東大の数学は確かに日本の大学入試の数学の問題の中で最高峰の問題だ。
しかし、毎年の問題の難易度には差があり、その年度の問題を6問個別で見ても、簡単なものもあれば、難しいものもある。
では、2015年度の東大数学(理系)入試ではどうだったのだろうか?
ここでは、2015年度の東大数学(理系)の入試の全体的な総評と6問の個別の総評を行う。
全体としての総評
今年は全体的に問題の難易度は標準的だったと思われる。
2014年度や2016年度と比べると難しくなったといえるのだが、これが本来の東大数学の難易度である。
2014年度や2016年度が簡単だっただけだ。
以下は個別の問題ごとの難易度である。
問題 | 分野 | 難易度 |
第一問 | グラフの通過領域、存在範囲 | 易 |
第二問 | 確率 | やや難 |
第三問 | 微積分、極限 | 標準 |
第四問 | 数列、数学的帰納法 | 標準 |
第五問 | 整数 | 難 |
第六問 | 積分、極限 | やや難 |
このように、簡単または標準的な問題が例年通りの3問でそのほかはどれも得点するのに難しい問題ばかりだ。
確実にとれる問題が3問と難しい問題が3問という配分が東大数学の中では標準的と言われている。
つまり、今年の問題においては、この簡単または標準的な問題の1,3,4を確実に完答できたか、というのが東大数学で成功したかどうかの大きな境目で、もちろんこれは合否にもかかわってくることだ。
数学をしっかりと勉強するだけでなく、確実に完答するという力も合格には非常に重要なのだ。
逆に数学をしっかりと勉強していないと、どれも難しく見えてしまって全く手がでないだろう。
こんな感じでは、よっぽど他教科で挽回できないかぎり、残念ながら不合格の可能性が高まってしまう。
理系の東大志望者にとっては、数学は避けて通れない道だ。
しっかりと勉強しておこう。
第一問(分野:グラフの通過領域 難易度:易)
今年の問題のなかでは一番簡単な問題であろう。
この問題を読んだ瞬間にaについての実数としてあるaが存在する条件を同値変形していけばよいのだ、ということがわからなければならない。
これがパッと思い浮かばない人は勉強不足である。
この問題に全く手が出ない人で合格した人は非常に少ないであろう。
また、せっかく簡単な問題なのに計算ミスをして落としてしまった人が多かったみたいだ。
正しい答えを導き出すのも重要な能力のうちだ。
普段から養っておこう。
第二問(分野:確率 難易度:やや難)
これは、今年の数学の中では難しい方の問題だ。
このようにn回目などについて聞かれる場合はほとんど漸化式を立てて解くのが定石である。
しかし、この問題については漸化式を立てるまでが難しいのだ。
条件が多くどのように漸化式をたてたらよいのかわからなかったという人が多いのではないだろうか?
逆に立ててしまえばあとは簡単に解けてしまう。
取れる人がいても全くおかしくないが、それよりも優先すべき問題は他にありそうである。
第三問(分野:微積分、極限 難易度:易)
これは、非常に標準的な数学Ⅲの内容の問題である。
数学Ⅲの問題の演習をこなしているひとであれば、二つのグラフの差の関数について、微分して、その増減をみてあげればよいということがわかるだろう。
それさえできてしまえば、あとは素直に積分してゴリゴリ計算していくだけだ。
第一問でも述べたが、ここは絶対に計算ミスは避けたいところである。
特に、第三問では微分や積分といった計算が入るのでその分間違えやすい。
日ごろから微積分の計算力もつけておいてほしい。
第四問(分野:複素数平面と偏角 難易度:易)
これもまた、標準的な問題と位置づけられる問題である。
また、証明問題が多く、計算ミスもしにくいので、絶対とりたいといった問題の中でも特にとってほしい問題だ。
(1)を読んだとき数学帰納法を使うのだとひらめいてほしい。
「すべての自然数nについて」という記述はないが、漸化式の仕組み上帰納法で証明するのが一番効率的だということは、この手の問題に慣れている人はわかるはずだ。
(2)、は(1)で示した内容を式変形するだけで済むし、(3)についてこそ数学的帰納法と今まで証明したことを合わせれば証明できるはずだ。
何度も繰り返すがこれは絶対にとってほしい問題だ。
確実に完答しよう。
第五問(分野:整数問題 難易度:難)
この問題は非常に頭を使う問題だ。
東大数学の中では、難しいと分類されるだろう。
難しくは、あるものの逆にひらめいてしまえばパッと一瞬で解けてしまう。
このように、難しい整数問題については、ある程度のひらめきが重視される。
考え方については、2015Cmが初めて偶数となる最小のmなので、まずは、この数を組み合わせの公式の形にした時の分母と分子の2の因数の数を追っていくという発想が必要だ。
これに気付けた人は、なんとか答えを出せたのではないかと思う。
しかし、これは本当に解けなくてよい問題で、1,3,4が完璧な人でないと逆に手を出してはいけない。
第六問(分野:積分、極限 難易度:やや難)
この問題は難し目の問題である。
しかし、(1)はなんとか解けた人はいるのではないかと思う。
これも多少のひらめきがいるものの、積分と極限と不等式の証明はよく出題され、慣れている人ならば、(1)はささと解けたのではないだろうか?
(2)はそれのかなり応用バージョンなので正答率は少ないと見えるが解けないことはない。
しかし、第二問や第五問と同じく、解けなくてもよい問題で、先に1,3,4を優先させるべきであるのは確かだ。
まとめ
これが2015年度東大入試数学(理系)の入試総評である。
これで今年の問題は標準的だったことが分かっただろう。
今年は、1,3,4を完答できれば、もう充分である。
それに+αできるとかなり上位層に食い込んで入試全体を有利にすすめることができただろう。
このように、絶対完答できる問題は取りこぼさないように、数学をしっかり勉強し、尚且つ計算ミスがないように訓練しておこう。