東大の理科は4科目から2科目を選ぶ形式だが、化学はもっとも多くの人が受験する科目である。

しかし例年、東大の化学は分量も多く、決して楽な科目ではない

その原因は、分量の多い理科2科目を合計150分で解かねばならない、という点にある。

そのため受験生は自分が受けるもう1つの科目と相談しながら、問題の難易度を見極め、時間配分を決めて効率よく問題を解いていくことが必要である。

ここでは、2018年度の東大化学の予備校2社(河合・駿台)の解答速報を比較し、効率よく問題を解いていくポイントを解説のまとめとして述べていく。

この記事を読んで2018年度の東大化学についておさえていこう。

全体の総評

まず設問の形式としては、昨年度に引き続き、第1問が有機化学、第2問が理論・無機化学、第3問が理論化学となった。(2016年度まではずっと理論→無機・理論→有機の順であった)

また、第1問と第2問では東大化学ではおなじみの、大問内でⅠとⅡに問題が分かれる、ということがなく問題が1つにまとまっていた

また、問題の導入文が簡潔にまとまっていたので、とっつきやすかったように思われる。

全設問数としては29題となり、例年より(35題前後)は少なかった。

一方難易度としては例年よりはまだ簡単ではあるが、昨年の簡単なセットに比べると、相対的に難易度はやや難化したといえる。

以下に、各大問の出題分野と難易度を記す。

問題

小問

出題分野

難易度

1

有機化学(アミノ酸)

標準

2

無機・理論化学(金属化合物)

やや易

3

理論化学(電離平衡)

やや難

理論化学(気体の反応)

標準

第1問 有機化学(難易度:標準)

今年の有機化学は、アミノ酸が脱水縮合してできるジケトピペラジンという化合物が登場するが、メインはアミノ酸の側鎖の構造を各実験の結果から推定するというものであった。

側鎖や分子全体の構造式を、様々な実験の結果から類推する、という問題は東大化学では頻出である。

しかし、今回は側鎖の候補がはじめから与えられており、また実験結果として与え有られた条件も教科書レベルの簡単なものが見られた。

そのため、実験結果で示された性質から側鎖の特徴的な構造にあたりをつけることが容易であるものが多く、比較的取り組みやすかったといえる

ただし、問題の後半では、複雑な構造式を書かせる問題もあり、そのあたりを限られた時間ですべて処理するのは少し難しいと思われるので難易度は標準とした。

有機化学は、学校の授業の進度によっては、問題演習を積むことが難しいという人もいるかもしれない。

とはいえ、このタイプの問題は演習などを繰り返し行うことで、得点が見込める分野である。

ぜひとも東大を目指す理系受験生は、有機化学の対策に時間をしっかりとるべきである。

第2問 理論・無機化学(難易度:やや易)

第2問では2価、3価の陽イオンの金属酸化物に関する問いであったが、メインとして出題されたのは基本的なアルミニウムの性質についてであった。

問題のア、オ、カ、クで聞かれているような反応式、イオン化傾向についての問題では、教科書レベルの知識が整理されているかが問われた。

また、イ、ウ、キのような結晶格子の原子間距離に関する問いや、錯イオンの幾何異性体についての問いは、演習をやっているうちに類題に触れておくことができたかが差につながったと思われる。

(ちなみに金属イオンと錯体の構造の関係は、一応暗記しておくべきと思われる)

従って分量としては9題あるものの、時間のかかる計算問題は2問だけであり、基本的な反応式、各金属の性質をおさえていれば比較的得点はしやすかったであろう。

難易度はやや易とした。

無機化学の分野は、覚える反応式、元素の性質がやや多くて煩雑だが、一度正確に覚えてしまえば、そのまま問題を解くことができるお得な分野である。

また例年この範囲では、計算が煩雑になるような問題が見受けられる。

化学で点を伸ばしたい受験生は、過去問などを解く際に、計算問題にもじっくり取り組んでみると、ほかの受験生に差をつけることができるようになるので頑張ってほしい。

第3問 理論化学

第3問の理論化学では大問が2つの問いに分かれるという形式が受け継がれている。

今年度はⅠでもⅡでも、簡単な条件下での溶解、反応にかかわる物質量を問う計算問題が多く見られた。

落ち着いて解くことができればそれなりに手が付けられるようになっているが、限られた試験時間内では解ける問題を取捨選択することが求められたであろう。

難易度はⅠはやや難、Ⅱは標準とした。

次に各問いについてもう少し見ていく。

Ⅰ.電離平衡(難易度:やや難)

