東大の物理は、その問題の難易度もさることながら、理科2科目で150分というきわめてシビアな試験時間が特徴的な試験である。

理科2科目で合わせて6題の大問が出題されるので、それぞれの問題で聞かれていることを正しく読み取り、それを正確にかつ素早く解いていかなければならない

もし時間配分を間違えて難しい問題に時間をかけすぎてしまうと、後ろにあった簡単な問題に手をつけられず、得点を伸ばせない、という残念な結果に終わってしまうことも考えられる。

しかしながら、難易度も高いため、落ち着いて取り組み、物理現象を正確に記述できる力がなければ、高い得点を望むことができないのもまた事実である。

 

ここでは、2017年度の東大物理について、予備校3社(河合・駿台・東進)の解答速報を比較し、問題を素早くかつ正確に解いていくためのポイントについて紹介していく。

この記事を読んで2017年度の東大物理についておさえていこう

全体の総評

2017年度の物理は、2016年度に比べ小問数が減り、1つの問題に落ち着いて取り組みやすくなった。

また設問自体の難易度も高すぎるものはなく、基本から標準レベルの問題が多く、全体としてはやや易化した

設問の種類としては、式を記述させて定量的分析について問う問題と、正しい物理現象のふるまいを予測し、グラフの概形について考えるという、定性的分析について問う問題の両方が出題された。

 

以下に、各大問の出題分野と難易度をまとめた。

問題 分野 難易度
第1問 力学

・単振動

・摩擦力

やや易
第2問 電磁気

・一様磁場中を運動する導体棒に働く誘導起電力

・(力学(単振動)との融合問題あり)

やや易~標準
第3問 熱力学

・可動壁に囲まれた内部の気体の状態変化

標準

第1問(分野:力学(単振動・摩擦力) 難易度:やや易)

第1問は例年通り、力学からの出題であった。

積み木を1つ、または複数用意して力学の系をなしたときのふるまいを答えさせる問題だった。

大問は、1つの積み木にばねを取り付けて鉛直方向に単振動させる場合(Ⅰ)、2つの積み木をひもでつなぎ、滑車を通して斜面において滑らせた場合(Ⅱ)、積み重ねた積み木の山から下の積み木を引き抜く場合(Ⅲ)の3つの小問に分かれていた。

 

Iは単振動に関する基本問題である。

(1)、(2)ともに力のベクトルを図示し、運動方程式を立てれば、おのずと答えは出てくる。

東大の物理ではこの問題に限らず、各大問の最初の問題は基本的な、点を取れる問題となっているので、必ず手を付けて、点を取ろう。

 

Ⅱも単振動の標準的な問題である。

問題の見かけ上は、摩擦のある面での等加速度運動に見えるが、この問題では動摩擦力が動いた距離に比例することに注意が必要だ。

この問題も運動方程式を立てれば、単振動の式であることが分かるので、それを踏まえて解答すれば問題ない。

単振動の周期や振幅の式についても聞かれているので、このあたりの基本をしっかり押さえてあった人は着実に点を取れる問いであった

 

Ⅲは摩擦力に関する問題である。

問題の図がやや複雑であったため、動摩擦力を導くのに必要な、垂直抗力についてしっかりと把握できたかがポイントとなる。

垂直抗力は上からも下からもかかる、ということに注意し、正しく垂直抗力が計算できれば、その後の計算は問題ない

このあたりの問いまで来ると、取り組んだら時間が足りなくなると予想して、飛ばして手を付けなかった受験生もいるだろう。

その点においてやや差のつく問題となった。

 

第1問は、どの問いも基本的なことしか聞かれていないので、落ち着いて取り組めば点は取りやすかったといえる。

よって難易度はやや易とした。

第2問(分野:電磁気(運動する導体棒にかかる誘導起電力) 難易度:やや易〜標準)

第2問も例年通り、電磁気からの出題となった。

とくに、2017年度に出題された「一様磁場中の導体棒にかかる誘導起電力」については、過去の東大入試でも頻繁に取り上げられているため、過去問対策をしっかりと行ってきた受験生には取り組みやすい分野の問題だったといえる。

 

大問は、電源につながずに導体棒を動かした場合(Ⅰ)、直流電源につないで導体棒を動かした場合(Ⅱ)、交流電源につないで導体棒を動かした場合(Ⅲ)の3つに分かれていた。

ここから各問いを見ていこう。

 

Ⅰは基本的な誘導起電力とそれによって生じる力についての問題である。

導体棒に働く誘導起電力がvBLで表されることが理解できていれば、問題なく解ける問いであった。

(3)については、2R ではなく、無限大に抵抗を大きくした場合を考えてみれば、導体棒に電流が流れないので、磁場から受ける力はなくなり、振幅は減衰しない。

このことから、抵抗を大きくすれば振幅は減衰しにくくなる、と考えてみると定性的にも理解できるだろう。

 

Ⅱも直流電源による電圧は加わったものの、力をしっかり図示できれば、解ける問題であった。

(2)のブランコの微小角振動については、単振り子とのアナロジーが思いつくかがカギとなった。

(3)のグラフの選択は、誘導起電力によってジュール熱が発生し、運動エネルギーは徐々に散逸していくこと、最終的には元のつり合いの位置に戻ることがおさえてあれば迷わない。

