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2018年度東大地理解答速報の比較と解説まとめ

東大入試の社会科目は、地歴のうちの二科目合わせて150分与えられる。

単純計算すると、地理に分けられる時間は75分である。

今年の問題は、書く量はやや多い方と考えられるが、読み取りにくい図などもなく、解きやすかっただろうと感じられる。

以下では、解答に至るまでの解説や考え方と、解答の一例を示している。

目次

第1問

設問A

この設問は環境についてで、内容としては頻出で比較的わかりやすいものであっただろう。

しかし、文字数が少ない中、必要な情報を短い時間内にまとめるのが難しかったとも考えられる。

とはいえ、知識自体はセンターレベルであるため、確実に点を取っておきたい場所である。

(1)

二酸化炭素濃度が全体として増加しているということは、「二酸化炭素を増やすものが増えている」ということと、「二酸化炭素を減らすものが減っている」という二点が考えられる。

前者の方には、二酸化炭素を多く排出する化石燃料の消費、後者には二酸化炭素を取り入れる働きをする森林等の伐採が挙げられる。

解答:化石燃料の消費の増加や、森林の伐採の拡大。(21)

(2)

(1)でも書いたとおり、森林は、二酸化炭素を取り入れ、酸素を放出する。

森林の多くは、夏に葉をつけ、多くの二酸化炭素を取り入れるが、落葉樹の場合、冬に光合成が行われる量は減る。つまり、夏の方が冬の時よりも二酸化炭素の量が少なく、冬は逆になるということである。

地球は北半球と南半球で季節が逆になるので、常に変わらないのではないか、と思うかもしれないが、陸地のほとんどは北半球にあり、南半球のオーストラリア大陸や南極大陸にはあまり植物がないため、北半球が夏の時に二酸化炭素が減少(また酸素が増加)し、北半球が冬の時に地球全体としての植物が減り、結果として二酸化炭素が増加する。

又、冬に暖房をつけるため、多くの化石燃料が消費され、二酸化炭素の量が増える。

植物と同様人口も北半球の方が多いため、冬になると二酸化炭素排出量は増える。

解答:植物、人間が多い北半球が夏であると、光合成が活発に行われ、二酸化炭素量が減少し、冬には暖房の仕様により増加するから。 (58)

(3)

Aは過剰に二酸化炭素量が増えているので、そのような人間活動・環境要因を考えれば良い。

エネルギーという指定語句があるので、人間がエネルギーを消費することで二酸化炭素が増加していると説明ができる。

次に気温という語句があるが、その文字を見て、「二酸化炭素=温室効果ガス=気温上昇」のつながりを思い出せると良い。

よって、二酸化炭素が増えた結果、温室効果ガスとして地球を温め、気温が上昇した結果、地球環境が変化し、植物が減るということが考えられる。

一方、 Dは、二酸化炭素量があまり変化しておらず、むしろ減っているくらいであるため、二酸化炭素量を増やす行為をあまりしていないと考えられる。

人間活動としては、節電や森林を植えるなどの温暖化対策した結果、森林面積が増えるなどし、地球環境がある程度固定されることが考えられる。

解答:Aは人間活動によりエネルギーが多く消費され、温室効果ガスにより気温が上昇し植物が減少する地球環境を、Dは人間が温暖化対策をし、地球環境がある程度固定されることを予想した。(85)

設問B

比較的短く、内容を知っているか知っていないかで回答できるかが変わってくる。

ほとんど考えることがないので、知っている知識をいかに早く書けるかが他の問題の解答率を左右する。

設問 Aと同様、難易度はあまり高くない。

(1)

センターレベルの知識問題。確実に抑えておこう。

「ハリケーン−北アメリカ南部」
「サイクロン−南アジア」

(2)

基本的に風の問題が出た場合は、大気の循環を思い浮かべ、貿易風や偏西風、極東風が影響していないかを考えると良い。

この場合は、貿易風・偏西風が共に当てはまる。

解答:熱帯低気圧はまず貿易風、その後偏西風の影響を受けるから。(28)

(3)

南米大陸といえばまず海流を思い出して欲しい。

寒流があると、下層の空気が冷却されるため、上昇気流が生じず、大気が安定する。

そのため、高気圧になり、熱帯低気圧は発生しない。

解答:寒流が通るため、上昇気流が生じず、大気が安定するから。(27)

(4)

