東大数学は、大学入試の数学の中でも非常に難しく、特に理系は入試数学の最難関だといわれている。
しかし、その東大数学は、年によっても、また問題によっても難易度はバラバラである。
では、2017年度の数学はどうなのだろうか?
また、予備校3社が解答速報を発表するが、それらの解答は比較したらどうなるのだろうか?
ここでは、現役東大生による2017年度の東大数学(理系)の解答速報の比較とここでしかわからない東大生による解説のまとめを発表する。
この記事を読めば、2017年度東大数学の全貌がわかる。
全体の総評
今年の東大数学は文系でもそうであったが明らかに昨年度より易化した。
2016年度も2015年度に比べて易化しているとされているが、今年は2016年度と比べるとあきらかに易化しており、だんだん易化していく傾向にあるといっても過言ではない。
以下は、各問題の分野と難易度をまとめた表だ。
問題 | 分野 | 難易度 |
第一問 | 三角関数, 二次関数 | やや易 |
第二問 | 確率 | 標準 |
第三問 | 複素数平面 | 標準 |
第四問 | 数列, 整数 | やや易 |
第五問 | 放物線 | やや易 |
第六問 | 空間図形, 求積 | やや難 |
これをみると少なくとも第一問、第四問、第五問は確実に完答して欲しい。
他にも第二問の(1)であったりやや難とされてはいるものの第六問の(1)はまだ普通に解けるレベルなのでここの枝問もぜ得点して欲しいところだ。
という意味で70点以上を得点する人もかなりの数いるのではないかと推測される。
半分以上は得点していないと合格は厳しいといえよう。
理系であるならば、しっかりと数学を勉強して、簡単な問題、標準的な問題を計算ミスなく確実に解けるようにしておくことが重要なのだ。
また、今年は昨年と続けて複素数平面の問題が出題された。
昨年はやや簡単目な問題であったのに対し、今年は東大の標準的な複素数平面の問題に戻った。
もう新課程に入って3年が経つということを考えると、新課程の分野も他分野と同様に学習しておくことが必要だ。
決して手の抜くことのないようにしておこう。
第一問(分野:三角関数, 二次関数 難易度:やや易)
この問題の難易度はやや易だ。
理系であれば、是非ともこの問題は完答するべきだ。
(1)は三角関数に2倍角、3倍角の公式を使えば一瞬である。
もし、公式を忘れたとしても、cosの加法定理を用いれば容易に導くことができる。
ここまでは、非常に簡単だ。
(2)では、(1)でg(θ)をxの関数に置換したことをヒントに、g(θ)をxの関数として見れると簡単になる。
この視点でしっかり見れるかがこの問題のポイントだ。
0<π<1という範囲は-1<x(=cosθ)<1という変換をしっかりやることも重要だ。
この程度の問題は理系であれば、難なく答えを導いて欲しいところだ。
このような簡単な問題で確実に点数を稼げるようにしておこう。
第二問(分野:確率 難易度:標準)
これは、東大の標準的な確率の問題である。
文系の数学でも第三問の(2)としてこの問題の(1)が出題されている。
(1)は理系にとっては普通の確率の問題であるので、これは難なく解答して欲しい問題だ。
(2)も(1)とさほど難易度は変わらない。
確率はかなり問題演習を積まないとなかなか入試レベルまで持っていくことが難しい。
演習が不十分であった受験生はこの問題でも難しく感じてしまったのではないだろうか?
解き方や考え方は色々あるので、のちに様々な方法で解き直してみると良い。
第三問(分野:複素数平面 難易度:標準)
この第三問は新課程になって復活した複素数平面だ。
去年も複素数平面の問題は出題されているが、難易度は一段上がって、標準レベルの複素数平面の問題になった。
この複素数平面の問題では、複素数平面上の図形を複素数の方程式の直したり、複素数の方程式から複素数平面上でその図形がどういう図形を描くのか読み解く必要がある。
複素数平面上で、垂直二等分線や円はどのような方程式で表されるのかしっかり理解できていたであろうか?
これさえわかっていれば、(1)も(2)もさほど難なく解けたことだ。
いくら新課程の分野であるからといって、もう新課程になってから3年経つので普通に出題されるものだと思った方がいい。
複素数平面は大学に行ってから物理学で多用されるので、大学側も是非出題しておきたい分野なのだ。
是非ともしっかりと演習を積んでおこう!
