いよいよ蒸し暑くなってきた今日この頃。受験生のみなさんもそろそろ志望校が固まり、夏の模試に向けて勉強に励んでいることだろう。
しかし、現時点で志望校に合格できる自信があるという受験生はなかなかいない。
一方で、いよいよ受験勉強が本格化する中、成績が向上する気配が感じられず不安になっている受験生はたくさんいるのではないだろうか。
さらにあと1ヵ月もすれば、いよいよ各予備校で大学別の模試が行われる。
そこで思うような成績が取れず、失望する人がたくさん出てくるだろう。
筆者も3年前はその一人だったから、気持ちが痛いほどわかる。
筆者は都内にある私立中高一貫男子校の出身だが、成績は完全に落ちこぼれだった。
定期試験の順位は毎回下から数えた方が断然速く、しかもそれに対して焦りなどは一切なく遊んでばかりいた。
高校受験がなかったため、中学時代にろくに勉強していなかったのも今思えば大きかった。
高3夏当時、駿台の第1回東大入試実戦模試で、偏差値35・当然のE判定を叩き出してしまった。
河合塾の第1回東大即応オープンでも、これまた一番どん底のD判定だった。
どちらも「合格望み薄・志望校の再検討を推奨します」という無慈悲な宣告だ。
実際5月までは学校の行事にどっぷり浸かっていて、受験勉強には見向きもしていなかったので、当然と言えば当然の結果である。
しかしやはりショックは大きく、親しい友人にも恥ずかしくて打ち明けられなかったし、真剣に志望校変更を考えて別の大学を見学しに行ったりもした。
それでもやはり東大への思いは捨て難く、両親や担任の教師の説得もあり、ギリギリまで粘ろうと決めた。
そして秋の東大模試ではB判定やC判定まで押し上げることができ、最終的には本番で合格者平均点を大きく上回る点数をマークできた。
本記事では、そんな波乱の受験期を過ごした筆者が、どん底の夏からどのような心持ち・勉強法で受験勉強に取り組み、最終的に東大逆転合格を果たせたのかを綴っていきたい。
この生々しい経験談が、多くの悩める受験生の希望になってくれれば幸いだ。
7~8月頃 模試で偏差値35を叩き出して途方に暮れた衝撃の夏
必死に勉強して入学した某私立中高一貫校であるが、いったん入学してしまえばモラトリアムであり、せいぜい試験前の一夜漬け程度しか机に向かわずにいた。
当時はとにかく友達とゲームをし、サッカーをして遊ぶことで頭が一杯だった。
また毎年5月に学校の一大行事があったため、なんと高校3年生の春まで全く受験勉強に手を付けずにいた。
二つの物事へ同時に集中を向けられない筆者にとっては、両立は到底無理な話だった。
行事が一段落ついた6月初めにやっと受験勉強へシフトし始めた。
しかしそれまで丸々6年間勉強というものを放置していたため、あまりにもやるべきことが多すぎてどれから手を付ければよいのかさっぱりわからなかった。
そして案の定、8月頭の東大模試での手応えは本当に絶望的だった。
そもそも回答欄が半分も埋まらなかった記憶がある。
試験直後に周りの連中が数学は簡単だっただのなんだのと話しているのを聞いて、逃げ出したい思いに駆られた。
さすがにこのままではまずかった。
このままではそもそも東大どころではないと焦った筆者は、一旦冷静に自分の状況を分析して、夏の学習計画を大まかに立てた。
まず何よりも必要だと思ったのは、単語や用語などの基本的な知識の量だった。
これらをちゃんと頭に入れておかないと、読解や論述などできるわけがないということを痛感した。
そこで8月の間はとにかく基本的な知識を徹底的に詰め込もうと考え、単語帳・文法書・教科書・一問一答などを買い込み、しっかり1周~2周することを目標にした。
学校の授業がない夏休みは独りぼっちで勉強する日々で、集中力が切れることもしばしばだった。
しかしペンを持つのさえ面倒だと感じてしまっても、単語帳や教科書を片手にベッドへ寝転び、それを斜め読みするだけで十分だと割り切っていた。
数学に関しても、まずは基礎問題に取り組んで基本的な解法をしっかり覚える必要があった。
たとえ応用問題が相手でも、だいたいが基本的な解法の組み合わせだけで解くことができるからだ。
【受験生へのアドバイス】まずは模試を受けて基本的知識をおさえよう
東大を志望するとなると、早くから応用レベルの読解問題や論述問題に手を付けなければならないと焦ってしまいがちだ。
しかしまずはなにより、読解問題や論述問題に立ち向かう際に必須な基本的知識を、全て頭にインプットすることが重要である。何度も言うが、夏の間に落ち着いてこれをしっかりやっておくに越したことはない。
