんな人
なんといってもこの「詳説世界史」を一番有効活用できるのは,東大の文系を志望していて,世界史を使って受験する予定の人だ。
というのも,東大の二次対策において一番使いやすい教材は,ダントツで山川出版の「詳説世界史」であるからだ。
また使用をオススメする時期についてだが,高校入りたてでまだ世界史Bには手をつけてもいない場合から,もう世界史は一通り授業で習っていておおまかなところはだいたい知っているという場合まで,基本的にいつ始めても大丈夫だ。
このあたりは王道教科書ならではの特徴だと言える。
東大対策で山川の「詳説世界史」を使う目的とは
東大の二次試験の世界史において最も特徴的なのは,なんといっても第1問でいきなり課される450 ~ 600字の大論述だ。
大学側が公表しているわけではないので世間の推測でしかないが,一般的に第1問の配点は20 ~ 30点であると言われており,大手予備校の東大模試もその程度の配点で採点している。
世界史の満点は60点なので,一本の大論述で3分の1から半分が決してしまうのだ。
このことからも,東大の世界史を対策する上で,大論述を書けるようになるのは最重要であることがわかる。
その大論述対策に最も適した教材は,間違いなく山川の「詳説世界史」であると断言できる。
というのも,この教材はあくまでも教科書であるため,内容は文章の羅列が大半を占めている。
この形式は,長文を書かなければいけない論述試験の対策に非常にマッチしているのだ。
また文章の羅列を自分なりに整理して要約を書いてみる作業は,インプットとアウトプットの両面で非常に効果的な勉強法だ。
このことも,既に完成された図表でまとめてしまっている市販の参考書と比べると,とても大きな強みである。
これらのことを踏まえると,山川の「詳説世界史」を使う目的とは,東大二次特有の大論述に対応できる記述力を身に着けることであると言える。
山川の「詳説世界史」ここが優秀なポイント
なによりも前節で述べたように,教科書であるが故にほとんどすべて文章で構成されているというところが一番のミソである。
しかしそれ以外にも,東大二次対策に山川の「詳説世界史」がぴったりな理由はいくつもある。
それでは一つ一つ解説していこう。
東大二次の出題内容はあくまでも高校教科書の範囲!
まさに見出しの通りである。
間違いなく文系で日本一の難関大学である東大文科だが,そこはさすが国立大学。
どこぞの私立大学たちの奔放ぶりとは違い,しっかりと高校の既習範囲から出題してくるのだ。
ということは,どんなにヘビーな大論述であっても,高校の教科書に書いてあることを駆使すれば十分合格レベルの解答が書けてしまうということである。
そこで改めて山川の「詳説世界史」を見てみると,表紙の上に小さく「文部科学省検定済み教科書」と表記されているのがわかる。
これが山川の「詳説世界史」の信頼性を裏付ける一番の証明だ。
極端な話,文部科学省が認めた教科書を完璧にマスターすれば,国立大学の試験で合格水準の点数を取ることなど朝飯前なのである。
章の冒頭の要約文で大きな流れを掴める
山川の「詳説世界史」は,時代と地域によって17の章に分けられているが,その全ての章の冒頭に,章の内容を大まかにまとめた要約を載せている。
時代の大きな流れや特徴,因果関係などを記述させることの多い東大二次の大論述において,このような要約は大変参考になるのだ。
さらにまだ世界史を学び始めたばかりの人は,この要約を読むことでより歴史の理解を速く進めることができるので,是非とも活用して欲しい。
ページの下枠に載っている小ネタがおいしい!
山川の「詳説世界史」をパラパラと眺めてみると,本文とは別の下枠に小さい文字で注釈のようなものが書かれているのがわかる。
このなんとも重要度が低そうに見える小ネタだが,実は東大の二次試験では非常に狙われやすいポイントなのである。
例えば,2015年の第1問。例年通り第1問は与えられた語句を使って大論述を書くものであったが,この年はモンゴルがテーマであり,指定語句に「ジャムチ」というワードがあった。
この「ジャムチ」,実は山川の「詳説世界史」のp.108にバッチリ載っているのである。
しかも下枠の小ネタで!
もちろんこれはほんの一例で,他にも過去に多くの下枠小ネタが出題されているのだ。
推測でしかないが,東大側としても教科書の範囲内縛りで差のつく問題を出そうとすると,こういった微妙な小ネタが使いやすい。
ぜひ小ネタはチェックしておこう!