このようなグラフを選択する問は、式だけを見ても解けないことが多いので、現象を直感的に考察してみることが解答の近道となる。

特に最後の状態と、振る舞いが増大するのか減衰するのかを中心におさえれば、答えが出る場合が多い

 

Ⅲは交流電源に接続したものの、インダクタンスなどの、交流回路に特有の現象は考えないのでⅡと同様に考えてよい

周期的に変化する電圧さえおさえられれば、しっかりと得点できる問題であった。

とはいうものの、ここまでで時間をとった受験生にとっては、飛ばさざるを得ない問いであるし、交流までおさえきれていない

受験生もいたと思われるのでこれも差のつく問題になった。

 

第2問は電磁気の中では比較的なじみのある分野を扱った。

基本がおさえてあれば取り組みやすかったので、難易度はやや易~標準としておく。

電磁気は、受験生の中には習って間もない、という人もいるかもしれないが、毎年必ず出る分野なのできちんと学習、対策をして、試験に臨もう

第3問(分野:熱力学(可動壁に囲まれた気体の状態変化) 難易度:標準)

第3問は、今年は熱力学からの出題であった。

第3問はおもに波動(昨年出題)と熱力学のどちらかが出題される。

毎年どちらも出る可能性があるので、しっかりと勉強しておこう。

また、3年前から新課程になり原子物理についても学習指導要領に組み込まれた。

それについても、今後出る可能性は0とは言えないので余裕のある人は勉強しておくことをお勧めしたい

 

今回の大問は、気体の加熱などによって状態が変化する場面で設問が区切られ、Ⅰ~Ⅳに分かれた。

熱力学の問いで重要なのは、加熱や、ストッパーの取り外しなどの操作で何が変わったのかを逐次把握して、追っていく能力である。

Ⅰの問いを見ればわかるが、この分野の問題は、記号がとにかく多い

見た目に惑わされず、状態方程式や内部エネルギーの式を適用して問題に答えていこう。

 

Ⅰはまず、気体を加熱して気体の温度、体積、圧力を大きくした。

圧力についてはつり合いの式を立てれば問題なく解けるし、仕事量を求めれば、熱力学第一法則により吸収した熱量が求まる。

式は複雑そうに見えるが、1つ1つ式にあてはめていけば解ける問題だ。

 

Ⅱは断熱自由膨張であることに気づけば、温度は不変であることが分かる。

 

Ⅲはピストンが動かない等積変化であるので、内部エネルギーの変化量が吸収した熱量に等しくなる。

 

Ⅳは内部エネルギー変化を丁寧に追っていけば、解くことができるが、ここまで解けた受験生は少ないだろう。

ここまでになるべくミスなく計算をこなして点を重ねていくのが良い。

 

今回の熱力学の問題は過去に東大で出題された問題と似た典型的な問題だったといえる、よって難易度は標準だ。

熱力学の分野は範囲も広くないので、対策は、時間をとって行えば比較的しやすい分野といえる。

問題集などで演習を積んで、本番で点を取っていこう。

予備校の解答速報の比較

評価として共通していたのは、全体として分量(特に計算量)が昨年度に比べ、減少し、取り組みやすくなったということである。

評価の分かれ目となったのは、第1問のⅢで、問題の目新しさから、問題の背景をつかむことが難しいと評価するところが東進でみられた。

それ以外の問いは取りやすいものが多いということに関しては各予備校で一致していた

第1問

全体の難易度は河合がやや易駿台が標準東進はⅠ,Ⅱが易、Ⅲはやや難としていた。

Ⅰ,Ⅱは確実に点を取るべき、というのが共通見解として見られたので、やはり落としたくはないところだ。

Ⅲについては時間に余裕のある人が落ち着いて取り組めばとれたと思われるが、やはり見慣れない設定となっているので難しかった、というのが各予備校の速報で見られた。

第2問

全体の難易度は河合、東進がやや易駿台は標準としていた。

導体棒が磁場から受ける力について定量的かつ定性的に議論できる力が要求された

とするのが河合、

交流電源につないだときの問いについてのコメントについて駿台が多く記述していた

出題の形式としては、標準であるというのが各予備校の共通見解として見られた。

第3問

全体の難易度は河合と駿台が標準東進がやや易だった。

出題の形式が例年の東大入試と同じだったということで、取り組みやすく、東進はやや易としたと思われる。

気体の状態変化について、しっかり追っていくことができれば、得点がとりやすいセットになっていた、というのは各予備校の共通認識として見られた。

まとめ

以上が2017年度東大入試物理のポイントのまとめである。

この記事から、今年の物理はやや易化し、取り組みやすかったことが分かったと思う。

そのため物理の学習をしっかりしてきた受験生は高得点が期待できる内容だった。

このような試験の時は確実に解ける簡単な問題を先に解いておく、ということが非常に重要である。

これから学習を進める人たちにはぜひこうした実践的な演習も積んでもらいたい。