この頃の勉強法で必ず守ったことは、参考書を無闇に何冊も買わず、1冊をじっくり最初から最後までやり通すということだった。
だいたいの参考書は、1冊丸ごとやり切ることで全範囲をカバーできるように作られている。
そのため全ての内容を効率良く網羅するには、このやり方が一番である。
9~10月頃 基礎から応用へ、諦めずひたすら問題演習
9月に入るころには、知識面での基本的なところはだいたい頭に入れることができた。
しかし覚えたことを片っ端から忘れていくので、これ以降もスキマ時間には単語帳や教科書に目を通すようにしていた。
この頃には忌まわしき夏の東大模試の成績が返却された。
相当酷いものを覚悟していたが、一目見て筆者のプライドは完璧にズタボロにされた。
毎日思い悩んで、志望校変更を考えて某国立大学のキャンパス見学に行ったのもこの頃である。
しかし、当時の恩師にまだ巻き返しは可能だと説得され、また東大に向けた対策をしておいた上で直前に某大学へ狙いを変えることもできるということで、ギリギリまで東大を目指して頑張ることを決めた。
とにかくこの時期は、自分はやればできるはずだという根拠のない自信を持ち続けることで精神を保っていた。
夏の東大模試の成績が返却されて最初にやったのは、「東大二次での科目ごとの目標点数」を決めることだった。
例年文3の合格者最低点は二次だけでだいたい250点なので、合計が250点になるように科目ごとの目標点数を考えたのである。
勉強法に関しては、知識がある程度固まった今、遅れを取り戻すためにできる限りたくさん問題演習をしなければいけないと考えた。
また10月途中あたりからが少しずつ過去問にも取り組み始めた。
過去問については次の章で詳しく解説していく。
一方で、自分なりの勉強法が間違っていないかどうかとても不安だったので、この時期に行われる東進の東大本番レベル模試を受験してみた。
この模試では夏に比べて点数を50点ほど上げることができて,確実にマシにはなっていることがわかって自信になった。
【受験生へのアドバイス】まずは目標点を決めよう!
前述のように科目ごとの目標点数を明確に定めることで、現状どれくらい実力が足りていないのかを具体的に把握できるようになるので、全ての受験生に強くオススメしたい。
この時期に意識するべきことは、とにかく「難関大・東大らしい問題に慣れる」ことである。
ひたすら問題集を解き続けることで、「これを問われたらこう答えればいい」というテンプレートを頭にインプットしていく必要がある。
また問題演習を徹底していく際に、知識の抜け落ちがどんどん明らかになっていくので、それを地道に埋めていく作業も必要になってくる。
やはり単語帳や教科書は最後まで手放せない。
前述の東進の東大本番レベル模試は駿台・河合に比べてやや小規模だが、成績返却が鬼のように速いため、すぐに結果のフィードバックをすることができてオススメだ。
受けておいて損はない。
11~12月頃 E判定からB判定へ!
10月から始めた過去問演習はこの頃にいよいよ本格化した。
とにかくこの頃には頻出テーマを潰すこと、そして苦手を潰すことを意識していた。
11月には秋の模試シーズンが到来する。
事前に細かい時間配分や点数の目標をある程度決めておいて、模試でその通りにできるかどうか試してみた。
知識をある程度固めてから問題演習を繰り返した成果もあって、今回は夏のようにテンパったりせず乗り切れた。
筆者は今回の模試でB判定を取ることができた。
夏に比べてどの教科もかなり成績が向上したが、中でも一番よく伸びたのは日本史・世界史である。
社会科目はまだ通史を全部学びきれていない状態からスタートすると、一気に数十点の上昇が見込める。
そのため夏の模試で悲惨な結果になっても十分取り返しがついた。
もちろん忘れてはならないのはセンター試験の対策である。
筆者はとりあえず秋の模試までは東大二次の対策に集中し、それが終わったらセンター試験の対策に完全にシフトした。
そして11月の終わりから1月前半まではひたすらセンターの対策に取り組んでいた。
自室で独り世界史の一問一答を読みふけっていたらいつの間にか1月1日0時00分を過ぎていたのはいい思い出である。
この頃には全てを投げ打って勉強に集中することになんだかマゾな快感を覚えていた。
【受験生へのアドバイス】過去問の形式に慣れよう!