第四問(分野:整数, 数列 難易度:やや易)
この問題は、難易度はやや易で、文系の数学でも全く同じ問題が第四問として出題されている。
文系でも(3)までは難なくこなせるだろう。
まず、(1)は計算するだけなので、誰でも慎重に計算すれば解くことができる。
その次だが、次も式変形していけば
a1*an=(an+1)-(an-1)
であることがわかる。
ここで(3)は、a1, a2の値が(1)で出ていて、(2)でan+1がanとan-1で表されていることから、数学的帰納法で証明できると確信を持たなければならない。
また、(3)のように、全ての自然数に対して何かを証明するときは、絶対に数学的帰納法を疑うべきである。
ほとんどの場合数学的帰納法で示すことができるのだ。
さらに(4)は少し頭を捻らないといけないが、理系で数学があまりにも苦手とかではない限り、難なくクリアーして欲しい問題だ。
ここでのポイントは(3)の証明で導出したanの漸化式からan+1とanの最大公約数は、anとan-1の最大公約数と同じであるということに気づくことである。
理系の受験生であればここは気づいて欲しいところだ。
これを帰納的に繰り返していくと結局求める答えは、a1とa2の最大公約数であることがわかる。
少し頭を使うが他の問題や他の年度の東大の問題と比べるとかなり簡単である。
さらにこの問題は計算ミスもしにくいので是非完答しておきたい問題だ。
また、この問題は一般項が無理数を含んでいても、結果的に数列が整数列になるという数列の良い例だ。
その代表的な数列がフィボナッチ数列とも言えるが、フィボナッチ数列は2015年度(筆者の受験年度)にも出題されており、少し問題のテーマとしては、数学的帰納法を用いる部分など似ている。
余談ではあるが、このようが数列は、一般項は時によって数列の性質をうまく表していないことが多いということである。
このような数列は何度も東大で繰り返し出題されているので要チェックだ。
第五問(分野:放物線 難易度:標準)
この問題は標準的な放物線の共通接線に関する問題だ。
最低限(1)は解けて欲しい問題である。
(1)に関しては、共通接線の定義から、両方の放物線に直線の方程式を引いた方程式の(判別式)=0を適用することで、bとkを簡単にaで表すことができる。
しっかりと得点したい問題だ。
問題は(2)からでa≠-1という条件は(1)では付いていなことに注目しなければならない。
(1)の式変形の途中で(a+1)を割った式変形が存在するが、(2)においてはk=3/8を代入すべきなのは(a+1)を代入する前の式である。
これを忘れてしまうと共通接戦は2つしかないぞということになってしまう。
そう、a=-1の共通接線はkの値によらず常に存在するのである。
これを数え忘れてしまわないかどうかがこの問題のポイントである。
数学の条件をしっかりと見極られめるかどうかが試された問題であるが、理系でしっかり数学を勉強した人であれば、しっかりと得点して欲しい問題である。
第六問(分野:空間図形, 求積 難易度:やや難)
この問題は(2)がかなりの空間認知能力を必要とするので難易度はやや難としている。
この問題では、(1)に関しては冷静に条件式を並べて変形していけば、大丈夫だ。
OP=1, PQ=1という条件をP(x, y, z)などと座標を置いて式変形してみると
x^2+y^2=3/4, z=1/2
という式が出てくる。
これは円を描くということがわかるだろう。
もちろん直感的にz=1/2上での円を描くということを判断することも十分可能である。
ここで難しいのが(2)であるが、Qがx=0上を動くときはその面を自由に動けるわけではないということに気づくことが重要だ。
OQ=1であるから、y^2+z^2=1上の円を描くことがわかる。
これは(1)で求めた円がOを頂点として作る円錐面をx軸を中心に回転させたものだということをここで気づく。
これに気付ければあとは非常に簡単である。
しかし、このことに気づくにはかなりの空間認知能力が必要だ。
他のやり方も存在するが、少し計算が煩雑になりやすくなってしまう。
これに気づくのが一番簡単に計算できるやり方であるがその気づきが難しい。
このような問題は(1)だけ解ければ十分である。
他にも簡単な問題がたくさん存在するので、この問題でずっと悩み続けるというよりは、他の問題を確実に得点しにいくことが重要だ。
各予備校の解答について
ここまで、2017年度東大数学(理系)の大問別解説をしてきた。
毎年、河合、東進、駿台の各予備校が解答速報を発表しているが、それらは問題によっては解法がかなり異なる場合もある。
そこで、ここでは各予備校の解答速報を比べるとどうなのか大問別に徹底解説していく。
違う解法の研究をすることは数学力アップにもつながる。
各予備校のどこがどう違い、解法としてそれぞれどうなのか細かく把握していこう。
第一問について
予備校3社とも解法は全く変わらない。
しかし、河合だけは少し(2)の解答が丁寧だと言える。
なぜかというと河合の(2)の解答は、東進と駿台が、g(θ)に最小値が存在する- (a + 2)/4の範囲を述べただけにとどまったのに対して、g(θ)に最小値が存在しないときg(θ)が – 1 < x < 1で単調であるからと理由をはっきり述べているからだ。
ここが減点対象になるかは不明であるが、極力丁寧な解答を心がけたほうが減点のリスクは避けられる。
難易度については、河合と駿台がやや易化で、東進が標準としている。
あまり頭を使わずにサクサクと計算できるという点から、我々はこの問題の難易度を「やや易」とした。
第二問について
