東京大学の入試が今年も始まった。

国語は全東大受験生が最初に受験する科目だ。

そんな国語だからこそ、東大受験生はそこから多くを学び取る。

この教科の出来は、単に440点中の何点、というだけでなくその後の受験の精神状況をも左右する、重要なものであると言える。(もちろん、うまくいかなかったからといってもそこから切り替える方法はいくらでもあるが)

今年もこの国語という教科を解説していく。

また、受験生諸君が見ることの多いであろう各予備校の解答も比較して見ていく。

受験生各位が東大の過去問を学習する際の参考にしてほしい。

総評

全体として、今年の国語の出題はやや易化したと言えるだろう。

第一問の評論では、分量が減った分より精緻な読解が必要となった。

第二問の古文は文章自体はさほど難解ではなく、その分確実な読解、確実な解答が求められた。

第三問の漢文は文章自体は平易ではあったが、設問がやや難しかったと考えられる。

第四問の随筆は例年通りの難しさと言える。

第一問 (現代文・評論「歴史を哲学する-7日間の集中講義」難易度:やや易)

第一問は、東北大学名誉教授で科学哲学を専門とする作者が歴史を哲学的に解釈するという題材であった。

まず題材が少しわかりにくく、その理解を助けるための材料として挙げられていた例も特に文系の学生は理解に苦しんだかもしれない。

しかしそれらの語彙さえ理解できていれば、設問自体にそれほど難しいことはなく、問題としてはやや易しいものであったと言えるだろう。

問題数も、減少した去年と同数の5問であったため設問自体が多く解けない、といった学生は少なかったのではないか。

その分、一つ一つの問題を的確に解いていく力が求められていたと言えるだろう。

小問ごとに見ていくと、(一)は例年通りの言い換え問題だったが、語彙となる文章がやや難解なものであったためその部分が読み取れていなかった学生には厳しかった可能性がある。

とはいえ言い換え問題の演習をしっかりやっていれば最低限の言い換えができる問題だったと言える。

特に、こういった長い部分の言い換えでは、「対象部分をしっかり本文から引っ張ってくる」という点を意識したい。

(二)は(一)とは異なり、短い部分の言い換え問題であるという点に注意する必要がある。

(三)はその直前の部分をいかに言い換えるかが重要だ。

しかしその部分のみならず、文章の前の部分まで含めて「知覚」の対象、「思考」の対象であるということがどういうことなのかを整理しながらとく必要があっただろう。

(四)は例年通りの文字数制限付き要約であった。

『理論内在的』と『物語り内在的』を対比させることができていれば第一関門クリアと言えるだろう。

第一問は全体的に前年よりも分量も減少していたが、その分緻密な読みが求められていたとも言える。

第二問(古文・「太平記」難易度:やや易)

第二問は、軍記物語として名高い「太平記」からの出題であった。

頻出問題であったが、文章としてはそこまで難解でなかった(特に昨年度出題の源氏物語と比較すると顕著だ)だけに、いかに的確な文法把握、語彙知識を持って現代語訳を行えるか?というのが重要となっていた問題だ。

また、軍記物語にしては珍しく和歌を含んだ内容になっているのが特徴だ。

特に(二)、(四)の問題では和歌が深く絡んだ設問となっていただけに単なる文章の解釈だけでなく、和歌の解釈まで求められていることがわかる。

掛詞などの技巧(四)、また敬語の方向(一)(ア)などの細かい知識も求められており、軍記物語といえどもその読解に求められる技術が多岐に渡ることを示している。

とはいえ全体の文章、設問のレベルとしてはやや易しい問題であった、ということができるだろう。

第三問(漢文・「新刻臨川王介甫先生文集」難易度:標準)

