東大2次試験の国語は、現代文・古文・漢文がバランスよく出題され、まさに国語の総合力が問われる問題となっている。

「国語は差がつきにくい」とはよく言われるが、逆に言えば国語ができなければ他の受験生に差をつけられてしまうということであり、高得点を取れば他の受験生に差をつけることができる。

国語の勉強は、どうすれば得点が伸びるようになるのか実感が湧きにくいかもしれないが、ある程度の読解力がついた後は、答案作成能力を鍛えることが重要になってくる。
きちんとした答案を組み立てることができれば、確実に点数が取れるようになるだろう。

この記事では、東大2次試験の国語について、解説と各予備校の解答速報を比較し、問題を分析していく。

東大をめざす受験生の参考になれば幸いである。

総評

全体的には、今年の国語の難易度は例年並みである。

第一問は、本文自体はそこまで難しくなかったと思われるが、解答に上手くまとめるのが少し難しかったかもしれない。

第二問は、本文・設問ともにそこまで難しくなかった。しっかりと得点しておきたい問題である。

第三問は、文章の展開をつかむこと自体は難しくないが、送り仮名が省略されている箇所の正確な把握ができたかどうかで差がつく問題だった。

第四問は、本文が抽象的で解答の内容をまとめるのもやや難しい問題だった。必要に応じて自分の言葉で説明する必要がある。

第一問(現代文・「『神の亡霊』6 近代の原罪」 難易度:標準)

本文の書き出しに「学校教育を媒介に階層構造が再生産される事実が、日本では注目されてこなかった」とあり、驚いた受験生もいたことだろう。
話題を呼んだ、2019年度東大入学式の祝辞での上野千鶴子氏の発言に通ずるものがある。

東大の入試問題では、受験生や社会へのメッセージと思われるものが盛り込まれていることもあり、今回も意図があってこの文章を選んだ可能性が考えられる。
ただし、この冒頭部分以外は読んでいて驚くような表現は登場せず、受験生が困惑するといったことはなかっただろう。

文章の読解については、本文自体は難しくなく、全体として筆者の大まかな主張を読み取ることは比較的簡単だった印象である。どちらかというと、読み取った内容を解答にする部分がやや難しい。

また、アファーマティブ・アクション、メリトクラシー、桎梏などの少し馴染みのない単語や、やや硬い表現が見られたため、読みにくさを感じることもあったかもしれないが、読解にはさほど影響しないだろう。

小問ごとに見ていく。

(一)は、本文第二段落末で言及されている内容を解答の骨子として周辺をまとめる。
「社会主義政党が育つ」のはどのような社会状況においてなのかが、常識として知っている者にとってはより理解しやすかったはずである。

(二)は、第六・七段落の内容を踏まえてまとめていけばよい。

(三)は、「そうだ」まで傍線が引かれているため、傍線部ウの一文前の内容「支配は真の姿を隠し、自然の摂理のごとく作用する」を踏まえてまとめる必要がある。

(四)は、「本文全体の趣旨を踏まえて」という指示があり毎年難しい。

(五)は、例年通り漢字3問の出題だった。いずれも基本的な漢字ばかりである。
ここで点数を落とすのは非常にもったいないので、確実に3問とも正解できるようにしたい。

第二問(古文・『春日権現験記』 難易度:やや易)

昨年の第二問は比較的易しい文章だったが、今年も本文・設問ともに比較的易しめである。それだけにここで大きな減点があると差をつけられてしまうので、このレベルの問題なら確実に点数が取れる実力が必要である。

(一)の3問が現代語訳の問題で、(二)~(四)は内容説明の問題である。

(二)の「のどむ」は知らなかった受験生もいたかもしれないが、文脈から推測して考えたい。

(三)・(四)が文系のみの出題だが、他の問題と比べるとこの二問で差がつきやすかったのではないかという印象を受ける。

(四)は歌全体に傍線が引かれており、これが何を示しているのか説明する必要がある。和歌に苦手意識を感じる受験生も多いと思うが、まずは和歌を逐語訳できるようになってほしい。今回も傍線部を訳すことができればさほど難しくない。

第三問(漢文・『漢書』 難易度:標準)

昨年度はやや難しかったが、それに比べると読みやすい文章だった。
本文の内容は難しくなかったと思われるが、設問箇所を上手く説明するのは、簡単ではなかったかもしれない。

(一)b・c、(二)では、送り仮名が省略されているため、適切に送り仮名を補って考える必要がある。この部分の内容を正確に把握できたかどうかで差がついたのではないかと思われる。

また、(二)では「人間関係がわかるように」という指示があり、こうした問題文の要求にもきちんと答えられるようにする必要がある。

(一)aや(三)・(四)はしっかりと得点したい問題である。

第四問

傍線部の周辺だけでなく本文を最後まで読んだうえで解答を作ることが必要だった。一般的に、最後に第四問を解く受験生のなかには、時間がなく傍線部周辺のみを解答にしてしまうケースもみられるが、今回の問題はそのような受験生にとっては高得点を取るのが難しかったといえる。

