地方では馴染みがないかもしれませんが、都心部では、中学校のうちから東大を目指す中学生が多くいます。
中学生のうちから英数などを先取り学習して、高校3年生になる前にもう東大入試の対策ができるようにしてしまう人もいます。
それでは、東大を目指すには中学生のうちから先取り学習をしていくことが必要なのでしょうか?
必要かどうかという話でいうと、中学生のうちの先取り学習は必要ではありません。
ただ、中学生のうちから先取り学習をしておけば有利になる場合もあります。
しかし、先取り学習をした場合、定着させてから次に進まなければ、だんだん本人が混乱して結果的に時間の無駄になっただけになってしまいます。
ここでは、東大を目指す中学生の先取り学習について、解説していきます。
先取り学習は正しくやれば、かなり有利に働きますが、危険性も潜んでいますのでこの記事を参考にしてください。
<解説動画>
先取り学習よりも、大事なこと
なぜ中学生のうちの先取り学習が必要ないかというと、それよりも中学生のうちに身につけておかなければならない大切なことがあるからです。
これを身につけずに先取り学習をしても、東大受験にプラスには働きません。
先取り学習よりも大切なことというのは、「一人で勉強できる」ことです。
この章では、「一人で勉強できる」とはどういうことかについて解説していきます。
「一人で勉強できる」とは?
「一人で勉強できる」とは
- 勉強したい内容の情報を自分で探す。
- 集めた情報を自分の頭の中で整理する。
- 何度もアウトプットを重ね知識を定着させる。
- 勉強した内容のテストで満点を取る。
の4つのステップができることをさします。
例えば、自分が三角形の合同証明ができるようになりたいとします。
まずは、それに必要な情報を自分で探すことが必要です。
先生に聞くのも手ですが、参考書などの書籍から探した方がインプットが早いでしょう。
そして、参考書の中から、三角形の合同証明について書かれている部分を探して見つけます。
その後、三角形の合同の定義をまず理解して、そこから、例題などをみて必要な情報を整理していきます。
次に、何度か問題を解いてどの問題が出題されても解けるようにして、テストに臨めばほぼ満点が取れるでしょう。
このように、自分の学習したい内容の情報を探して、整理して、定着させて、最終的にテストで満点が取れるまで自分一人で全部できれば「一人で勉強できる」ことになります。
どうして、「一人で勉強できる」ことが大切なのか?
どうして、先取り学習よりも「一人で勉強できる」ことの方が大切なのかと言いますと、先取り学習が定着しないからです。
先取り学習だけでなく、東大受験対策を行う際など、どのようなステップを踏んで勉強していけば、東大入試でより高得点が取れるのか、自分で考えて行動に移せなければ東大に合格することは難しいでしょう。
中学生のうちから先取り学習をすることは、確かに有利に働くこともあります。
ただ、これができずして、先取り学習ばかりやっていると、やった内容がなかなか定着せず、やればやるほど混乱していきます。
そして、東大入試に必要な勉強の本質が全く身につかないまま高校生になってしまい再度勉強し直す事になります。
先取り学習のメリットデメリットがわかる、鉄緑会のカリキュラム
東大専門塾でもっとも有名でもっとも優秀な合格実績を出しているのが、鉄緑会という塾です。
これは、東大生が主に授業をする塾で、立ち上げたのも東大生です。
鉄緑会は、誰もが入塾できるわけではありません。
有名私立の中高一貫校に入学した中学1年生のみが、無条件に入塾でき、それ以外の人は入塾テストを合格しないと入塾できないのです。
たとえ入塾テストを合格して入塾できたとしてもついていくのは大変だと言われています。
どうしてのこのような制約があるのかは、カリキュラムを見ればわかります。
鉄緑会では、中学校の3年間で英数に絞って勉強して、英数の高校の内容まで全て中学校のうちに終わらせるのです。
そして、高校3年間で、他の理科社会などの他の科目と、英数の東大入試対策を行います。
なので、この超先取り学習のカリキュラムはかなり頭の良い中学1年生が最初から始めないとついていくのは難しいという事です。
この驚異的なカリキュラムと豊富な東大受験に関するノウハウで、毎年300~400人ほどの現役東大合格者を排出しています。
やはり、先取り学習というのは、うまくいけばかなり東大入試に有利に働くのです。
しかし、逆を返すと、1学年1000人ほどいると言われている、鉄緑会ですら、600人ほど東大に合格しない人がいるということです。
もちろんその中にも、理三以外の医学部を自分の意思で受験したという人も数百人はいるでしょう。
しかし、中にも東大が不合格になった、東大受験をするまでの学力がつかなかったという人もいます。
英数を中学校のうちに完成させてしまうカリキュラムを受けているのにも関わらず落ちてしまう人がいるのです。
その原因は超ハイスピードの先取り学習についていけず、学習した内容を定着させる前に、次から次へと新しい内容を教えられて、途中で混乱してしまうからです。
一度ついていけなくなってしまうとその集団の中で再度復活するのは至難の技です。
このように、どんなにハイスピードで先取り学習をしても、デメリットというものは存在します。
この鉄緑会の事例を見れば、メリットもデメリットもすぐに見えます。
先取り学習をするには十分注意が必要なのです。
中学生のうちに先取り学習をする際の注意点
次に、もし中学生のうちに先取り学習をどうしてもしたいという人のために、先取り学習をする際の注意点について、解説していきます。
今までの習ったことは完璧に再現できるか?
