東大入試は一般的に難しいといわれている。

理科の科目の物理もその例外ではない。

特に、理科は全体的に時間が厳しいので、そこが東大物理の難しさでもある。

 

しかし、東大物理はしっかりと、物理的現象をとらえ、分析する能力があれば、その厳しい時間のなかでもしっかりと得点することができる

 

では、2016年度の東大物理はどうだったのだろうか?

 

ここでは、2016年度の東大物理の入試の全体的な総評と3問の個別の総評を行う。

全体としての総評

今年の東大物理は、分量は多少増加した。(特に第一問では問題文の文章量が多かった。)

だからと言って、決して難化したわけではなく、難易度自体は標準的な東大の問題である。(予備校の中では、易化したと評価したところもあったくらいだ。)

また、問題別の分野や難易度は以下の様になっている。

 

問題 分野 難易度
第一問 二体問題 標準
第二問 交流回路、荷電粒子の運動 やや易
第三問 波の反射、屈折、干渉、ドップラー効果 標準

 

このように、問題自体にも難易度の差はなく極めて標準的である。

 

問題の量が多くなったせいか、受験生の中には物理は難化したと思った人も多かったそうだ

しかし、問題量が多くなると、しっかりと物理現象を理解できる人にとっては、問題の物理現象がより早く定性的に把握できて、あっさりと解けてしまう

 

一方で、定性的に把握できない人はいちいち計算などしていて、時間をとられる。

このような人は、物理の得点に影響を与えるだけでなく、他の選択科目の時間が失われるため、理科全体の得点に大幅に悪影響を及ぼしてしまう

 

常日頃から、問題をただ頭を使わず計算するだけでなく、より早く問題の物理現象を把握するために、定量評価に加え、定性的な分析もできるようにしておこう。

 

また、第二問Iは極めて標準的な交流回路の問題だ。

交流回路の問題ができなかったという人も中にはいた。

しかし、これができないということでは、交流回路の分野がただ勉強不足だったといわざるを得ない

 

このように、マイナーな分野でも聞かれる可能性は0ではない以上しっかりと他分野と同様に対策しておくことが必要だ

第一問(分野:二体問題 難易度:標準)

東大物理の第一問では、毎年必ず力学の分野が出題される。

その中でも、最も出題の高い力学の分野が二体問題だ。

なぜならば、二体問題は力学の本質的な理解を一番確かめやすいからだ。

 

事実、2015年度も2016年度も二体問題が出題されている。

 

この二体問題は、いろんな意味で受験生を苦戦させただろうが、以下の二つのポイントをおさえていれば、本当に簡単にこの問題を解き切ることができる。

二体問題の本質を押さえていたか?

多くの受験生は、力学的エネルギー保存や運動量保存を駆使して、問題を解いていったと思うが、この問題は二体問題の本質をしっかり理解していると瞬殺である。

 

二体問題の本質とは、

 

二つの物体の運動は、その重心の運動(重心運動)と重心から見た内部での運動(相対運動)にわけることができる。

 

である。

 

この事実を知っていると、Iなんて簡単どころの話ではなくなってくる。

この問題は、難易度は標準的であるが、問題量が極めて多い。

ここで、二体問題の本質を理解しているかいないかで、問題の解くスピードが変わってくる

 

これが、この問題を得点できたかできなかったかの大きな分け目となっただろう。

 

二体問題では、重心運動相対運動にわけて現象を分析すること、また、それが力学的エネルギー保存則、運動量保存測とどう関わってくるのか、しっかりと考察して理解しておくことが極めて重要だということがこの問題を通してわかっただろう。

定性的な分析ができるか。

東大物理では、グラフなどを書かせたり選ばせたりして、直接計算せずとも現象を定性的に分析できるか、よく聞いてくる。

 

今回においては、IIの(3)がこれにあたる。

 

こんなものいちいち計算していたら、かなり時間をくわれてしまう

 

二体問題の本質を押さえたうえで、そこから定性的に現象を分析することが求められているのだ。

 

具体的な話をすると、まず(2)から重心からみた速度は常に一定で、その向きがわかるので、イとエにしぼられる。そのあと重心速度はt=0で変わるはずがない。

(∵「運動量保存則が成り立つ」ó「重心速度一定」)

よって

 

このように定性的に考察すれば答えは一瞬に決まる。

 

これができると、問題がかなり早く解けるうえ東大もこのようなアプローチを求めている

 

二体問題の本質をしっかり理解し、さらにどんな現象に対しても定量評価だけでなく、定性的な分析も行えるようにしておこう

第二問(分野:交流回路、荷電粒子の運動 難易度:やや易)

この問題は、標準的な電磁気の問題であるが、交流回路の問題はしっかりと勉強していれば、かなり簡単に解けてしまうため、難易度をやや易とした。

ここでは、独立した二つの問題に分かれているので、それぞれについて分析する

Ⅰ交流回路

はっきりいって、簡単だ

交流回路について、しっかりと考察したことのある人にとっては、難なく解けてしまう。

 

ただ、リアクタンスをただ暗記しているだけなど、公式を暗記するだけで、その公式の導出方法や全体の現象としてのメカニズムを考察していないと、手がでないであろう

 

上でも述べたが、交流回路のようなマイナーな分野でもしっかりと勉強するとともに、公式を暗記するだけでなく、物理現象全体のメカニズムを深く理解しておくことが必要である。

Ⅱ荷電粒子の運動

これも、極めて標準的な荷電粒子の運動の問題である。

 

まず、問題文にある通り水平方向と垂直方向の運動方程式をたてよう。

ちなみに、荷電粒子の慣性系でも非慣性系でも、等速円運動をしているので、水平方向の力は釣り合わなければならないのは自明だと瞬時に判断できなければアウトである。

 

あとは、素直に問題に従って解いていくだけだ。

 

荷電粒子の運動では、どうしても円運動の理解力も同時に求められてくる。

そういう意味でも、幅広い分野をまんべんなく学習することが大切である

第三問(分野:波の反射、屈折、干渉、ドップラー効果 難易度:標準)

この問題も極めて標準的な波動の問題であったといえるだろう。

 

まず、Ⅰの(1),(2),(3),(4)は瞬殺してほしいところである。

  • は基本的な振動数、波長、波の速度の関係を問う問題、(2)は単位をあわせるだけ、(3)は

反射の法則の理解を問う問題(賢い中学生でも解けてしまう)、(4)は典型的な干渉の問題だ。

ここは、しっかりと落とさず得点しよう

 

(5)であるが、屈折の法則を深く理解しておかなければ解けない問題である。

できれば、この問題もとってほしいところだ。

 

また、Ⅱはドップラー効果反射、屈折の応用である。

(1)までは、よく見かける問題なので、ここは解いてほしい。

(2),(3)もしっかりと反射、屈折を理解していれば、解けなくはないはずだ。

 

このような意味で、ここの波動の問題は標準的な問題だった

まとめ

これが2016年度東大入試物理の入試総評である。

 

このように、2016年は難易度が標準的なものであったが、問題量が特に第一問で増加したため、苦戦した人が多かっただろう。

 

しかし、物理的現象をしっかりと定量的かつ定性的に分析でき、常に頭を使って考察し、物理に深い理解を求めている人にとっては、瞬時に問題が解けるし、簡単に見えたはずだ

 

よって、差が逆に開きやすい問題であったと思われる。

 

このような問題で高得点を獲得するためには、常日頃から物理現象に対する深い考察を行う必要があることがわかっただろう。