2022年度の東大入試の合格最低点は、かなり下がってしまった。
なんと、過去10年間を見ても最低の点数であるといえる。
この年度は、共通テストがかなり難化し、共通テストの点数が影響したという見方もあるが本当だろうか?
問題自体は難しいものだったのだろうか?
逆にどの科目が難しくなったのか?
このような疑問が思い浮かんでしまう人も少なくないだろう。
特に、来年以降東大受験を考えている人には、いままで違うことがあるのかどうか、気になって仕方がないと思う。
そこで、この記事ではどうしてここまで東大入試の合格最低点が下がってしまったのか、2022年度東大入試の合格最低点の分析を行う。
特に、来年以降の東大受験を考えている人は、入試の特徴に変更はないのか、やるべき勉強に変更はないのかなどを参考にして欲しい。
2022年度東大入試、合格最低点、平均点
まず最初に、2022年度の合格者最低点と平均点は以下のようになっている。
科類 | 合格最低点 | 合格者平均点 | 合格者最高点 |
---|---|---|---|
文科一類 | 302.5889 | 331.5381 | 416.2556 |
文科二類 | 306.1444 | 329.5061 | 397.0556 |
文科三類 | 305.4111 | 327.6554 | 406.6667 |
理科一類 | 303.2333 | 334.3703 | 434.6222 |
理科二類 | 287.3778 | 312.9709 | 405.3444 |
理科三類 | 347.5111 | 377.1345 | 448.1111 |
また、過去10年の合格最低点、合格者平均点と比較すると以下のようになる。
<過去10年の文科類合格最低点>
年度入試 | 文一 | 文二 | 文三 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
2022 | 303 | 55.1% | 306 | 55.6% | 305 | 55.5% |
2021 | 335 | 60.9% | 338 | 61.5% | 337 | 61.3% |
2020 | 344 | 62.5% | 338 | 61.5% | 339 | 61.6% |
2019 | 352 | 64.0% | 358 | 65.1% | 343 | 62.4% |
2018 | 355 | 64.5% | 351 | 63.8% | 344 | 62.5% |
2017 | 355 | 64.5% | 349 | 63.5% | 344 | 62.5% |
2016 | 352 | 64.0% | 349 | 63.5% | 344 | 62.5% |
2015 | 325 | 59.1% | 322 | 58.5% | 311 | 56.5% |
2014 | 333 | 60.5% | 332 | 60.4% | 327 | 59.5% |
2013 | 349 | 63.5% | 343 | 62.4% | 347 | 63.1% |
<過去10年の理科類合格最低点>
年度入試 | 理一 | 理二 | 理三 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
2022 | 303 | 55.1% | 287 | 52.2% | 348 | 63.3% |
2021 | 333 | 60.5% | 314 | 57.1% | 376 | 68.4% |
2020 | 321 | 58.4% | 313 | 56.9% | 386 | 70.2% |
2019 | 335 | 60.9% | 330 | 60.0% | 385 | 70.0% |
2018 | 319 | 58.0% | 311 | 56.5% | 392 | 71.3% |
2017 | 347 | 63.1% | 335 | 60.9% | 408 | 74.2% |
2016 | 328 | 59.6% | 315 | 57.3% | 389 | 70.7% |
2015 | 323 | 58.7% | 312 | 56.7% | 377 | 68.5% |
2014 | 307 | 55.8% | 310 | 56.4% | 372 | 67.6% |
2013 | 316 | 57.5% | 303 | 55.1% | 370 | 67.3% |
<過去10年の文科類合格平均点>
年度入試 | 文一 | 文二 | 文三 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
2022 | 332 | 60.4% | 330 | 60.0% | 328 | 59.6% |
2021 | 361 | 65.6% | 362 | 65.8% | 357 | 64.9% |
2020 | 374 | 68.0% | 362 | 65.8% | 359 | 65.3% |
2019 | 379 | 68.9% | 379 | 68.9% | 361 | 65.6% |
2018 | 381 | 69.3% | 373 | 67.8% | 364 | 66.2% |
