東大数学は、大学入試の数学の中でも非常に難しいといわれている。
しかし、その東大数学は、年によっても、また問題によっても難易度はバラバラである。
では、2017年度の数学はどうなのだろうか?
また、予備校3社が解答速報を発表するが、それらの解答は比較したらどうなるのだろうか?
ここでは、現役東大生による2017年度の東大数学(文系)の解答速報の比較とここでしかわからない東大生による解説のまとめを発表する。
この記事を読めば、2017年度数学の全貌がわかる。
全体の総評
今年の文系数学は完全に易化した。
ほとんどの合格者が必ず2完以上していると予想される。
高校1年生でも解ける問題ですら複数存在するのだ。
以下今年の東大数学(文系)の問題の分野と難易度をまとめた表だ。
問題 | 分野 | 難易度 |
第一問 | 微積分 | やや易 |
第二問 | ベクトル | 標準 |
第三問 | 確率 | 標準 |
第四問 | 数列, 整数 | やや易 |
これを見ると、第一問と第四問はかなり簡単であったのだということがわかる。
少なくとも、第一問と第四問の(3)まで、第三問の(1)をしっかり解けていないと、合格は厳しくなる。
とてつもなく数学が得意な人でなくとも、しっかり勉強していた人であれば満点を取ることも可能である。
このように、東大数学の文系は文系だからといって全く勉強していないと、すぐにしっかり数学を勉強した受験生に差をつけられてしまう。
数学に関しては、文系受験者は侮らずしっかりと勉強しておくことをオススメする。
また、しっかりと数学を勉強してきた受験生であれば、ここではいかにミスなく多く得点をするかが重要だ。
第一問などの簡単な問題で計算ミスをしてしまうと、合格が大きく遠のいてしまう。
解法がいくらあっていても解答を間違えると大幅に点数を引かれてしまう。
このような本番の入試で正確に計算しきる力もつけておくことが重要だ。
第一問(分野:微積分 難易度:やや易)
この問題は、ただ条件の通り計算すれば良いだけの問題である。
普通に微分、積分を勉強していれば、必ず解くことができる。
なので、この問題の難易度をやや易とした。
まずすべきことなのは、放物線AとBがただ一つの共有点を持つという条件から、sをtで表すことだ。
これさえしてしまえば、面積PとQがtの関数で表せることがわかる。
その後、Q/Pがtの三次関数で表されることがわかる。
ここまでくると微分して最大値を求めるだけである。
一点だけ注意して欲しいところはt,sの範囲である。
ここを考えないと答えが出ない。
このような、計算だけで答えが出る問題は絶対得点しなければならない。
しかし、このような問題で一番怖いのが解法はあっているのに計算ミスをしてしまうことである。
計算ミスなく確実に得点できるように日頃から訓練しておくことが大切だ。
第二問(分野:ベクトル 難易度:標準)
これは、ベクトルで解くのが一番早い。
正六角形が出てきたらほとんどの場合、ベクトルを使うと簡単に解くことができる。
難易度的には、文系ということも考えると標準的な文系数学の問題だ。
まず第一ステップとしては正六角形の中心を原点Oにしておくことである。
そこからだが、一番難しいところは、変数を自分で設定して、→OPと→OPを既存のベクトルで表すところである。
それさえわかってしまえば、
→OR=1/3→OP+2/3→OP
に代入することで、既存のベクトルで→ORを表すことができる。
これができてしまえば、あとはRの描く図形をその式から読み解くだけだが、ベクトル方程式をよく理解していないとここが難しく感じたかもしれない。
しかし、これさえできてしまえば、あとは簡単に答えが出てしまう。
この問題はしっかりとベクトル、ベクトル方程式を理解しているかどうが試された。
しっかりと理解していれば、全く問題なく答えを出すことができる。
いくら、文系といえども、こういうところで点数の差が出てくるので、数学をしっかり勉強しておこう。
第三問(分野:確率 難易度:標準)
この問題は標準的な確率の問題だ。
文系であれば、絶対に(1)は解答して欲しい。
(2)は落としても仕方がないだろう。
(1)は1回の移動だけを考えれば良いので、かなり簡単だ。
文系の受験者の中には確率が出ただけで、苦手意識を持ってしまって全く解答できなかったという人もいる。
しかし、(1)は高校1年生でも解けるような問題なので、少し条件が複雑に書かれているかもしれないが、冷静に条件を同値変形していって欲しい。
(2)は少し複雑な確率である。
しかし、数学が得意な人であれば問題なく解答できたであろう。
この(2)は理系と同じ問題であるが、理系はこれが一番最初の問題であり、のちにまた問題が続いている。
理系であれば普通に解けて欲しい数学の問題である。
第四問(分野:数列, 整数 難易度:やや易)
この数列の問題は、文系の数学としてはやや易だ。
少なくとも、しっかり数学を勉強している人であれば、(3)までは簡単に解ける。
まず、(1)は計算するだけなので、誰でも慎重に計算すれば解くことができる。
その次だが、次も式変形していけば
a1*an=(an+1)-(an-1)
であることがわかる。
ここで(3)は、a1, a2の値が(1)で出ていて、(2)でan+1がanとan-1で表されていることから、数学的帰納法で証明できると確信を持たなければならない。
また、(3)のように、全ての自然数に対して何かを証明するときは、絶対に数学的帰納法を疑うべきである。
ほとんどの場合数学的帰納法で示すことができるのだ。
(4)については、(3)の証明で導いた、anの漸化式を用いてい、anとan+1の最大公約数がanとan-1の最大公約数と同じであるということを判断する必要がある。
ここがこの問題の難所だ。
これさえわかってしまえばあとは、結局答えはa1とa2の最大公約数、つまり4と18の最大公約数で、2である。
文系であれば、(3)までは解けて欲しいところである。
最低でも(2)まではただの計算なので、本番で焦るかもしれないが、冷静に(2)までは解答しなければならない。
また、この問題は一般項が無理数を含んでいても、結果的に数列が整数列になるという数列の良い例だ。
その代表的な数列がフィボナッチ数列とも言えるが、フィボナッチ数列は2015年度(筆者の受験年度)にも出題されており、少し問題のテーマとしては、数学的帰納法を用いる部分など似ている。
余談ではあるが、このようが数列は、一般項は時によって数列の性質をうまく表していないことが多いということである。
このような数列は何度も東大で繰り返し出題されているので要チェックだ。
各予備校の解答について
ここまで、各大問ごとの解説を書いてきた。
毎年、駿台、河合、東進の予備校3社が解答速報を行うが、この3社の解答は、解法が問題によっては違うことがある。
では、この2017年度の各予備校の解答速報はどうだったのだろうか?