この時期の過去問の解き方としては、まだ年度ごとのセットで解くことはせず、問題ごとに時間を測って解くやり方をオススメしたい。
例えば英語であれば、1(A)を10~12分で片づけられるよう繰り返し練習する、などだ。
この時期の勉強には「東大数学25ヵ年」のような赤本シリーズが大変使いやすいので、とりあえず全科目揃えることをオススメする。
また11月の東大模試は、全国の東大受験生が受験する最後の大規模な模試なので、しっかりと準備して臨みたいところだ。
ここで夏より成績を上げられるとかなりの自信になる。
センター試験は独特なので特化した対策が必要だ。
東大受験生ならちゃんと対策すればそれなりにできるようになるはずだが、数学のベクトルなどはセンターに向けてしっかり勉強しておかなければならない。
センター試験は知識量がかなりモノを言う形式なので、この対策を通じて自分の知識の定着度合いを確認することができる。
これを機会に、夏にやった単語帳・教科書・一問一答などをまた1周しておくと良い。
理科の勉強は11月から取り組みさえすれば遅くない。
文系の理科基礎科目は教科書範囲をマスターすれば十分なので、ひたすら教科書を頭に叩き込み、過去問や予想問題に当たれば良い。
1~2月頃 センターそして東大二次へ、本番に向けてのラストスパート
結局クリスマスも正月もまともに感じられないまま過ぎてしまった。
一方で、それだけ本気で勉強したのだから可能性はそれなりにあるはずだと前向きな気持ちになれていた。
年明け頃からはひたすら過去問を時間内に解く訓練を繰り返した。
過去問をあらかた解き切ってしまってからは、さらに市販の予想問題のパックを解いていった。
筆者は結局センター試験本番で過去最高の9割近い点数をマークできた。
直前までひたすら過去問・予想問題を解き続けて、しっかり慣れておいたのが一番の勝因だと思う。
仲の良い友人たちには夏からの変わりっぷりを驚かれたが、これで自分はやればできるという自信も大いについた。
センター試験が終わってからの1ヵ月ちょっとは、短いようで案外長かった。
1ヵ月で全ての範囲をもう一度網羅することを目標にして、とにかくがむしゃらに知識の補強と過去問演習を繰り返した。
また本番前の予行として、東進や駿台の直前模試を受験した。
判定システムはないものの順位は十分合格圏内だったので、やれることはやったはずと割り切って本番に臨むことができた。
最後の最後は本当に気力だけで勉強していたし、受験を乗り切ったら何をして遊ぶか考えることで精神を保っていた。
実際二次試験が終わってからは、友達とカラオケやボウリングに繰り出し、大好きなサッカーをする毎日を送っていた。
【受験生へのアドバイス】センター対策はしっかりやっておこう!
東京大学の入学試験ではセンター試験の配点がやや低めに設定してあるため、中にはセンター試験は最低限足切りを回避できさえすれば良いと考える人もいる。
しかしまずセンター試験で800点をしっかり取れれば、何よりも自分は東大受験生の中でも「できる方」なのだという自信が得られる。
この時期に一番必要なのは、自分はできるはずという自信だ。
そのためたかがセンターと思わず、センター試験が終わるまではその対策に集中するべきである。
二次の対策はセンター試験が終わってから再開しても十分に間に合う。
予想問題の使い方としては、1パックを2日間かけて本番と同様の時間割で解いてみるのがオススメだ。
生活リズムや心構えを本番までに慣らしておくことはとても大切である。
毎日夕方にはその日の時間割が終わるので、それから夜までは単語帳や教科書、一問一答を読んで過ごすと良い。
まとめ
長々と経験談を語ってきたが、とにかく心に留め置いて欲しいのは「自分はやればできるはずだ」という自信である。
別に根拠がなくたって構わない。
ただ、今成績が良くないのはちゃんとやってないからだ、やってみないとわからないくらいの心構えで取り組んだ方が精神衛生上絶対に良い。
筆者のように夏の成績がどん底だったとしても、自分にはいくらでも伸びしろがあると考えた方が良い。
もちろんその伸びしろを最大限伸ばすことができるかどうかは、それから半年の努力次第である。
しんどくなったら、二次試験が終わってから3月に何をして遊ぼうか、また大学では何をして過ごそうかなどと妄想するのが一番だ。
東京大学でのキャンパスライフは想像以上に自由で、選択肢に満ち溢れている。
そのための人生最後の頑張り時だと思って、前向きに受験を乗り切ろう。
また、もしさらに詳しく筆者の勉強法が知りたい、自分の場合はどうすれば良いのか知りたいと思ったら、下記にあるLineを登録して質問してきてほしい。
筆者を含めた現役東大生の講師が責任を持ってアドバイスする。