2017 | 381 | 69.3% | 374 | 68.0% | 365 | 66.4% |
2016 | 379 | 68.9% | 373 | 67.8% | 364 | 66.2% |
2015 | 354 | 64.4% | 345 | 62.7% | 332 | 60.4% |
2014 | 358 | 65.1% | 352 | 64.0% | 346 | 62.9% |
2013 | 377 | 68.5% | 365 | 66.4% | 366 | 66.5% |
<過去10年の理科類合格平均点>
年度入試 | 理一 | 理二 | 理三 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
2022 | 334 | 60.7% | 313 | 56.9% | 377 | 68.5% |
2021 | 361 | 65.6% | 339 | 61.6% | 406 | 73.8% |
2020 | 353 | 64.2% | 337 | 61.3% | 414 | 75.3% |
2019 | 363 | 66.0% | 353 | 64.2% | 411 | 74.7% |
2018 | 352 | 64.0% | 336 | 61.1% | 418 | 76.0% |
2017 | 378 | 68.7% | 363 | 66.0% | 433 | 78.7% |
2016 | 358 | 65.1% | 342 | 62.2% | 416 | 75.6% |
2015 | 353 | 64.2% | 336 | 61.1% | 403 | 73.3% |
2014 | 338 | 61.5% | 334 | 60.7% | 400 | 72.7% |
2013 | 345 | 62.7% | 328 | 59.6% | 396 | 72.0% |
このように、2022年度の合格最低点、平均点ともに前年度からおよそ30点ほど下がっている。
特に理科二類が300点代を切ったのは、他の全科類を含めても初めてのことで、かなり驚きである。
東大入試の合格最低点の急落の原因
次に、東大入試の合格最低点がここまでさがってしまった原因について考察していきたい。
共通テストの難化
今年度の入試でもう一つ特徴的なことは、共通テストの難化である。
実は、共通テストもかなり低い平均点を叩き出しており、大きな話題を呼んだのである。
ただ、東大入試では平均的に見てかなり勉強ができる子が受験するので、この場合は全体の共通テストの平均点ではなく、東大合格者の共通テストの平均点を見るべきである。
<2021年度東大第一次選抜合格者の最低点、平均点、最高点>
年度 | 科類 | 足切り点 | 平均点 | 最高点 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|
2022 | 文科一類 | 520 | 63.5556 | 675.62 | 82.5758 | 856 | 104.6222 |
文科二類 | 435 | 53.1667 | 692.31 | 84.6157 | 847 | 103.5222 | |
文科三類 | 595 | 72.7222 | 697.77 | 85.2830 | 840 | 102.6667 | |
理科一類 | 630 | 77.0000 | 730.01 | 89.2234 | 864 | 105.6000 | |
理科二類 | 646 | 78.9556 | 700.02 | 85.5580 | 860 | 105.1111 | |
理科三類 | 529 | 64.6556 | 659.06 | 80.5518 | 860 | 105.1111 |
<2021年度東大第一次選抜合格者の最低点、平均点、最高点>
年度 | 科類 | 足切り点 | 平均点 | 最高点 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|
2021 | 文科一類 | 562 | 68.6889 | 743.23 | 90.8392 | 894 | 109.2667 |
文科二類 | 足切りなし(合格最低点:203点) | 746.18 | 91.1998 | 881 | 107.6778 | ||
文科三類 | 600 | 73.3333 | 770.24 | 94.1404 | 871 | 106.4556 | |
理科一類 | 699 | 85.4333 | 789.12 | 96.4480 | 882 | 107.8000 | |
理科二類 | 629 | 76.8778 | 764.47 | 93.4352 | 879 | 107.4333 | |
理科三類 | 534 | 65.2667 | 757.92 | 92.6347 | 886 | 108.2889 |
以上を見ると、2021年度と比べて、2022年度の平均点は換算得点で見ると、7~12点ほど下がった。
なので、東大の合格最低点の低下の一因であるということは言える。
しかし、実際の合格最低点は30点ほど下がっているいるので、のこりの20点ほどは別の要因であると考えられる。
国数英の採点に変化が?