山川の「詳説世界史」を効果的に使うための方法・コツ
以上で、山川の「詳説世界史」について,その有用な特長についてざっと見てきた。
ここでは、さらにこの「詳説世界史」のポテンシャルを最大限に引き出すため,有用な使用方法を解説していこう。
いつ頃取り組むべきか
ずばり,世界史の勉強をやり始めた時から受験直前までずっと使うべきである。
東大世界史の対策のメインウェポンは山川の「詳説世界史」であり,この教科書に始まりこの教科書に終わると言っても過言ではない。
ただし,記述形式ではないセンター試験の対策においては,用語を効率よく覚えられる山川の「一問一答用語問題集」をメインに据えると良い。
この教材についてはまた後程解説する。
また、一問一答の詳しい使い方については以下の記事を参考にして欲しい。
センター試験対策にしては、以下の記事を参照しておこう。
山川「詳説世界史」への取り組み方 ~基礎編~
だいたいの人が章ごとに区切って勉強を進めていくと思うが,ここで是非ともやって欲しいことは,章の冒頭に載っているまとめ文の内容を大まかに覚えてしまうことである。
このまとめ文には,その章で特に重要な歴史的出来事や流れがピックアップされている。
そのためこれを頭に入れておくと,細かいところを覚えるときに繋がりを持って覚えやすい。
また,このまとめ文は論述解答のいい手本となるのだ。
また山川の「詳説世界史」の本文を読み進める時に多くの人がやる勉強法は,重要な「単語」にマーカーなどでラインを引いていくやり方だと思うが,東大を目指す人ならば是非とも重要な「文章」にラインを引く習慣をつけて欲しい。
単語をバラバラのピースとして記憶しても,それらの間の繋がりを把握しないと大論述には太刀打ちできないからだ。
教科書特有の長ったらしい文の羅列から重要なセンテンスを見つける作業を通じて,自然と歴史の大きな流れを頭に入れることができる。
時代と地域ごとに区切って学習を進め,一つ一つ確実に定着させていくことも大切である。
古代中国と7世紀以降のイスラーム地域を一気にまとめて斜め読みしても,記憶しきれずに後でまた同じところで苦労するのがオチである。
最初は3日間で1章分などと決め,そこを何回も繰り返し読むことが大切である。
山川「詳説世界史」への取り組み方 ~応用編~
東大志望の受験生なら是非ともやっておいて欲しいのが,教科書を参考にして時系列・地域を整理したまとめ表を作る作業である。
この表というのはどんな形式でも良い。
年表,用語集,要点箇条書き,関係図……などなど,いろいろなまとめを作成しておいて損はない。
教科書は何度も言っているように単なる文章の羅列だから,お世辞にも縦(時代)や横(地域)の関係が把握しやすいとは言えない。
だからこそ,受験直前の確認でも使えるような自分なりのまとめを作っておこう。
山川の「詳説世界史」の内容をインプットする作業を全範囲一周できたら,もう論述の典型問題に取り組んでしまおう。
最初のうちは何を書けばいいのかさっぱりわからなくて当然だが,この時山川の「詳説日本史」を参照しながら記述しても全く構わない。
こんな問われ方をしたらこんな内容を書けば良いというマニュアルを,少しずつストックしていこう。
さらに,山川の「詳細世界史」を使った学習の補完として,同じく山川の「一問一答用語問題集」を併用することをオススメする。
教科書だけだとどうしてもセンテンスばかりでワードの記憶はしにくいので,用語集の使用は必須であると言える。
世間にいくつも出回っている用語集のなかで,なぜ山川の「一問一答用語問題集」がオススメなのかというと,何よりもまず「詳説世界史」と同じ山川出版社が出している用語集であり,「詳説世界史」に完全に準拠しているからである。
そのため載っている用語は全て教科書範囲のものなので,やはり東大二次の世界史対策にうってつけであると言える。
また大手予備校が市販している用語集は,私大にも対応できるよう難問・奇問を多く掲載しているのに対し,山川の「一問一答用語問題集」は教科書範囲に留まっているため,効率的に学習することができる。
特にセンター試験では用語の知識が重要であるため,山川の「詳説世界史」を繰り返し読むことでしっかり対策するべきである。
まとめ
以上が、東大世界史で高得点を獲得するための山川出版の教科書「詳説世界史」と「一問一答用語問題集」の使い方だ。
東大の二次試験では,社会の配点が国語や英語と同じ120点と非常に大きい。
そのため,社会でしっかり点を稼げるというのはとても大きなアドバンテージとなるし,場合によっては苦手科目での失点を社会でカバーすることも可能である。
東大二次の世界史は60点満点,難易度にもよるがそのうち35点ほど取れれば合格ラインに乗せることができる。
しかし社会でアドバンテージを取るためには,40点をしっかり確保して欲しい。そしてそのためには論述を確実に書ききれることが必要不可欠だ。
山川の「詳説世界史」を最大限活用できれば,東大の論述対策はバッチリだ。
是非とも山川出版社の教材を相棒として,世界史を武器にして欲しい。