問題文が長く少しわかりにくいが、短くまとめると、「熱帯低気圧が原因で被災する人が増える原因となる自然や社会の変化」を答えれば良いのである。

自然の変化としては、自然防波堤となる植物の減少で、人間がもろに影響を受けるということが挙げられる。

社会の変化としては、熱帯的圧が生じる地域は、発展途上国が多く、環境があまりよろしくない上に人口の増加が大きいところであるため、単純に人が増えると、被災する人も増えるということが考えられる。

解答:熱帯低気圧が発生した場合、それを遮る自然防波堤となっていた植物の減少や、人口増加に伴い、被災者が増えると考えられる。(58)

第2問

設問A

全体的に見て第1問より難しく、問題文・解答がともに長いが、指定語句をヒントにじっくり考えれば見えてくるものもあるだろう。

しっかり論理的な思考をすれば答えにたどり着けると思う。

(1)

シンガポールはアジアのハブとして有名ということは抑えておこう。

特に「中継」という語句を見て思い出せたら良いだろう。

次に香港が下がった理由としては、今までは中国の中で香港が経済的に発展しているところとされていたが、上海が6位から1位に上がったことからも推測できるように、中国本土自体の経済発展は著しい。

よって、香港を経由せず、直接中国本土と取引することも増えたと考えられる。中国が世界の製品の多くを作っていることは言うまでもない。

解答:中国本土が経済発展を果たし、多くの製品を取り扱い、香港の需要は下がったが、シンガポールはアジアのハブとして中継をしているから。(63)

(2)

(ア)−オーストラリア (イ)−ブラジル

(3)

難しい問題なのでゆっくり考えていこう。

まず、パナマ運河は太平洋と大西洋をつないでいるということは、アジアにとってアメリカ大陸東海岸やヨーロッパに水上輸送がしやすくなったということが考えられる。

次に、輸出品と輸入品の例、さらには指定語句に「コンテナ船」「ばら積み船」とあり、何に何が入っているかなんて覚えてない!と思った人もいるだろう。

焦らず、小問(1)に戻って欲しい。「コンテナ船は、コンテナを用いて貨物を運ぶもの」「ばら積み船は液体や鉱石、穀物などを運ぶものであるが、タンカーや鉱石専用船は非常に大型のものが多い」との情報が得られる。

つまり、パナマ運河の拡張工事で起きた変化としては、「コンテナ船が通れるようになった」「穀物などを積んだばら積み船が通れるようになった」ということが考えられるだろう。

それを踏まえた上で、アジアの輸出品・輸入品を考えれば良い。水上輸送の利点には、陸上輸送より輸送費が安いということがある。

解答:コンテナ船の通行可能により、東アジアから工業製品が多く輸出、ばら積み船の通行可能により、アメリカ大陸からの穀物の輸入が、陸上輸送に比べ安い輸送費でできるようになった。(83)

設問B

アジア部分の多い問題。

(3)は少し難しいが、(1)(2)は是非完答を目指して欲しい。

(1)

「中国・インド・アメリカ・インドネシア・ブラジル・パキスタン・ナイジェリア・バングラデシュ・ロシア・メキシコ・日本」と世界の人口トップ10は必ず覚えておくこと。

それさえ知っていれば、この問題は簡単に解ける。

このうち、東南アジアの国、南アジアの国は(既出のものを除けば)一つずつしかない。

イランとの統治の違いだが、知らなくとも、イランの宗教色が強そうというイメージさえあれば想像は難くないだろう。

解答:A−インドネシア B—インド

イランはイスラム教の最高権力者が政治的地位も保っているが、インドネシアでは政教分離が進んでいる。

(2)

世界史選択者には有利な問題。

さとうきび、ゴムと見ればすぐにプランテーションという語を思い出そう。

マレーシア、南アフリカ共和国が共にイギリスの支配下にあったことも同時に思い出せると良い。

解答:イギリス支配の下、南アフリカ共和国ではさとうきび、マレーシアではゴムのプランテーションで働かせるために移住させたから。(57)

(3)

「東南アジア・アフリカ東南部のどのような分野での貿易や投資」と非常に抽象的な問題であるため、解答が難しい。ヒントとして与えられた言葉「両地域の経済発展の状況」を踏まえて考えるしかない。

まず、アフリカ東南部は非常に貧しく、あまり経済発展していないということは皆知っていると思う。

よって、現在は一次産品の貿易や投資が多いということが考えられる。今後それがどのように変わるかと考えると、それに加工を加えた二次産品が増えるのではないかと予想できる。

一方で、東南アジアは今日急成長を果たしていることで有名である。

よって、東南アジアの豊富な一次産品・近年増えている二次産品に加え、IT系の最先端な分野における成長も期待できるだろう。

解答:東南アジアは、著しい経済発展と共にIT等最先端の分野が活発になり、アフリカは、二次産品の分野の成長が期待できる。(55)