(三)・(四)がやや難しい。
(三)では、「そのような」が何を指しているかを正確に把握したうえで、解答に分かりやすくまとめることが求められる。

(四)「作品を書くとき」の筆者の感覚は本文に多く書かれているが、「文章を書くとき」についてはほとんど記述がないので、傍線部直後の一文などを参考に、上手く解答を構成する必要がある。

各予備校の解答比較

ここからは大手予備校の解答速報を比較していく。

問題そのものについて考えることも重要であるが、各予備校が解答速報として出している解答を見比べることも効果的な勉強である。

それぞれの解答の違いに着目し、どの解答が良いかを考えることで自分の解答をより良くしていくために各予備校の解答を活用していってほしい。

今回は受験生がよく目にするであろう河合塾・駿台・代々木ゼミナールの解答を比べていく。

第一問

(一)
①機会均等に基づく自由競争下で、
②格差/不平等が個人の才能と度量の結果とされる
③社会変革の機運が高まらない
という、各社ともほぼ同じ要素で構成された答案を出している。この3つを盛り込めば十分である。

代ゼミの解答では、③を「その原因を階級差に求める思想は受け入れ難い」としており、この部分が他社に比べるとやや分かりにくい。本文の表現をそのまま使うほうがベターだろう。

(二)
これも各社の方向性は同じである。人間の内部や自由意志はすべて外的要因によって形成されるという内容でまとめればよい。

(三)
能力主義が、平等を唱えながら格差を固定化してしまうという内容である点は各社ともほの共通しているが、上述したとおり「そうだ」に対応する傍線部の前の文のニュアンスを含めるべきである。

河合塾・代ゼミの解答でもこのニュアンスを出そうとしていることは感じられるが、駿台の解答がもっとも強く表現できていると感じられる。

各社とも「そうだ」の言い換えをはっきりと書いている答案はなかった。字数的な制約から書かなかったと推測されるが、受験生はこの部分の言い換えを含めた答案も自分なりに作ってみると力になるだろう。

(四)
解答に含めている要素は、大きな差はないが、要素を組み立てる順番が異なる。

河合塾と代ゼミは、「かつての社会→近代」としているが、駿台の解答は、「近代がかつての社会のあり方を解放した」というように、近代のなかにかつての社会の説明を含めている。

文の構造を複雑にすると答案が読みにくくなってしまう場合も多いので、受験生には河合塾と代ゼミのようなすっきりとした構成の答案を作ることをおすすめする。

第二問

(一)イ
「けし」の訳出で、河合塾・駿台はそれぞれ、「普通でない」「尋常でない」と訳しているが、代ゼミは「不思議な」としている。文脈を考えると、河合塾・駿台のような訳し方のほうが自然に感じる。
また、「さして」の訳出では、駿台・代ゼミは「向かって」、河合塾は「指さして」としている。駿台・代ゼミのように訳すのが良いだろう。


「堪へぬ」の訳出で、河合塾はそのまま「堪えられない」としているが、受験生としてはそれ以外の訳出が思いついたらそちらにしたほうが、採点官に理解していることをアピールできると言える。
もちろん、訳出が思いつかなければ「堪えられない」とそのまま訳すのが安全である。

なお、駿台の解答で「堪へぬ」の訳出にあたる部分がかなり読みづらくなっている。駿台の第二問の答案全体として文字が読みづらいので、もっと丁寧に書くべきであると感じる。

受験本番でせっかく書いた答案も判読不可になってしまうと、その部分の点数は一切もらえない。受験生は、日頃から丁寧に書くように心がけ、本番では急いでいても十分読むことができる字を書くようにすべきである。


文末の訳し方がやや異なる。代ゼミの「もうどこにも行けまい」と否定してしまう訳よりは、素直な逐語訳に近い河合塾や駿台のような解答のほうが、受験生としてはリスクが少ない。

(二)
代ゼミのみ傍線部直前の「前世の宿業」の内容を解答に含めているが、あってもなくても良いだろう。

(三)
解答の後半部分に違いがある。河合塾と代ゼミは「指摘は的外れだ」という方向、駿台は「本寺に戻るつもりはない」という方向である。
これに関しては、駿台はやや取る範囲が広すぎると感じる。一方で、直前の巫女の発言で、「本寺に帰りて~」という内容があるので、このような方向で答案を作成するのも認められるだろう。

(四)
河合塾と駿台がほぼ同じ内容だが、代ゼミのみ和歌の訳をかなり踏まえた解答になっており、「蛍の光同様」という表現が見られる。

「傍線部カに示されていること」を書くのが問題の指示だが、代ゼミのような答案にしてしまうと解答に載せられる情報量が減ってしまう。実際、河合塾と駿台の解答にある、「神にはお見通し」という内容が代ゼミの解答にはない。