2つ目の要因としては、国数英の大幅な採点の難化である。
二次試験の科目別合格者平均点に目を向けてみよう。
科目別の平均点は公開されていないので、合格者から集める必要がある。
実際に科目別の平均点を東大受験者から集計してデータとして集計しているサイトがあるので、そちらのデータを参考に見ていきたいと思う。(データの網羅率は概ね20~30%)
科類 | 共テ (圧縮後) |
国語 | 外国語 | 数学 | 地歴 | 総合計 【平均(公式発表)】 |
---|---|---|---|---|---|---|
(満点) | 900 | 120 | 120 | 80 | 120 | 550.0000 |
文科一類 | -45.6 (-5.6) |
-8.4 | -4.4 | -8.7 | -1.3 | -28.4117 【-29.2799】 |
文科二類 | -52.1 (-6.4) |
-9.6 | -8.6 | -4.3 | +0.1 | -30.3233 【-32.5659】 |
文科三類 | -59.4 (-7.3) |
-8.7 | -1.5 | -8.4 | -3.4 | -29.2531 【-29.1803】 |
科類 | 共テ (圧縮後) |
国語 | 外国語 | 数学 | 理科 | 総合計 【平均(公式発表)】 |
---|---|---|---|---|---|---|
(満点) | 900 | 80 | 120 | 120 | 120 | 550.0000 |
理科一類 | -39.0 (-4.8) |
-10.6 | -9.4 | -5.5 | +2.4 | -27.9332 【-26.3707】 |
理科二類 | -43.9 (-5.4) |
-11.6 | -10.7 | -1.3 | +2.2 | -26.7246 【-25.5865】 |
理科三類 | -27.7 (-3.4) |
-11.5 | -7.0 | -9.0 | +1.4 | -29.5571 【-28.4020】 |
出典:https://todai.info/juken/data/2022/kaiji.php
これを見ると、国数英で大幅に平均点が下落していることがわかる。
逆に、社会や理科などには、あまり大きな変化は見られない。
ただ、この3科目は確かに前年度と比べると多少難しくなった部分はあるが、大幅な難化はしていない。
よって、考えられる原因は二つある。
まず1つ目は採点が厳しくなったということだ。
特に、国語はいくらでも採点を厳しくすることができるので、実際に平均点を-10点下げることは採点次第でどうとでもできる。
英語も基本的にほとんどが記号問題であるが、記述の要約や英作文、和訳も採点次第で厳しくすることが可能である。
数学もいままでは、理科三類以外は採点方法が甘めであるということが噂で言われていたので、それを厳しくし直したのかもしれない。
もう一つ考えられることは受験生の能力の低下である。
今年受験した学年は、コロナが猛威を振るった2020年には、高校2年生だった。
高校2年生というのは、英数の基礎を完成させるとても大切な時期だ。
家でも勉強ができ、自分で黙々と勉強を進められた人にとってはさほど問題はなかったかもしれない。
しかし、外向的な性格で友達との関係を大切にしたり、家で勉強することが苦手な人にとっては、勉強を自分だけで進めるのはかなり大変であったに違いない。
基本東大を合格する人は、学校の進度などにとらわれず自分で黙々と勉強を進めることができる人が多いが、自分で勉強をすることができる能力を持っていても、精神的にダメージを負って勉強に身が入らなかった人もいるはずだ。
そして、高校2年生で堕落してしまった人にとってあと一年で英数の勉強を取り戻すことはかなり難しい。
よって、コロナの影響による学力低下というものも少なくともあったのではないかと思われる。
今後の対策への影響
最後に、この大幅な合格最低点、および平均点の下落が今後の対策にどのような影響を与えるのかについて解説していく。
基本的に合格最低点や平均点が大幅に下がったからといって、なにか今までの対策を大きく変化させることはない。
むしろ、今までの対策をより一層緻密にこなしていく必要がある。
東大対策のセオリーとしては、英数をできるだけ早い時期に固めて、高校3年生以降に理科などの選択科目への受験勉強を始め、国語は最小限の勉強で乗り切るというものだ。
特に、英語と数学は大幅に点数の差が開く科目である。
このような科目で平均点が下がった場合、より実力が顕著に開いてしまう。
よって、しっかりと対策しきって、A判定を何度もとっている人は点数を取ることができるし、合格点ギリギリを狙い、対策が不十分な人は、一気に跳ねられてしまうということだ。
また、国語のようなもともと差がつきにくい科目で平均点が下がった場合、より差が開きにくくなるということだ。
よって、最低限の勉強でコンパクトに仕上げていく必要がある。
実際、筆者の生徒の開示得点を見ても、合格した人は、英数両方とも点数がしっかりと取れており、不合格だった人は、英数どちらかの点数が取れていなかった。
そして、国語の点数は合格者も不合格者も低いままだった。
よって、公開されているデータからも筆者の実体験からも、英数を早期に完成させるということがより重要になってきたということなのだ。
英数というのは1年では決して完成まで持っていくことができない。
たとえば、今年残念ながら不合格だった人が、浪人して、再度チャレンジしたとしても、今年のうちに英数が完成していないと、来年の入試にも間に合わないということなのだ。
現在高校1、2年生で東大を目指している人は、このことを肝に銘じて、英数を今のうちにしっかりと対策すべきである。
まとめ
以上が、2022年度の合格者最低点、平均点の大幅な下落についての現役東大生の分析である。
今年は、ほぼ全科類で合格者最低点、平均点の30点以上のもの下落があった。
これは、確かに共通テストの難化によるものだということも一理はある。
しかし、30点もの下落はそれだけでは説明できない。
英数国の平均点に大幅な下落があり、問題自体が過度な難化をしていないことを考えると、採点が厳しくなったか、受験生の学力が低下したかのどちらかである。
いずれにせよ、英数を高校1、2年生のうちにしっかりとこなし、それらを完成させてから理科や社会に取り組む、国語は最低限の勉強で済ませるという東大入試のセオリーはより一層守らなくてはならない結果となった。
これを読んだ東大志望の受験生は、ぜひ参考にして、英数の勉強にしっかりと取り組んでいただきたい。