この確率の問題は予備校ごとに、かなり千差万別な解答が出ているという印象を受ける。
しかし、この解答は本質的にはどこもあまり変わらない。
事象の捉え方をどう捉えているかという違いだけである。
一番思いつきやすいやり方としては、それぞれの移動をa, b, c, d回と定めて、(1)であれば
a + b + c + d = 6
a – c = b – d
(2)であれば、
a + b + c + d = 6
a = c, b = d
という条件で求めていくやり方である。
河合の解答その1、東進の(2)の解答1、駿台の別解がこれに当たる。
また、もう一つのやり方としては点P(x, y)に対して
x – y
x + y
の二つの値に注目していくやり方だ。
これは文系の第三問を参照するとわかると思うが、文系の問題では設定が同じでもう一つ簡単な問題が最初について(2)として理系の第二問の(1)が出題されている。
文系の誘導問題があればこの解法にたどり着きやすかっただろう。
主に以上の2つのやり方が考えられるが、最初の解法の方が思いつきやすいが、2つ目の解法の方が簡潔で綺麗なやり方だ。
難易度については、3社とも揃って標準としている。
我々も難易度を「標準」とし、標準的な東大の確率の問題であった。
第三問について
(1)に関してはすべての予備校が同じ解き方をしている。
しかし、(2)は東進だけ少し異なる解き方をしている。
河合と駿台は、
|z + 1| = |z|
|z| <= 1
の二つの条件を変換:w = 1/zを用いてwの条件にして求めている。
一方東進は
|z| <= 1
という条件を偏角に対する条件
2π/3 <= arg z <= 4π/3
という条件に変えて、これに対して変換:w = 1/zを適用している。
という違いが見られる。
本質的にはあまり大差がない解答だ。
難易度に関しては、河合と駿台が標準、東進がやや易としている。
東進は、簡潔に解けるという意味でやや易としているのだと思うが、これまでの過去問などを見てきた我々からすると、以前に複素数が出ていた頃の問題とあまり大差がない。
その上、去年の複素数の問題が簡単目でやや易としていたので今回はこの問題の難易度を「標準」とした。
第四問について
第四問については、3社とも解法が全く同じであると言える。
(1)の計算過程を示していない東進は少し丁寧さにかけると思うが点数が引かれるほどのミスかというとそうではないだろう。
(1)はそのままごり押して計算しても良いが、pと1/pが共益の複素数であることに着目してそれらの和積を求めるというやり方を用いると綺麗に計算できる。
この問題は(1)で最初の場合を考えさせ、(2)で任意の3項間の関係を求めさせて、それら二つから(3)で数学的帰納法という入試数学の鉄板ネタである。
難易度については、河合が標準、東進と駿台がやや難としている。
我々としては、このように難易度が予備校3社には高く評価はされているものの(3)までは受験数学の鉄板ネタであるという点を踏まえてここまではかなり簡単であるということが言えるので、難易度を「やや易」と評価した。
第五問について
第五問についても、予備校3社で解答の方針が大きく異なっているということはない。
この問題は、第一問のように、解き方がある程度決まっており、頭をあまり使わずに、計算するだけという問題なので、解法にもあまり大差が生まれない。
問題の解説でも述べたが、a ≠ -1の場合を(2)でしっかり考えられたかどうかがこの問題を完答する鍵だ。
難易度については、河合と駿台が標準、東進がやや易としている。
(2)のa ≠ -1の場合を気づくのが難しかったかもしれないが、方針が立てやすいという観点から我々は難易度を「やや易」とした。
第六問について
この解答は(1)も(2)も2通りの解法が存在する。
まず(1)だが、東進はOP = 1とPQ = 1という二つの条件から2つの球面の交線である円がPの通過範囲であるということを導いた。
しかし、河合と駿台はOとQが固定されている時点で直感的にPはz軸を中心に正三角形を回転させると円を描くことを直感的に導いている。
どのやり方でも手間はそこまで変わらない。
あとは、本質的にはθの範囲の求め方はは大差はない。
(2)に関してだがこれも主に2つのやり方が存在する。
駿台の1個目の解答と東進の解答はKはx 軸を中心とした回転体であることに着目したやり方だ。
体積の出し方は2社とも異なるが方針としては全く同じである。
二つ目の河合と駿台の2個目解答の方針は、x軸を中心とする回転体であるととらえたのちに、回転させる前にx = tなる側面で円錐を切り取って、回転させてから、x軸方向に積分すると行ったやり方を取っている。
我々の解説では主に最初のやり方を中心に解説したが、最初のやり方の方が計算量が少なく完結だといえよう。
余談ではあるが、円錐面を切り取ると二次曲線が現れる。
今回x軸に垂直な面で切り取ったときは、双曲線となった。
難易度については、3社揃ってやや難としている。
(1)は簡単なのだが、(2)が難しい。
通常体積の問題は難しく東大入試では捨て問扱いにされるものだ。
我々もこの問題を「やや難」としている。
まとめ
以上が、現役東大生による2017年度の東大数学(理系)の解答速報の比較とここでしかわからない東大生による解説のまとめである。
この記事を読んでわかった通り、今年の東大数学は全体的にかなり易化した。
よって、今年はかなり高得点が期待できる人が続出したといえよう。
このように、簡単な問題が出題される年こそ、確実に解ける問題を解いていくということがより重要になってくる。
また、新課程の分野も満遍なく学習しておくことも重要となるのだ。