電離平衡を題材にした問題では、溶液中に「どの物質」が「どの状態」(陽イオン、陰イオン、分子)で、どれだけ存在しているかを把握することが大切であるが、今回はまさしくその力が問われた。

その点では本問はかなり差がついた問題であると言えよう。

状況としては、アンモニアがどれだけ「NH3」として存在し、どれだけ「NH4Cl」として存在しているのかをちゃんと把握できたかがカギとなった。

計算は、このアンモニアの状態が分かっていることが前提となっていたので、このあたりがつかめなかった受験生にとっては、このⅠは捨て問となってしまったかもしれない。

また、計算自体もやや煩雑であったので、ちゃんと計算までたどりついても、計算ミスなくこなしていくのは難しかっただろう。

しかし、この問題は電離平衡についてわかっているかを問うには非常に良い問題であると思う。

また、東大の理論化学としては計算量も標準レベルである。

これから東大を志望する人は、この問題にぜひ挑戦し、理解がなされているかを確かめるのに活用していただきたい。

Ⅱ. 気体の反応(難易度:標準)

Ⅱは気体の反応による物質量の変化を問う問題であった。

Ⅰに比べると、物質量の変化を追うのはかなり楽であるといえるので、こちらの方が取り組みやすかったであろう。

記述問題もル・シャトリエの原理に沿った基本的なものであったし、熱化学方程式の問題も、反応式をちゃんと立てれば、問題なく解けるレベルであった。

Ⅰをとれなかった人でもこちらで少しでも点数を稼いでおきたいところである。

この問題では、気体の反応の計算に体積、温度、圧力が絡んでこないので解きやすかったが、実際にはこれらが変化する問題も過去には問われている。

これから東大を目指す人は、この問題をはじめとして、気体の「物質量、体積、圧力、温度」の状態をしっかり押さえながら問題演習をしていくといいだろう。

各予備校の解答速報の比較

全体の総評

分量については、問題の導入文が短くなったことで河合塾はやや減少とし、駿台は問題数が増加したことでやや増加とした。

難易度については各予備校のいずれも、難易度は昨年度比で難化したと発表した。

各予備校とも「昨年度よりは難化したが、基本的な問題が多かった」、との見解は一致していたが、駿台は、第1問、第3問Ⅰで差がつきやすいと判断し、幅広い学習が要求される、とした。

第1問

各予備校が発表した難易度は河合も駿台も標準であった。

どちらの予備校とも、オの問題で、反応後に臭素がつく位置については、OHから見てオルト位を正解としつつ、「(高校の有機化学の範囲ではメタ位が誤答であることを示せないため、)複数解が認められるであろう」とコメントした。

第2問

各予備校が発表した難易度は、河合はやや易、駿台が標準であった。

河合では、アルミニウムの錯体が正八面体になることを既知としていない旨が見られたが、これは知識として知っておくべきと思われる。

第3問

各予備校が発表した難易度は、河合はⅠ,Ⅱともに標準、駿台はⅠがやや難、Ⅱがやや易であった。
Ⅱの問カでは、実在気体の種類が明示されていないが、予備校は2社ともに、最も一般的な気体の曲線を描いていた

本問は導入文でメタンの話をしているので、それを正答としてよいと考えられる。

まとめ

以上が2018年度の東大化学の解説である。

今年度の問題は昨年度より難化したものの、難易度はまだ例年よりは易しい

難化傾向がこれからも続くことは十分に考えられるので、例年通りの問題が解けるようなハイレベルな問題演習を積むことが必要となるだろう。

このことを踏まえて、これから受験を予定している人は、基本事項をしっかりとおさえつつ、問題の演習を繰り返し行ってもらいたい