当たり前ですが、先取り学習をする前に、今まで学校などで習った内容が定着しているか確認しましょう。
今までに習ったことも完璧に再現できないようでは、先取り学習をしてもそれがうまく定着させられる可能性は低くなります。
また、特に英数は今までに習ったことは既知のものとして扱うので、途中でどういうことかわけわからなくなるという事になります。
先に進みたいという気持ちはわかるのですが、必ず先取り学習をする前に、今まで習った分野を完璧に再現できるのかしっかり確認してからやってください。
時々戻る
先取り学習をしていくと、どんどん先へ進んでばかりの人がいます。
一度完璧にした内容でも、人間は忘れるものです。
必ずある程度勉強が進んだら戻って復習し直すという作業を怠らないようにしましょう。
私も、中学生で、高校の勉強を先取りしている生徒が何人かいますが、必ず長期休暇などを利用して、今までやった部分の復習をするようにしています。
一度やったところをもう一度やる事で、さらに定着率がアップして忘れにくくなるのです。
一度やった分野の復習になるので、以前かかった時間の1/4ほどですみます。
めんどくさがらずに、定期的に戻って復習するようにしましょう。
学校の進度との折り合い
先取りをする場合、学校の進度との折り合いをどうつけるかということが、重要になってきます。
学校の授業は当然自分の勉強している進度より遅くなります。
なので、授業を聞かなかったり、内職などをして先生と揉めるケースがあります。
私も、高校のときは先取り学習をがっつりやっており、よく高校の先生ともめていました。
しかし、学校の先生と揉めるのは決して良いことではありません。
学校の授業は真面目に聞いたふりをしたり、隠れて内職するなどして、学校の先生に反抗的な態度を取らない方が、お互いストレスがかかりません。
先取り学習をする際は、学校の先生との関係をうまいこと保ちましょう。
また、定期テストなどが自分の今学習している範囲と違うからと完全に手を抜いて微妙な点数を取ってしまう人もいます。
もちろん定期テストによっては、教科書の英文の暗記など、東大入試に役に立たないものもあります。
しかし、教科によっては、役に立つものも当然あります。
良い復習の機会になるので、決して手を抜かないようにしましょう。
完璧に定着していれば、いつ問題を解いてもほぼ満点をとることができます!