第3問

設問A

こちらも頻出度の高い人口の問題。何度も目にしたことある人も多いはず。

解き方は慣れていると思うが、割と難易度は高い。

(1)

オーソドックスな問題。特徴的なものから考えて、あとは消去法で埋めるのが良いだろう。

まず、1985~90年の時にCが異常に高いことから、首都圏の巨大化が予想され、埼玉県と考えることができる(もともと人口の多い東京都はそれほど高い人口増加率にならない)。

次に、Bは1990~95年の間には増加率が0%を切っているところが特徴的である。

これは、街の老朽化や地価の高騰により、人口が減ったと考えられる東京都である。

残りのAとDが福岡県と沖縄県になるのだが、動き方としては非常に似ているので、どちらの方が増加率が高いかを考えるべきである。

沖縄は若い人が多く、自然増加率が高いが、福岡県では自然増加率は低く、社会増加率で人口増加率を上げているので、沖縄県の方が全体的な人口増加率は高いと考えられる。よって、Aが沖縄県、Dが福岡県と考えることができる。

解答:A—沖縄県 B—東京都 C—埼玉県 D—福岡県

(2)

二つ以上用いて、と書いてあるので、必ず分からなくても二つは使うようにする。

実際、語句は使えば使うほど書きやすくなるので、ヒントとしてどんどん使っていこう。

まず、山梨県と和歌山県に共通するポイントとしては、ぶどう・みかんから連想できる通り「農村」、や人口減少一般的に見て「過疎化」が考えられる。

他にも、山がちな地形のため、「移動」が難しく、近くの大きな(=工業化している)都市に引っ越す、ということを取り入れても良いだろう。

解答:山梨県と和歌山県は農村が多く、若者が他の工業化した地域に移動してしまうため、高齢化が進み、過疎化が著しいため。(55)

(3)

まず、①の理由を考える。三大都市圏への距離が近い県は、ベッドタウンとしての機能を持つ他、工業製品・農業製品共に都市に供給する地域となりうる(需要が大きい!)ので、働きに来る人が多い。

一方で遠い地域では過疎化が進み、さらに仕事が減る。

②の理由としては、高速交通などが発達しており、移動手段が楽な場所は人が来やすく、人口減少率が比較的小さくなると考えることができる。

解答:①には、都市圏への距離が近い県はベッドタウンとして機能する他、首都圏への製品供給地となること、②には、高速交通の発達度合い等、交通の便に差があるということが挙げられる。(84)

設問B

(1)

一行しか書くスペースがないので、見てわかることをシンプルに述べるだけで良いと思われる。

鹿児島—水が取れる山麓から平らな地域に拡大した。(17)

広島—山間部から、山沿いや海の端まで拡大した。(18)

金沢—扇状地からだんだんと日本海側に近づいた。(19)

(2)

都市域の拡大によって何が変わったかというと、どちらも山・海ともに近づいたということが挙げられる。

まず、山に近づくと、豪雨により土砂崩れなどの災害に遭うリスクが高まり、次に海に近づくと、台風による高潮のリスクが増す。

解答:山間部から、山・海へと近づいたため、山沿いでは豪雨による土砂崩れ、海沿いでは台風による高潮のリスクが増える。(54)

設問C

暗記問題ではないが、論理的に考えれば答えをかけるので、焦らず素直に書けば大丈夫。

(1)

「大都市の土地利用と生活圏との関係」について書くという問題。

まず、中心=中心業務地区に行けば行くほど地価が上がり、離れるほど下がる。

都心の駅近くは地価が高すぎるので、少し離れたところの駅近くの方が移動には向いている。

よって、中心の近くは、仕事場やおしゃれなデパートはあるものの、実際住んでいる人は少なく、生鮮食品などが置いてあるスーパーなどはほとんどない。

解答:大都市の中心業務地区は、地価が非常に高く、実際に住んでいる人は少ない。人は、生鮮食品などが手に入り、少し地価が安い郊外に住み、そこから仕事やデパートへの買い物などに中心に行く。(88)

(2)

最近「シャッター商店街」という言葉を耳にしないだろうか。かつて栄えていた商店街が撤退し、シャッターが常に閉じているということである。それを思い浮かべて書けると良いだろう。

解答:かつて主な消費者であった都心部に住んでいる人が高齢化し、購買力が低下したが、地価は高く、商店が撤退したため。(54)

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