第三問の漢文では例年通りに現代語訳の設問が多く出題された。

内容としては、前文にもある通り宋の王安石が皇帝に進言した際の文書であり、漢文としては比較的平易な文章と言えるだろう。

(b)尊爵の意味については、パッと見だとしっかり意味をつかむことが難しいかもしれないが冷静に漢字の意味を一つずつ考えることが重要だ。

また、(二)(四)では、単純に現代語訳を行うだけに留まらず、「誰が」「どうする」かを明確にするよう設問文で求められている。

このことからもわかるように、漢文の読解においては「主語・述語の認識」が非常に重要だ。

なんとなく読むのではなく、常日頃の文章からこの2つの要素を意識して読めていれば非常に楽にこれらの問題に取り組めたはずだ。

全体の難易度としては、現代語訳する部分の長さなども考慮して標準レベル程度だろうか。

第四問(随筆「緑の色鉛筆」難易度:やや難)

第四問は、哲学者としての顔も併せ持つ随筆家・串田孫一による随筆であった。

文章は動物学から始まり、人間へと派生していくという形を取っている。

文章としては難解だが、東大入試の第四問という枠組みで見れば例年通りの難しさであると言えるだろう。

設問に対するアプローチには2種類のものがあり、「選択範囲言い換え型」と「近接箇所要約型」のどちらかを適宜選んで取捨選択することが重要だ。

各予備校模範解答の比較

ここまで、各大問における難易度を見てきた。

しかし問題をただ見るだけでは意味がない。

問題から学習していく上では、その問題に対して、どのようなアプローチが正しいかを考え、正しい解答の方向に導くことが重要だ。

ここからは、これらの問題への解答について、受験生が最もよく目にするであろう各予備校の解答を比較してみる。

これを活用して、何が正しい理解なのかを考え、問題への理解n繋げていってほしい。

第一問

各予備校の解答でも、特に差がつきやすいのは評論だ。

まずはその評論の解答について、その差を見ていこう。

(1)については、それほど大きな違いはなかった。

しかし、限定のニュアンスを文面に含んでいることから、東進のような解答だと減点される恐れがあるだろう。

河合塾や駿台のように、限定のニュアンスをしっかり解答に含めておくのがベターだろう。

(2)については、「理論的虚構」についての説明と「まったく含まれていない」という部分の解釈がやや異なる。

そのように考えると、河合塾の解答はやや簡単すぎるだろうか。

また駿台の文も、やや恣意的という言葉でぼかされており、明瞭ではないといった印象を受ける。

(3)は各予備校の解答の差がはっきり表れた設問で、特に東進の解答は文中の用語である「理論的存在」をそのままカッコ付けで使っていることから、十分な解釈ができているとは言えないように感じる。

その後は人によって意見が別れるところではあると思うが、「知覚」をワードとして出しているのであれば「思考」も文中に出した方が二項対立の形が伝わりやすいだろう。

(4)についても同様に、東進は「物語り」の説明を省略しており、河合や駿台のようにしっかり文中に盛り込むべきではないかと考える。

第二問

第二問は違いのある点だけを解説していく。

第二問(一)(イ)については、東進の「あれこれと」は微妙かもしれない。

駿台・河合のように、和歌に対して、和歌以外の部分という意味の「言葉」と捉えるのが自然だろう。

細かいところだが(エ)の河合の解答、「たより」を「機会」とは捉えないのではないだろうか。

(四)、「つま」という言葉は「夫」「妻」どちらの意味でも解釈できる。

第三問

第三問については、大きな差はなかった。

一点、(c)については「与えない」ということをはっきり書いておいた方がいいだろう。

解答に大きな差が出ないということは、基本的な知識さえしっかり分かっていれば確実に解けるということであるということは踏まえておこう。

第四問

この設問は、主に河合の解答がやや甘いのではないかという印象を受けた。

(一)については、東進駿台のように「大人」「子供」の二項対立を明確に捉えた方が解答としてはわかりやすい。

(二)も同様のことが言え、河合の解答はあまり的確な描写とは言えない。

(三)、(四)も不要なワードが散見される。

「愚かなこと」、「暗黙のうち」という部分、不要なように思われ、河合以外の他二校のものを参考にした方が良いであろう。

まとめ

以上、2018年度東大国語(文系)試験を速報で解説した。その他の科目についても、随時掲載する予定である。

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