ここでは、大問別に各予備校の2017年度東大文系数学の解答速報を比較していく。
違う解法を研究することは数学力のアップにもつながる!
違うところはどうして違うのか、どういうことを利用しているのかしっかり把握していこう。
第一問について
3社とも目立った違いは見られなかった。
本質的に全く同じ解法といえよう。
この問題は何も頭を捻らなければ、ほとんどの人がこの解法1択を思い浮かべること間違いない。
君たちはこの解法を問題を読んで瞬時に思い浮かべられただろうか?
これ以外の解法はほぼ存在しないくらい、基本的な解法である。
難易度については、河合と駿台は標準としているが、何も頭を使わなくて良いという視点を強調すれば、東進のやや易という評価は妥当である。
その部分に準じてこちらでは「やや易」という難易度をつけた。
第二問について
第二問の3社の予備校の解答は一見違うように見えるが、ベクトル方程式を用いて点Rの通過領域を求めているという点では、本質的に全く同じ解法といえよう。
3社ともどこが違うのかというと、規定ベクトルの設定の仕方だ。
通常ある領域を自由に通過する点のベクトル方程式は2つのパラメータと2つの規定ベクトルによって表される。
その設定の仕方はそれぞれ違うのだ。
設定の仕方は何通りも存在するのでここが違っても仕方がないといえよう。
個人的には、東進の正六角形の中心をOにおくという設定が対称性があり好きだ。
また、他に考えられる方法としては、本質的には同じと言えるが、座標平面上に正六角形を置いて方程式で通過領域を表すやり方があるが、個人的には少し面倒な感じがするので、ベクトル方程式を用いた方が解答が簡潔になる。
難易度については、予備校ごとにバラバラで、河合が標準、東進が易、駿台がやや難としている。
個人的には、解答を見れば簡単に思えるが、ベクトル方程式を使うということを思い浮かべるところが一つの壁であるということを踏まえて「標準」とした。
決して難しい問題ではないと思うのでそこは注意しておこう。
第三問について
第三問は、東進と河合、駿台の解法にはあまり大差が見られず、本質的に全く一緒て見ても問題ない。
3社の予備校は全員、点P(x, y)に対してy – xの値に注目している。
他にも確かに解法が存在するが、最初提示された4つの事象が、問題の確率を考える上では、2つの事象に落とすことができるという点で非常に簡潔で見やすい解法になっている。
駿台は、x – yに着目せずに、(2)を4つの事象から考える解法が別解として載せられているが、これはうまく(1)の誘導を活かし切れていないので、簡潔とは言いにくい。
しかしこれでも解けなくはない上、他の問題もかなり簡単で時間が足りないということはあまりないことが予想されるので、この解法でも全く問題ない。
難易度については、河合がやや易でそれ以外の東進と駿台が標準としている。
我々としては、x – yに着目するということができればかなり簡単になるが、それに着目せず解答する方法も存在し、それをやった受験生も多数いる可能性があることを考えて難易度を「標準」とした。
第四問について
第四問については、3社とも解法が全く同じであると言える。
(1)の計算過程を示していない東進は少し丁寧さにかけると思うが点数が引かれるほどのミスかというとそうではないだろう。
(1)はそのままごり押して計算しても良いが、pと1/pが共益の複素数であることに着目してそれらの和積を求めるというやり方を用いると綺麗に計算できる。
この問題は(1)で最初の場合を考えさせ、(2)で任意の3項間の関係を求めさせて、それら二つから(3)で数学的帰納法という入試数学の鉄板ネタである。
難易度については、河合が標準、東進と駿台がやや難としている。
我々としては、このように難易度が予備校3社には高く評価はされているものの(3)までは受験数学の鉄板ネタであるという点を踏まえてここまではかなり簡単であるということが言えるので、難易度を「やや易」と評価した。
まとめ
以上が現役東大生による2017年度の東大数学(文系)の解答速報の比較とここでしかわからない東大生による解説のまとめだ。
これを読んでわかった通り、今年の数学は非常に簡単であった。
このように簡単になればなるほど、しっかり勉強した人としていない人とで差がつきやすい。
文系受験生の中には数学をあまり勉強していなくて全然解けなかったという人もいるのではないだろうか?
また、しっかりと勉強してきた人はいかにミスなく答えを出すかが重要になってくる。
このように簡単な問題を正確に解ききれると、周りの受験生と大きく差をつけることができる。
文系といえども、しっかりと数学を勉強して、確実に本番で解くことが重要だ。