他大の問題などで、もっと字数に余裕がある場合は、代ゼミのように和歌の訳を解答に反映しても良いが、今回は河合塾や駿台の方向性で解答を作るのが良いだろう。

(五)
河合塾・代ゼミの解答では、「祥延・壹和・喜操・観理」の4人を明記しているが、駿台の解答では「次は壹和の番」としか書かれていない。
神託の内容は4人の順番であり、傍線部の直前に「四人の次第」とあることからも、河合塾・代ゼミの解答のように、4人の名前を明記することを強く推奨する。

第三問

(一)a
各社ともほぼ同じであるが、駿台のみ「裁判」というワードが入っていない。
「判決」という単語があれば「裁判の判決」であることは十分伝わるので、なくても減点されるようなことはないと思われるが、「裁判」を入れたほうが丁寧な答案といえるだろう。

c
河合塾と代ゼミは「私の世話をして」、駿台は「私に仕える」という方向性である。
これは河合塾や代ゼミのように「世話をする」という意味で取るべきだろう。

d
この問題は各社とも大きな違いはない。

(二)
問題に「人間関係がわかるように」とあるが、この要求に対する各社の対応の仕方がわかれている。
各社が「姑」と「嫁」をどのように表現しているかまとめた。
河合塾:姑→姑、嫁→亡き息子の嫁
駿台:姑→姑、嫁→嫁の孝婦
代ゼミ:姑→孝婦の義母、嫁→孝婦

人間関係がわかるようになっていれば(要するに、誤読される可能性のない書き方なら)どのように書いても良いと思うが、表現が三者三様で興味深い。受験生は自分の感覚にもっとも近い書き方をすれば良い。

また、「終」の訳は、河合塾と駿台は「最後まで」、代ゼミは「とうとう」としているが、これはどちらでも良いだろう。

(三)
各社とも解答の方向性はほぼ同じである。代ゼミの解答がもっとも読みやすい解答になっていると感じる。

(四)各社とも
①于公が孝婦の冤罪を指摘した
②後任の太守に弔わせたところ日照りが解消した
という内容を含めている。

また、代ゼミのみ、「于公は正しい判断ができる人物であり」という記述を加えている。
この要素は必須ではないと思われるが、注目すべきはこの内容を入れることができるほど、①②の内容を無駄なく圧縮している点である。実際に解いてみたとき、①②に加えてもう一つ要素を書きたい人がいたかと思うが、そういった人にとってこのような要素の圧縮の仕方は非常に参考になる。

東大の国語では、限られた解答欄に無駄なく情報を書かないと、解答欄に収まりきらないので、このような上手く字数を節約している答案を参考に、答案での表現力を磨いてほしい。

第四問

全体的に、受験生にもっとも参考になる解答は河合塾のものだといえる。受験生にも十分使える言い回しで、単純でわかりやすい解答を作っている印象である。

(一)
駿台のみ方向がやや違う。まず、書き出しが「作品をつくる~」ではなく「作品とは」となっており、つくる過程ではなく作品そのものの説明により問題に答えようとしている。
また、河合塾や代ゼミが「言語共同体」という言葉を使用しているのに対し、駿台は使用していない。
全体的には、河合塾の解答がもっとも素直な解答といえるだろう。

(二)
駿台の解答には、「媒介者」の要素がない。この段落の冒頭にある言葉でもあり、入れるべき要素だろう。
こちらも河合塾の解答がもっともまとまっていると感じられる。

(三)
こちらも駿台の解答のみ方向性が異なる。河合塾と代ゼミの解答で字数を割いている「創作者かつ読者」という要素を、「社会の一員」という単語で説明しているが、それに続く部分が本文の内容を正確に説明できていないと思われる。
解答中のワードチョイスという意味では代ゼミの答案がわかりやすい。一方で、「作品の成り立ちかた」にしっかりと対応した解答の構造になっているのは河合塾の解答だといえる。

(四)
各社とも方向性は同じである。ただし、駿台の答案はやや受験生には作るのが難しい解答であり、解答を読む人にとっても伝わりづらい。受験生は、河合塾や代ゼミのような明快な解答を書くことをおすすめする。

まとめ

以上が2020年度東京大学国語(理系)の解答速報の比較と解説まとめである。

東大の国語は文章の読解力と簡潔に限られた解答欄にまとめる力が要求され、難易度が高い。しかし、正しい勉強法で勉強を積み重ね、問題演習を繰り返すことで、必ず東大の入試問題に対応できる力が身につくはずだ。

中でも、東大独特の形式に対応するために過去問演習は欠かせない。遅くとも高3の秋には過去問を用いた演習が始められる実力がついているように、高3の夏までに、基礎知識の定着と一般の問題集などを用いた演習を重ねられると良い。

受験生の皆さんには、この記事も参考に努力を積み重ねていってほしい。