高校では先取り学習が必要になるケースも
中学では先取り学習は必要ないと述べましたが、高校になると東大を目指す場合は必要になってくる場合もあります。
東大入試は日本一の難易度を誇る入試問題です。
この試験で十分合格点を確保できる点数を取るには、高校の範囲を全て終えた後、半年から1年間の演習を積まなければいけません。
これを見据えて、東大の合格者を多く排出している中高一貫校では、高校2年生の間に少なくとも英数は終わるようなカリキュラムをくんでいます。
しかし、東大合格者が少ない地方の公立高校では、英数が夏休み入るまで終わらない、日本史がセンターまで間に合わないというカリキュラムになっているところもあります。
なので、自分で先取りの塾に通ったり、独学で先取り学習を進めていかなければいけないケースがあります。
この時に必要になるのが、「一人で勉強できる」能力なのです。
自分の判断で計画的に先取りをして、それぞれどれくらい定着しているか正しく認知して、その時に適切な進度で勉強を進めていかなければなりません。
東大を目指すのであれば、高校の時にたっぷり先取り学習をしていかないと間に合いません。
この時に、「一人で勉強できる」ように中学校のうちは、自分の勉強スタイルを確立させるようにしましょう。
中学生が先取り学習できる塾
最後に中学生が東大受験を見据えて先取り学習ができる塾を紹介します。
鉄緑会
先ほどもご紹介した鉄緑会です。
この塾は、中学校のうちは英数に集中して徹底的にマスターし、高校に上がる前に高校の英数の範囲を全て終わらせてしまうという、狂人なスピードで先取り学習を行なっています。
高校に上がってからは、英数のハイレベルな演習と理科や社会の勉強を行います。
高校3年生になるまでに本格的に全教科東大対策ができるようなカリキュラムになっています。
まさに、中学校から対策するには日本一良い環境を提示してくれます。
ただ、上記で説明した通り、全員が入れるわけではありません。
以下の指定校に入学した中学校1年生と厳しい入塾試験に受かったものだけが入塾できるのです。
開成 821 名
桜蔭 738 名
筑駒 500 名
麻布 352 名
駒東 253 名
海城 321 名
筑大附 296 名
豊島岡 284 名
女子学院 196 名
雙葉 195 名
渋幕 142 名
栄光 67 名
聖光 60 名出典:鉄緑会ホームページ
また、鉄緑会は東京と大阪にしか校舎がありません。
東大生をはじめとした良質な講師陣が売りの一つなので、それ以外の場所では、良質な講師陣が確保できないということでしょう。
なので、この東京と大阪に毎週通うことができるところに住んでいることが条件となりませす。
日本一の東大専門塾というだけあって、入塾には色々な制限がかかるのがこの塾の特徴です。
東進中学NET
東進も中学生が先取り学習のできる塾の一つです。
こちらのカリキュラムでは、中学校1、2年生で中学校の勉強を全て終え、中3から高校の勉強を1年前倒しで行い、高校2年生までに高校の全範囲を終えるというものです。
鉄緑会と比べるとそこまでハイスピードでもありません。
また、一応カリキュラムはあるものの、授業を受けるペースは自分でコントロールできるので、ついていけなくなるということもありません。
ただ、東進は授業料がかなり高いです。
授業の質は確かにいいのですが、それ相応の金額がかかってきます。
また、校舎によってはあまり自由にやらせてくれなかったり、チューターが地元の大学生で高度な質問に対応してくれなかったり、参考になる勉強法が聞けないというケースもででてきます。
なので、「一人で勉強できる」能力がしっかりそなわっていれば、最強の授業になるのですが、それができないと、あまり効果的にはなりません。
赤門アカデミー
我々が運営している赤門アカデミーという塾も東大をはじめとした難関大学を目指す中学生も受け入れています。
ただ、先取り学習ができるかどうかは、本人の現在の学力とどれくらい時間が取れるかにもよります。
赤門アカデミーは、東大生が動画通話で週1回2時間勉強の定着率をはかり進度をコントロールして、勉強法を中心に指導しています。
なので、基本的に週ごとに課題を出されて自分で勉強してきてもらいます。
最初の一ヶ月で生徒の現在の学力とどれくらい勉強に時間を割けるのかしっかり見極めて、その人が一番定着しやすい進度で勉強を進めていきます。
なので、先取り学習のデメリットである途中で定着せずに進んで混乱するということを防ぐことができます。
ただ、ネットによる塾なので自習室を提供したり、身近に争えるライバルを見つけることはできません。
しかし、あまり優秀な塾が少ない地方の人たちに東大生による質の高い指導を受けることができるのです。
まとめ
以上、東大を目指す中学生の先取り学習について、現役東大生が解説しました。
東大を目指すのであれば、高校に入ってから先取り学習は必要になってきますが、中学生のうちは必要ではありません。
むしろ、「一人で勉強できる」ようになるために自分の勉強のスタイルをじっくり確立させることが必要です。
もし自分の勉強スタイルが確立できているのであれば、先取り学習は東大受験で有利にはたらくのでぜひやってみましょう。
その際には、この記事であげた注意点をしっかりと守って先取り学習を進めていくようにしましょう。