東大の数学は確かに日本の大学入試の数学の問題の中で最高峰の問題だ。
しかし、毎年の問題の難易度には差があり、その年度の問題を4問個別で見ても、簡単なものもあれば、難しいものもある。
では、2016年度の東大数学(文系)入試ではどうだったのだろうか?
ここでは、2016年度の東大数学(文系)の入試の全体的な総評と4問の個別の総評を行う。
全体としての総評
今年は全体的に問題の難易度は簡単だったと思われる。
昨年と比べるとより明確になるが、昨年の問題が標準的な難易度であったのに対し、明らかに易化した。
これは、問題個別の難易度を順番にみていくとわかる。
問題 | 分野 | 難易度 |
第一問 | 対数微分 | 易 |
第二問 | 確立、条件付確率 | 標準 |
第三問 | 微分と最大最小問題 | 易 |
第四問 | 複素数平面と偏角 | 易 |
第五問 | 整数 | 難 |
第六問 | 存在条件と求積 | やや難 |
このように、簡単な問題が3問と標準的な確立の問題が1問あり、他の年度と比べても難易度は全体として易しかった。
また、これくらい易化した難易度であると、3~4完することはしっかりと数学を勉強してきた受験生であれば、極めて簡単である。(易の問題はもちろん、できれば標準ややや難を取れていれば上出来)
逆に、数学を苦手とする受験生は2完以下に終わってしまう可能性が高い。
今年の様に易化した年度の数学の入試では、しっかりと勉強した受験生とそうでない受験生との差がいつもより開きやすくなってしまう。
そういった意味でも数学をしっかり勉強しておくことは、東大の理科を受験するのであれば、極めて重要なこととなるのだ。
第一問(分野:対数微分 難易度:易)
この問題は、問題文に与えられた不等式を見た瞬間に「対数をとろう」という発想が生まれるかが、この問題を解けるか解けないかの分かれ目だ。
しっかりと勉強した受験生であれば、このような不等式はよく見る形で、「対数をとって微分する」というのは定石中の定石。
この問題が解けなかった受験生は勉強不足と言わざるを得ないだろう。
絶対完答しておきたい問題の一つだ。
第二問(分野:確立、条件付確率 難易度:標準)
確率は得意不得意がきれいにわかれる数学の分野である。
どちらかというと、苦手にしている人の方が多いのでは?
この問題は、極めて標準的な確立の問題だ。
具体的に何回かnが小さい時の場合を考えてみて、どのような規則性を持つのかを頭を使って判断すると、試合の対戦パターンに非常にきれいな規則が見えてくる。
これが見えさえすれば、(1)の答えを導き出すのはそう苦労しない。
また、(2)も条件付確率の概念をしっかり理解していて、尚且つ(1)が解けていれば、答えを導出するのは簡単である。
このような問題では、最初に具体的にnを決めて、どのような状況になるのか観察していくことが必要だ。
この手の問題を十分解いてきた受験生にとっては、あまり苦労しないであろう。
とても、標準的なので解き切れた人は少し入試全体で有利になるだろう。
第三問(分野:微分と最大最小 難易度:易)
これもまた、極めて簡単な問題だ。
この6問中一番簡単といってもいいだろう。
まずは、解析学の計算を用いてS(a)をaで表すことがファーストステップ。
こんなものは誰でもできるとても簡単な作業だ。
その次の段階として、S(a)の最小値を求めるので、微分をするだけという、計算だけの頭をあまり使わない問題だ。
極めて簡単な問題だが、微分の計算(特に分数関数の微分)は計算ミスがしやすい。
こういった問題で正しく計算して正しい答えを導き出せるかというのが合否の分かれ目になってくる。
簡単な問題だからこそ、計算ミスには十分注意しておこう。
第四問(分野:複素数平面と偏角 難易度:易)
これもまた、簡単な問題と位置づけられる問題である。
鋭角三角形<=>三角形のすべての内角がπ/2より小さい
と同値変形して、それを複素数の条件に置き換えて、共通部分を求めるだけだ。
複素数平面をしっかりと勉強して、同値変形を正しく行えていれば、答えを導くのはたいして難しい話ではない。
去年から、複素数平面は行列のかわりになる新しい学習分野となった。
新しいからといっても、範囲内のものは出題されても文句は言えない。
このように、簡単な問題も取りこぼしかねないので、すべての分野をまんべんなく勉強しておくことが重要である。
絶対完答したい問題だ。
第五問(分野:整数問題 難易度:難)
この問題は非常に頭を使う問題だ。
東大数学の中では、難しいと分類されるだろう。
逆に数学が得意で頭の切れる人はすぐに解けてしまう。
高得点者が解答できるような問題だ。
(1)や(2)はある程度整数問題が得意で慣れている人であればとけるだろう。
しかし、この問題は(3)が当たり前のことを聞いてきていてとても難しい。
(3)は言い換えると整数でない平方根が無限小数になることの証明だ。
当たり前すぎて証明を試みたことがある人は少ないだろう。
しかし、ここで思い出すべきは
という定石である。
難しい問題ではあるが解けなくはないということだ。
第六問(分野:存在条件と求積 難易度:やや難)
この問題をやや難としたのは理由がある。
この問題は2つのステップを要するからだ。
- 存在条件をしっかりと理解して、Kの方程式を導き出す。
- その式をもとに、求積するため、積分の式をたてる。
最初から式が与えられていて、2だけのステップで答えられるのであれば、簡単だろう。
しかし、最初のステップはしっかりと存在条件を理解して、通貨範囲などの問題を難しいものまで何個も演習してこないと難しい。
ほとんどの受験生は1のステップでつまずいたのでは?
また、これだけ他に簡単な問題があるのにもかかわらず、この問題に手を付けるということは、策としてナンセンスである。
少なくとも1~4をすべて解き切らないとこの問題に着手しない方がよいだろう。
さすがに4問といて時間が十分余っている人は少ないと思う。
この様に、2つの観点からこの問題はやや難の部類に入る問題だ。
当然解けなくてもよいだろう。
まとめ
これが2016年度東大入試数学(理系)の入試総評である。
これで今年の問題は易化したことが分かっただろう。
今年は、1,3,4は絶対とり、できれば2や6をとってほしいという感じになった。
このように、簡単な問題では差が付きやすいので、東大の理系入試では、数学は絶対にしっかり勉強しておくべき科目なのだ。